こんにちは、はじめまして。 メルマガ初参加のレコード店の片山です。 宜しくお願いします。 猛暑な8月も終わり夜になれば小寒くなり秋の訪れを感じますね。 秋と言えば切ないシンガーソングライター(以下SSW)の音楽が染みる季節となります。 キャロル・キング、ジョニ・ミッチェル、ローラ・ニーロ、ジェイムス・テイラー、ニール・ヤングなど、 素晴らしいレジェンドがいっぱいいますが、次の音楽の扉を開けてみませんか? |
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今回はSSWシーンの中でもブラジルのSSWシーン『ミナス・サウンド』を紹介したいと思います。(通称ミナス) 実際僕も70年代SSWが大好きなんですが、その中でもミナス・サウンドというブラジルSSWシーンの素晴らしさに触れていないリスナーもまだまだ多いと思うので、これを機会に是非聴いていただきたいのです。 |
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多くの人は「ブラジル音楽=サンバ&ボサノヴァ」のイメージが強いようですが、70年代初期にブラジル内陸部のミナス・ジェライス州の人たちが作り出した音楽シーンは驚くほどサンバ&ボサノヴァの音楽が薄く、 綺麗なメロディとコーラスを多用したソングライターが多く存在し、それらが70年代SSWリスナーにも響き「ミナス・サウンド」と称して好まれているようです。 実際僕も昔はブラジル=ボサノヴァのイメージが強すぎたりポルトガル語をあまり好まなかったことで敬遠していたんですが、 このミナス・サウンドに出会ってその先入観は吹き飛び、むしろもっと早く出会いたかったという後悔すら感じたんです。 |
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そのミナス・サウンドの特徴ですが、遥か昔ですが鉱物資源がきわめて豊富な土地ゆえに世界中の人々が「一攫千金」を目指し ヨーロッパ民族やアフリカ民族など多種多様な人々が集結したことにより生まれた経緯があるとされています。 それゆえメロディは教会音楽の影響を強く受けていてヨーロッパ的な「透き通る美しいメロディとコーラス・ワーク」と、アフリカ的な「民族的センスと強靭なグルーヴ」が同居した特徴があります。 そしてミナスのアーティストに共通するのは「浮遊感のあるアレンジと複雑なメロディ&ハーモニー」も魅了するひとつの特徴とされていて、キャロル・キングやジェイムス・テイラーなど王道なSSWとは違う感覚なので斬新と感じてハマる人はハマると思います。 実はジャズ・シーンとも多少リンクしてるんですよ。 それでは入門的名盤を数作紹介しますね。 |
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Milton Nascimento & Lô Borges / Clube Da Esquina (邦題:街角クラブ) 1972年作品 ミナス・サウンドの主役でもあるミルトン・ナシメントがのちのミナス・サウンドの名盤を生み 基盤を作っていく若者たちロー・ボルジェス、トニーニョ・オルタ、ベト・ゲヂスたち=グループ名「街角クラブ」と作り上げたミナス・サウンド誕生ともいえる金字塔。 この名盤の立ち位置はミナス・サウンド的に「70年代SSW名盤=キャロル・キング/つづれおり」「70年代日本語ロック名盤=はっぴいえんど/風街ろまん」のような位置づけで、 「70年代ミナス・サウンド名盤=街角クラブ」でありミナス・サウンドの基本であり王道でもあります。 すでに美しいコーラス・メロディと民族的グルーヴと浮遊感のあるアレンジは確立されていますね。 それぞれが曲を作っているのでサイケっぽかったりソフト・ロックっぽかったり土臭いロックっぽかったりとさまざまですが、そのバランスこそも魅力のひとつとなっています。 ミナス入門は、まず本作からどうぞ。 |
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Milton Nascimento / Minas 1975年作品 街角クラブのリーダー的存在でもありミナス・サウンドの主役ともいえる偉人ミルトン。 「ウェイン・ショーター/ネイティヴ・ダンサー」でボーカルに起用されたりしてジャズ・リスナーやミナス・サウンドを知らない人でもミルトンの名前ぐらいは聞いたことがあるんじゃないでしょうか。 ファルセットを多用した高音で透き通るような歌声に魅了されたリスナー多数。 名作をたくさん生んだ人なので個人個人で好きな作品が違うとは思うけど、個人的には完成度や捨て曲の無さで本作をお勧めします。 (どアップジャケのインパクトも凄いですが・・。どうだ!といわんばかりの自信の表れでしょうか) 作品ごとに多少毛色が違うのですが、本作は持ち前のトライバルでアコースティック・メロウなアレンジに加え スピリチュアル・ジャズの様な神々しく神秘的なアレンジが光っておりジャズ好きも聴きやすいのではなかろうかと思います。 |
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Toninho Horta / Toninho Horta 1980年作品 パット・メセニーが影響を受けたと公言しハンコックとも交流していた世界的にも評価のされている名ギタリスト、トニーニョも街角クラブのひとり。 ジャズというよりはフュージョンに影響を与えたギタリストといった印象も強いかも。 彼の代表作とされる本作もミナス・サウンド関係なく評価されている作品で、 ミナス・サウンド特有の「浮遊感のあるサウンド」と美しいギタープレイを前面に感じることができ、 サウンド的にはメロウな歌物と アコースティックとストリングスを好バランスに配したフュージョン・インストといえばわかりやすいかな。 なのでフュージョン・リスナーにお薦めかも。 パット・メセニーもゲスト参加してます。 |
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Lô Borges / A Via-Láctea 1979年作品 そして僕がミナス・サウンドにどっぷり浸かるきっかけとなったローの大傑作を紹介しなくては。 金字塔名盤「街角クラブ」の名義ではミルトンと並ぶ扱いのミナス界孤高の天才ロー・ボルジェス。 ジャケが主張するようなどこまでも透き通る清涼感と透明感、 それはストリングスやアコースティック・ギターやピアノの美しさが強いだけではなく彼のガラスの様に繊細で美しい歌声によるものだと思う。 透明な水ではなく虹色の水、そう本作は「水の名盤」とも言えるんじゃなかろうか。 ピュアでジェントルで美しくメロディアスでメロウ。 「地球上で最も美しい曲」と聴いた誰しもが絶賛し、 僕がミナス・サウンドに出会ったきっかけとなった至福の大名曲「Clube Da Esquina Nº 2」収録です。 男女ツイン・ボーカルの掛け合いで天まで昇るような展開に高揚感が溢れ何度聴いても感動します。 |
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今回はミナスの基本的王道の4枚を紹介しましたが、まだまだこれは一部で ミナス以外でもイヴァン・リンスなど素晴らしいSSWはいっぱいいます。 少しでも気になっていただけたのなら、これをきっかけに手を伸ばしてくれたら嬉しいな〜と思います。 |