少しずつ暖かい日差しを感じられるようになって参りました。 レコード店の堀田です。 愛猫も窓辺でひなたぼっこをしふかふかの良いにおいに仕上がってきております。 皆様におかれましては、年度末のお忙しい時期かと思いますので風邪などひかれませんようお気をつけくださいね。 |
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さて、常日頃から私は新しいものというよりは歴史あるものに心惹かれるのですが毎年この時期は春の陽気がそうさせるのか、はたまたバイオリズムの乱れ(?)かポップなものを求める傾向にあります。 今年の春のファッションはピンクが流行するようですし、色とりどりの可愛らしいものが並んでいたりすると心躍ったりするものです。 長年通っている漢方のおじいちゃん先生曰く、東洋医学では春というのは「陽」の気が強くなる時期なので自然と心が高揚するそうです。その一方、「陰」の気とのバランスが崩れるので精神的な乱れが起こりやすく、また寒暖差が激しい時期でもあるので余計に自律神経に支障をきたしやすい時期でもあるそうです。 何事も1面だけではなくもう一方の側面がある、と捉える「陰陽思想」は東洋人独特の繊細な物事の捉え方だと感じます。 多面的であることと、歴史的であるということは物事をユニークに味わい深くするものだと思っています。 とかく音楽に関しては、無限のコードや楽器などの組み合わせにより、どんな風にも変化していく多面的どころか流動的で興味が尽きません。 今回ご紹介させていただこうと思うのは、そんな音楽の懐の広さ、底の深さを感じさせるアーティストをたくさん輩出しているオランダの気鋭レコードレーベルとそのアーティストについてです。 |
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”DOX Records" 1997年 オランダ アムステルダムにて設立。 「DOX」とは古代ギリシャ語でideaやopinionを意味しています。その名前のとおり新しい可能性によって音楽シーンを変えようと試みたアーティストグループによって設立されました。 それから今まで20年間、新鮮で実験的な音楽を作り続け型にはまらない方法でプロモーションしています。 そもそもオランダという国は、首都アムステルダムを中心に音楽学校やジャズを教えるシステムをサポートするNPO組織も多数ある、ジャズという音楽文化に対する認識の高い国です。 「音楽家」を名乗れば支援金も出るそうです! また、世界的に有名な「ノースシージャズフェスティバル」も毎年開催されています。 |
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”Wouter Hamel(ウーター ヘメル)” そもそもなぜ私がこのレーベルを知るに至ったかというと、彼のおかげなのです。 イケメン。甘い声。気さくな性格。 出ました、モテ男3拍子。 実際、「新世代のシナトラ」や「ミスター・ジェントルボイス」だなんて呼ばれています。 1977年 オランダ ハーグ出身のジャズシンガーで、10代のころはスマッシング・パンプキンズなどロックに傾倒しその後アニタ・オデイなどのジャズボーカルに惹かれていったようです。 個人的にはスマッシング・パンプキンズからどんな道を進んでアニタまで行き着いたのか見過ごせないところではありますが・・・ 音楽学校に通っている際、ハーモニーや楽器リズムで無限に形を変える音楽に魅力を感じアーティストとして活動していこうと心に決めたようです。 |
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初めて歌声を聴いたのは、某フィギュアスケートアニメの挿入歌でした。 (本当はこのアニメについて書きたかったのですが、オタクがにじみ出るので控えさせていただきます・・・) 優しくて上品な声で、ほんの一瞬でも「いったい誰なんだ」と耳を奪われました。 バラードシンガーなのかなと思いつつ、彼の楽曲を聴いてみると実はジャズをベースとしたポピュラリティあふれる楽曲で、自分で楽曲を作っていることを知り意外性に驚きました。 一見するとおしゃれポップなのですが、良くきいてみるとただの消費される音楽でないことがすぐわかります。 彼は、楽曲を作るにあたって楽器の組み合わせに非常に心を配るそうです。 それは少しの音の違い、コードの違いが与える印象の差を繊細に理解しているからで、そういった音楽的造詣の深さが耳障り良いながらも只者じゃないユニークな印象を与えていると思います。 数年前、DECCAと契約し世界的に羽ばたいていますが、今でもオランダ内ではDOXと契約しているそうです。 現在4枚のアルバムをリリースしており、また3月には新しいリリースがあるようでプロモーションのために来日しないかなとワクワクしています。 全作すばらしいですが、お気に入りはメロウジャジーポップな1作目”Hamel”とエレクトロポップな4作目"Pompadour"です。 |
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”Giovanca(ジョヴァンカ)” オランダを代表するモデルで、奇跡のシンガーと評されています。 シャーデーっぽいR&Bかなと思いきやミニーリパートンのようなスイートな歌声です。 とはいえ、その中にソウルのエッセンスを感じつつブラック過ぎない、軽すぎない絶妙な心地よさです。 もともと、10代のころからモデルとして活躍しておりまたバッキングボーカルとしても活動していました。 先に紹介したウーターヘメルの楽曲にも参加し、その際プロデューサーに見出され2008年にデビューしました。 プロモーションビデオも自然体にオシャレでスタイリッシュ。 デビュー作「Subway Silence」アートワークとかファッションとか雑誌のようです。 そこはかとなく漂うソウルを感じる”FREE”からスイートなメロウ”To the Moon”への落とし方は反則なくらいキュンとします。 ヘメルもですが、3年ごとにアルバムを出してるようなので彼女もそろそろ新作が出るのかな、と思っています。 |
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”Benny Sings(ベニーシングス)” オランダのポップ・マエストロと呼ばれ、先の2人のプロデューサーもつとめる彼。 ちょっとぽっちゃりでひげもじゃのくせっ毛・・・でもなんかカワイイ。 一見冴えない感じではありますが、彼の作り出す楽曲の魅力はその等身大さかもしれません。 スタッカートの効いたポップなサウンドは、マイナーコードなのに明るさを感じ、それでいてピカピカの晴天ではなく、のんびり起きた日曜日のお昼のようなリラックスした明るさに満ちています。 1977年 オランダドルドレヒトに生まれ、デビュー前にはグランジバンドを結成、その後、ソウル、ジャズ、エレクトロニカ、ヒップ・ホップに影響を受け、またプログラミングを習得しています。 また、25歳からシェーンベルクやシュトックハウゼンなど現代音楽に傾倒し、様々な音楽のエッセンスを自由に取り入れ現在はその魅力を抽出したようなピュアなポップを製作するに至っています。 1作目”Champagne people”やさらにPOPでAORな”Benny at home”など渋谷系からフリーソウル以降の日本人の感覚にフィットするように思います。 |
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このレーベルやアーティストに共通して言えるのは、「自由」であること、だと思います。 オランダ人の物言いでよく耳にするのは、「○○は危ないけど、やるなら自己責任で」とか、警官でさえ「その人は詐欺師だからついていかないほうが良いが、決めるのはあなただ」なんて、止めるところじゃないの?と思うのですが、良いことも悪いこともオープンにして、良いことも悪いことも一面的でなく何を選択するのかは個々の自由、ということのようです。 グローバルな今、出身国だけでその人を語ることはできませんが、そんなオランダのオープンな風土が様々な音楽を学んでそのすべての旨みを抽出したような型にはまらない自由な考え方のジャズ、たくさんの音楽的フィルターを通して制度を高めたポップスが生まれる基盤を作ったのは間違いないのではないかなと思います。 木靴やチューリップ、風車のイメージしか持てなかった自分が少し恥ずかしいと思うくらい、ユニークな音楽シーンがオランダでは展開されているようです。 オランダ、今一番行ってみたい国です。 |