ご存じ、ビル・エヴァンスの大名盤。WALTZ FOR DEBBYです。ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音の本作。エヴァンスの神懸かり的なピアノに、スコット・ラファロの一心同体となったベース、この二人のコンビが、後世まで語り継がれるジャズ・ピアノの最高峰と言われる金字塔を作り上げたことは言うまでもありません。 今回、紹介したいのは、1993年に再発されたVICTOR盤です。VICTOR盤と言えば、ジャズ・レコードをお聞きになっている方には、あまり良いイメージが無いかもしれません。国内盤の中でもどちらかというと、キングや東芝に押され気味、2番手といった感じではないでしょうか。
WALTZ FOR DEBBYは名盤だけに、輸入盤からVICTORや高音質で評判のAnalog Productionsから重量盤も発売されました。93年に完全限定プレスで発売されたこのVICTOR盤には、あまり期待をしていなかったのですが、完全にやられました。 通常、エヴァンスやスコット・ラファロの演奏であまり目立つことのないポール・モチアンのドラムが、とても繊細に聞こえるじゃないですか。ドラムのフット・ペダルの強弱、ハットの抜けた音まで、見事に聞こえます。まさに目の前で叩いているといった感じです。全体的に高域が強調され、ドンシャリといった印象も否めないですが、耳障りにならずとても聴きやすいマスタリングがされたのでしょう。これも20年の時を経た音響技術の進化なのでしょうか。当時発売されたVICTOR盤とは、全く別ものと考えていいと思います。