こんにちは、こんばんは、レコード店片山です。 最近は昼間だけ暖かい日がありますね。春の始まりですかね。 そろそろ春がくるはずなのに意外に寒かったりします。いつになったら春がくるのやら。早く春よこいこい。 昨日は暖かかったからといって油断して厚着を怠るといきなり次の日は寒くて風邪ひいてしまいますからね。みなさま体調管理にはお気をつけください。 |
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そうそう、体調といえば デヴィッド・ボウイ、プリンス、ジョージ・マーティン、キース・エマーソン、この数年60年代70年代の礎を築いた偉大なレジェンドたちがこの世を去っていきます・・・。そんな時代になってきましたよね・・・。そりゃ当時に活躍していた人たちは年齢も重ねているわけですから、ね。 そしてムッシュかまやつさん。 アーティスト・リスペクトの多い偉大な日本ロックのレジェンド、かまやつひろし。 みなさんに見えているムッシュの姿はテレビでとぼけた顔してババンバンの長髪の人でしょうか? ・・・いやいやいやいや! ムッシュはザ・スパイダースというグループ・サウンズ・バンドで日本のロックを作った人ですよ。 え? ザ・スパイダースって堺正章と井上順ていうタレント&コメディアンがいたバンドだよね? ・・・いやいやいやいや! あながち間違ってはいませんが、ザ・スパイダースの偉大さ!凄さ!をみなさまわかってらっしゃるのでしょうか?! そう。ザ・スパイダース! 日本で最初にロックを生んだのがザ・スパイダース! 元祖ジャパニーズ・ロック・バンドがザ・スパイダース! そんなザ・スパイダースの凄さを知らない人たちにいまからでも再評価していただきたく、この機会にザ・スパイダースと元祖日本ロック・バンド界隈=グループ・サウンズの世界について今回は書こうと思います。 |
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「日本で最初のロック・バンドたち=グループ・サウンズ(GS)はロックなのか??」 |
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そもそも日本ロックの誕生としてよく言われるのは1970年ぐらいからうまれた「はっぴいえんど」「キャロル」「フラワー・トラヴェリン・バンド」「ジャックス」「外道」「村八分」などの俗にいう「ニューロック」なるカテゴリー・バンドが紹介されますよね。 いや、ちょっと待ってください。 それより以前に日本にはグループ・サウンズ(以下GS)なるバンドたちのムーヴメントが60年代後半にありました。 66年にビートルズが来日しそれに衝撃を受けて触発されたバンド達と音楽会社たちはこぞってGSバンドを結成し一世を風靡しました。 当時300近くのバンドがいたといわれたのでそれも驚きですが、その中でもヒエラルキーがありテンプターズ、タイガースなど人気のあるバンドもいればシングル1枚で終わった俗にいう「カルトGS」とのちに再評価されるバンドまでいるのですが、サウンドも様々でした。 ビートルズ直系のビート・バンドもいれば、サイケ・バンド、フォーク・バンド、ガレージ・バンド、アイドル・バンド、完全なる歌謡曲バンド、などなど このサウンドセンスはメンバー本人のセンスなのか音楽会社の策略なのかはわかりませんが、 改めて聴いてみると「この激しさ、いま聴けばこれはロックじゃないか!」と思わせるバンドもいくつか存在するのです。 その逆で当時は音楽会社専属の作詞作曲家がおり、本人の意図とは関係のない「あくまでも売れ線の歌謡曲をシングル・ヒットさせる」という戦略がスタンダードとなっていました。 そのためシングルは歌謡曲路線で、その反面でアルバムやライブでは自分たちの好きなカバー曲やロック・アレンジとした曲がメインといったバンドも多いようです。 その凸凹した曲バランスの脱力感がまた愛おしいのだが、そこがロック然としていないということでGSをロックだと認めない(ださいと判断する)リスナーも多い。 しかしメンバーの意思とは真逆に歌謡曲を歌わされているケースがのちのメンバーたちの暴露話でわかるように、根っこにはロックをやりたい&俺たちはロック・バンドだといったスタンスで作品にいくつか反骨心の表れでレコード化できたバンドもあるのも事実。 そうなると70年代に誕生するニューロックよりも早く「GSこそが日本で最初のロック・シーン」とも解釈できます。 それではもっと掘り起こして「最初にロックをレコード化した日本のバンドは??」と調べていきますと・・・ 実はこのザ・スパイダースにたどり着くのです。 |
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デビュー・アルバムでいきなり全曲オリジナル曲で勝負した最初の日本ロック名盤=「ザ・スパイダース・アルバムNo.1」の誕生 |
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ザ・スパイダースの歴史はかなり古く、ドラマーの田辺昭知によって61年に結成。 最初はジャズ喫茶やバック・バンドとして活動し63年ごろに堺正章、井上順、そしてムッシュかまやつが加入し当時海外で大人気だったビートルズみたいなビート・バンドへシフト・チェンジをする。 ムッシュは当時国内盤レコードではなく輸入盤レコードでしか買えないキンクスやアニマルズなどを好んでおり(いまでいう早耳リスナー)、このブリティッシュ・ビートをこの日本バンドで再現しようと考え、リーダーの田辺はムッシュの才能を認めて作曲を任せることとなる。 さきほど説明したとおり音楽会社専属の作曲家を使うのがスタンダードだった日本音楽シーンなのに、奇跡的に色んな理由が重なってメンバーの好きなように作ることとなったこのファースト・アルバム「ザ・スパイダース・アルバムNo.1」が66年4月にリリースされた。 日本ロック誕生の瞬間である。 (悲しいかな、セカンド・アルバム以降はカバー曲の作品が多くなり、他のGS同様に作曲家が作った歌謡曲シングルをリリースしていくこととなるのだが・・) つまり66年6月のビートルズ来日よりも前にリリースされたということはGSブーム以前からすでにロック・アプローチをしていたことになり、流行る前から日本にロックを演奏をしようとした「元祖GSバンド=元祖和製ロック・バンド」の図式にも当てはまるのです。 |
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◆ザ・スパイダース・アルバムNo.1 (66年作) さてこのファーストなんですが、何度も書いているとおりこの時代に全曲オリジナルというのが既に驚愕なのだが、それ以前にムッシュのセンスが既に大爆発しておりブリティッシュ・ビートと日本語詞の融合が確立されていることにも驚きだ。 日本人特有の三三七拍子でつんのめるリズムとパンキッシュな狂暴ギターソロで攻めるデビュー・シングル「フリ・フリ'66」でスタート。 アルバムの構成としては「フリ・フリ'66」「ロビー・ロビー」などの攻めのビート・ナンバーとほんのりフォーキーなゆる〜いバラードとの両極端な二面性で構成されており躍らせては酔わせての交互である。 ほとんどの曲を作曲し洋楽ナイズドされたムッシュの作曲センスがまあああああ素晴らしいのですが、個人的には田辺の爆裂変拍子ドラムがかっこいいですね。 あきらかにまだジャズ上がりだと感じ取れる手癖のスネアとバスドラムで、ロックというよりはのちのプログレ&ジャズロックのドラマーみたいなトリッキーなプレイ、そこが逆にアクセントとなり斬新ですね。 他にもソリッドなギターバッキングとキンクスっぽい攻めて暴走するギターソロ&疾走する8ビートが元祖日本のギターロックとも感じ取れ、和製ガレージ・パンクとも再評価されている「ヘイ・ボーイ」が熱いです。 オーバードライブな豪快ギターが炸裂する「ミスター・モンキー」も完全にギターロックだし、バラード曲も多いんですがアッパーなブリティッシュ・ビート「ゴー・ゴー」でちゃんと締めてくれます。 改めて聴いても「この時代にこんなにもロックなサウンドが日本に生まれていたのか・・!」と思い、ザ・スパイダースの偉大さに感動しますね。 |
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◆ザ・ゴールデン・カップス・アルバム (68年作) 「日本のR&Bロックを作った本格派ロック・バンド」として再評価されたザ・ゴールデン・カップス(以下、カップス)。 このファースト・アルバムも評価が高い。 ザ・スパイダースがビートルズやキンクスなどのビートバンド・スタイルが強かったのに対しこのカップスは ゼム、プリティ・シングス、初期ヤードバーズなどのポップさよりも黒さを魅力としたR&Bビート・バンドからの影響が濃厚で、 同時期に海外で活躍したクリームやジミヘンなどのブルース・ロックなどのサウンドも同時に取り入れているところが特徴である。 正統派バンドというよりは不良的な&チンピラ的なやさぐれた雰囲気もロック然としていますね。 弾きまくるえっぐい極悪ファズ・ギター、シャウト多用のソウルフルなボーカル、性急なビート、それ以上にルイズルイス加部(イケメンのハーフ)のウネリまくりランニングしまくりの超絶リード・ベースが凄いのです。 ザ・フーのジョンもそうでしたがルイズルイス加部のベースもほぼ全演奏ギターソロではなくベースソロで弾き倒すという前代未聞のスーパー・ベーシストで、日本屈指のレジェンド・ベーシストとしてもずっと評価されいまだフォロワーも多数います。 選曲も「ヘイ・ジョー」「モジョ・ワーキング」などのガレージ・クラシックの本格的カバーが大半を占めており英語曲が多く格の違いを見せつけます。 ただ本人たちが不本意でGS特有の音楽会社戦略の歌謡曲シングルとなった「いとしのジザベル」「銀色のグラス」「陽はまた昇る」などが収録されておりアルバム・バランスが正直なんだかな〜と思う部分も昔はありましたが、よく聴くとこの歌謡曲シングルでもやさぐれたアレンジが結構ハードだし、まだロックとしても解釈できるレベルだと思いますよ。 |
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◆サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン / ザ・モップス (68年作) カップスと共に海外の60年代ガレージ・パンク好きに評価が高い日本が誇るロックバンド、ザ・モップスのファースト。 ドスのきいたボーカリスト、鈴木ヒロミツ率いるザ・モップスはヒッピーで野蛮なルックスと当時海外で流行りだしたドアーズやジェファーソン・エアプレインのサイケ・ロックをいち早く導入。 ジャケやタイトルからするとさぞかしサイケなんやろうな〜と思いきや、いうほどサイケじゃないです。アレンジも洋楽と同レベルな完成度で英語詞曲に関しては海外のバンドじゃないかと思わせるほどです。 ザ・スパイダースやカップスに比べて洋楽っぽいロック・バンドというか60年代ガレージパンク・バンドといった印象が強いですね。 ガレージパンク・クラシックと海外でも人気のオリジナル曲「アイ・アム・ジャスト・ア・モップス」は英国のフリークビート・バンド、ザ・ソロウズのように急激にハイスピードに転調するキラー名曲。(オリジナルですが英語詞です) 哀愁感とメロディアスなギターソロが印象的な疾走ビート・ナンバー「ベラよ急げ」も名曲です。 余談ですが、差別用語で発禁となった「ブラインド・バード」が収録されていたため、僕が欲しかった時代はなかなか国内盤が買えず輸入盤やブート盤が主流だった作品なんですが、いまでは安易に手に入る時代となりました。いい時代です。(しみじみ) (ちなみにこの「ブラインド・バード」もハイエナジーなガレージ・ブルースで必聴です) |
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◆ヤング・サウンド・R&Bはこれだ! / ザ・ダイナマイツ (68年作) 実はGSを日本の最初のロックだと再評価したのは我々日本人よりも海外のリスナーだという説も強い。 なんなら日本では「GS=グループ・サウンズ」の略語も海外では「GS=ガレージ・サウンド」の略語だと解釈しているほどなのです。 (GSのガレージ寄りバンドばかりのコンピ作品も輸入盤の方が多くて先だった) そんな日本のGSを掘り起こした60年代ガレージ・コレクターたちが目をつけたのが「カルトGS」と再評価した「シングル1枚で消えたマニアックなGS」たちである。 このカルトGSとは、普通のGSでは話題性がなく売れないということでメーカー話題性重視の戦略がありクレイジー&フリーキーなバンドたちで、その中でも突出して人気なバンドがこのザ・ダイナマイツ。 かろうじてシングルだけではなく本作ファースト・アルバムもリリースできたバンドだ。 のちに「村八分」として和製ロックンロール・ブルースを開花させる名ギタリスト、山口富士夫が在籍していたポスト・カップスな実力派バンドで、 中でも「これぞ和製ロック・アンセムだ!」と言わんばかりの超キラー名曲「トンネル天国」をうんだ功績はかな〜〜り大きい。 この「トンネル天国」、歌詞やタイトルはGSぽさ脱力感丸出しなのだが、曲のハードさがブチ抜いて激ハイエナジーだ。別格といっても過言ではない。 ロックはドラムがでかくてナンボじゃ!といわんばかりに爆音ドラムのイントロからいきなりフルスロットル毛穴全開突撃! アジテイトしながらガナるボーカルとやかましい&ウルさい大合唱コーラス!メロディアスでありながらアグレッシヴなギターソロ! ロックは勢いが大事!このテンション!若さ爆発!おーいえー!!な日本ロックのクラシック名曲「トンネル天国」を聴いて何も感じないならもうお話できません。いや、マジで。 つきささる極悪ファズ・ギターがしびれる日本語詞のオリジナル曲「恋はもうたくさん」も泣きとハードさのバランスが絶妙で、蒼く疾走する人気の高い名曲です。 他の曲はカップスに近い渋めのR&Bカバーが多いんですが、爽やかなソフト・ロック寄りな洋楽ポップスのセンスも垣間見えますね。 |
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◆ムッシュー/かまやつひろしの世界 (70年作) さてさて最後に、我が日本ロックのレジェンド、ムッシュが残した名盤をご紹介しなくては。 ザ・スパイダース在籍時に作成したファースト・ソロ作で、日本で初めてひとりで全楽器を演奏(ボーカル、ギター、ベース、ドラム、アレンジ)して録音した「元祖和製お宅名盤」なのです。(本人曰くポール・マッカトニーより早いらしい) 凄いですよね〜。スパイダースで日本で最初のロック・バンドとして活躍し、ソロ・アーティストとしてはこれまた日本で最初に宅録作品を残したというこの功績。 この人はほんとセンスが別格すぎてきっと時代が追い付いていけなかったんでしょうね〜。 さて本作ですが、ロック的感覚というよりも自分の脳内分泌を放出したかのようなかなりサイケデリック&アシッドな作風。 シュールでハイセンス、どことなくダークでかつどこかリラックスしているようなマイペース&マイワールドが心地よいです。 かまやつひろしさん。 あなたの作り上げた音楽はこの日本ロックの礎となり我々音楽好きに素晴らしい感性をくれました。 ご冥福をお祈りいたします。 |
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いかだったでしょうか。これを読んで少しでもGS&ムッシュのイメージが変わりGSをムッシュを日本のロックの誇りとして再評価していただけたら嬉しいな〜と思います。 |