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寒さもだいぶ和らいで、襟元をくつろげられる日が少しずつ増えてきましたね。
花粉症の方はお辛い時期がやってきてしまったというところでしょうか。
本日は春の陽気ですので、店頭の扉を全開にして営業をはじめました。
ハイファイ堂レコード店の堀田です。
今回は春の風を感じられそうな曲をテーマに書いてみようと思います。
春の海 ひねもすのたりのたりかな
江戸の俳人、与謝蕪村の一句です。
春の海が風に吹かれてゆっくり揺らいでいる様をうたったものですが、なにが素敵かってこの「のたり」という言葉です。
画人でもあったため風景や情景を穏やかに描き出すような句が多く見られますが、それはリアルというよりも理想郷のような風景です。
一気に身体も心も脱力してぐだーとしてしまうような春の暖かさが「のたり」で一気に際立ちます。
「のたり」。
もう座右の銘にしたいくらいです。
蕪村はこの自画像のように、のそっと穏やか、素朴な雰囲気を与えつつ他にはない洗練された言葉選びをします。
春といえばまずこの一句。
さっそくレコードちゃうんかいと突っ込まれそうですが…
"Warm Valley"-Duke Ellington
Money Jungleに収録されている1曲。
デューク・エリントン、チャールズ・ミンガスそしてマックス・ローチというなんというかゴリゴリの偉大すぎる先輩たちの集会といった体ですが、曲に関しては窓を開けはなってソファでゴロゴロしながら聞きたいような優しいタッチです。
どうやらウォームアップの際に即興していたものが元になっているようです。
あ、そっちの"warm"なのねと思っていたら、女性の胸の谷間が暗喩されているようで、あ、そっちの"valley"でしたかとデューク・エリントンの遊び心がきいています。
デュークとは、子供の頃からきちんとした身なりと優雅な身のこなしだったことからつけられたニックネームです。
Duke=公爵、ですね。
大人になってからも彼のバンドをとても大切にし、ひとりひとりが引き立ってくるような曲を作ってきたようです。
そのことが他にはない音楽性を作り上げ後に大きな影響をあたえることにつながり、また彼のおおらかな人柄を感じられるところでもあります。
ただ、このトリオに参加しているチャールズ・ミンガスは唯一デューク・エリントンがクビにしたそうです。
薬物に手を出したメンバーが非難されても擁護したような彼が許せないほど、いったいどんなことをやってしまったのでしょう。
もしご存知でしたら是非とも教えていただきたいと思います。
"On The Sunny Side Of The Street"-Louis Armstrong
邦題が明るい表通りで。
ベニー・グッドマンが取り上げたことにより人気に火がついたこの曲はスタンダードナンバーの一つで多くの偉大な演奏者、そして歌手によって演奏されていますが、この曲の持つ雰囲気に合っていると感じるのはサッチモです。
要約してしまうと明るい通りの方に行こう、暗い時代を耐えたんだから、と歌っています。
朗らかながらも哀愁のあるメロディーが当時アメリカの続く不況から脱出しようという時代の雰囲気にもマッチしています。
ちょっと元気を出したい時に聞くと元気づけてくれる1曲です。
サッチモの明るいキャラクターも独特の声も本当に大好きなのですが、ほとんど歌詞が聞き取れないのが玉に瑕です。
"You Must Believe in Spring"-Bill Evans
何度も何度も聞いても心にひっかき傷を作っていく曲です。
生死が関わってくるからだけでなく、旋律の美しさと悲しさとただひとつの感情だけではないむしろ人生でも覗いている様な気持ちになります。
破滅的なところに惹かれて美しさが生まれるのか、という気もしますがそれというよりも日本の禅を学んだ彼だからこそ常住不滅という考えを持っていたかもしれません。
精神的に不安定だったからなんて薄っぺらな言葉で評価したくない美しさがあります。
春をテーマに書いてみましたが、この曲に関してはまだ冬真っ只中かもしれません。
タイトルの"春の訪れを信じなければ"というのも、季節が必ずめぐるように人の思いもめぐっていくと祈っているようにも感じます。
春の陽気に誘われて、今週末は特集が盛りだくさんです。
クラシック弦楽器、邦楽、ブラックミュージックと全方位網羅でお送りいたしますので、お気に入りの一枚を見つけに是非お立ち寄り下さい。
ご来店心よりお待ち致しております。
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