今年の夏は猛暑との予想ですが、梅雨開け宣言前からその暑さを感じさせる日々が続いていますね。 レコード店の堀田です。 レコード店があります名古屋の夏は、最高に過ごし難いと評判ですが(かといって冬が過ごしやすいわけでもなく・・・) 今年はいったいどんな猛暑になるのでしょう。 くれぐれも熱中症などにかかられません様お気をつけください。 |
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さて夏といえば、例年いわゆる”フェス”と呼ばれる野外で開催される音楽の祭典が全国各地で催されます。 アーティストと同じ空間で同じ音を感じられるのは格別の感動があると思います。 ましてや大勢のファンや暑い太陽とともに熱狂の渦に飛び込めるとあれば。 しかし、往年のジャズプレイヤーや偉大な作曲家達はもう空の上・・・ともに時間を過ごしたくても叶わない・・・ そんな時!ライブ盤を聴くのです。 偉大なアーティストや観客達がともに熱狂した時間をいつでも感じることができるのです。 怪しげなセールストークの様になってしまいましたが、今回は”ライブ盤”について書いてみようと思います。 |
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"At The Montreux Jazz Festival "-Bill Evans Trio 1968年6月15日 スイス・モントルージャズフェスティバルの模様をラジオ局放送録音によるもの。 ジャケットは会場のすぐ近くのレマン湖のほとりにある古城で、いわゆる”お城のエヴァンス”と呼ばれ愛されている1枚です。 エヴァンスが確立したインタープレイの最高峰と呼ばれる本作ですが、録音はあまり良くないと言われています。 同じスイスでの録音でいえば”Live In Switzerland 1975”が放送用音源を使用しているので非常に音質が良いとか。 1度大きなスピーカーで堪能してみたいものです。 |
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とある批評で、「エヴァンスは、信頼できるベーシストを得られるとそのベーシストを拠り所に、ドラマーの個性に合わせて弾きこなす」という1文がありました。 人気作にもかかわらず、好き嫌いが分かれる本作はまさにこの批評に表れているかと思います。 やれ、ドラマーのジャック・デジョネットが叩きすぎだとかベースのエディ・ゴメスが目立とうとしすぎだとかあれこれ言われますが、他に見られないほどのエヴァンスのハードタッチを聴くことができるのも、この15歳以上歳の離れた若い二人を信頼して作り出すグルーブに任せているからだと感じられます。 インタープレイは”楽器同士が会話するように”と表現されることがありますが、もし気の合わないトリオで好き勝手話しまくっていたらとんでもなく収拾がつかない。 けれど本作は、力強く自由気ままなようでいてしっかりとリードを取られ完成された演奏に仕上がっています。 ベースとドラムのしっかりとしたグルーブがなければメロディーラインは引き立たないし成り立ちません。 荒削りなところがあるものの、他に聴くことのできないほど弾きまくるエヴァンスを引き出してくれたのは確かに二人の実力だと確信できます。 |
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"The Great American Songbook"-Carmen Mcrae 1971年アメリカ ロサンゼルス録音にて録音。 エラ・サラ・カーメンと三大ジャズボーカルとされていますが、他の二人と比べるといまいちネームバリューがない彼女。 ですが、店頭の実演で彼女のレコードをかけるとすぐに「誰のレコード?」もしくは「いいよね、カーメン」とお声を頂けます。 これは彼女の持つ、稀有な声質によるものだと思います。 加えて本作は、彼女のトークの絶妙さを味わうことができます。 楽器陣を紹介するくだりがあるのですが(いわゆる曲間に、on base CHUCK DOMANICO!とかやっていくアレです)、それがまたウマイ。 軽妙で楽しくいかに彼女がサービス精神旺盛だったかわかりますし、観客が喜んでいるかが伝わってきます。 |
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曲の内容もまさにアメリカンソングブック。 アメリカのスタンダードからポピュラーまで堪能することができます。 その中でも、リオン・ラッセルの「A Song for you」は彼女の苦節にあふれた音楽人生を思うと胸を打つものがあります。 加えて特筆すべきは彼女の歌の伝え方の素晴らしさです。 とりたててシャウトやスキャットをすることなく(もしこのことがエラやサラより聴き映えがしないなんて感じられていたら非常に残念ですが)、歌詞をまっすぐに歌うという姿勢は聴衆ひいては作詞・作曲者への尊敬を感じられます。 歌手それぞれの個性があり魅力があり、共感できる部分は様々ですがカーメンには特に人生をまっすぐに受け止めてきた深みや凄み、またそれを軽快に乗り越えようとする人柄の素晴らしさを感じずにはいられません。 かのマイルス・デイヴィスもNYはビルボードに飾られた”ジャズの女王エラ・・・”という看板をみて「エラが女王ならカーメンはどうなるんだ」と言ったとかなんとか。 |
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”SWING JOURNAL JAZZ WORKSHOP 2”-渡辺貞夫 1969年3月15日 銀座ヤマハホールにて録音。 アーティストたちが自由に表現できる、また実験的な場とスイングジャーナル誌が定期的に開催していたイベントから”Dedicated to Charlie Parker”チャーリー・パーカーに捧ぐとのサブ通り、亡き彼に捧げたライブ。 実はレコード店に入る前までは、日本人ジャズプレイヤーの曲はほとんど聞いたことがありませんでした。 というのも、リズム感がやはり日本的に感じてしまうというかなんとなくキレというかダイナミックさがないような・・・なんてよく知りもしないくせに思っていました。 |
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なかなか良いお値段で店頭に並んでいるのをみつけ、名前は知っているけれど特に聞いたことないのでどんなものかしら、とかけてみたところカッコイイ。 こんなアグレッシブな演奏をするのかと目から鱗でした。 いかに自分の了見が狭かったのかと反省するきっかけとなった1枚でした・・・ |
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一期一会の感動やその場の雰囲気まで感じられるのでライブ盤は特に好きですが、ことジャズに関してはスタジオ録音も1発録りであったり個性やフィーリングが醍醐味のところもあるので一概にはいえません。 ましてや某日本人ジャズピアニストの方も、アドリブ部分はすべて譜面に書いているとインタビューに答えていたのでライブも真実即興とはもしかしたらいえないかもしれません。 けれど音楽は生きているものなので、スタジオであってもライブ会場であっても、譜面に書いてあってもなくてもその時の音や感情は唯一のものです。 なにが優れているかというよりも、ただ音楽の楽しさを享受できるのはとても幸せなことだなとつくづく感じます。 また今週末は7月9日(土)より「JAZZ廃盤LP特集」を行います。 まさにこれを逃すともう他では探せないかもしれない、一期一会を探しにぜひハイファイ堂レコード店へお越しください。 ご来店心よりお待ちいたしております。 |