私の住んでいる葛飾区亀有のJR亀有駅前は風が強く、この時期は肌を刺す様な北風に悩まされます。今年も残り僅かとなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。ハイファイ堂 秋葉原店 廣川勝正です。 さて、今回は「ボーカルシステムを組もう!」と「新旧ソナス対決!」の2本立てでお届けしたいと思います。 |
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「ボーカルシステムでREVEL AUDIO?」 このような声が聴こえてくる様に感じる程、自分でも意外なスピーカー選択だと思います。JBL製ドライバーを使ってマドリガルが作成となれば、直線的にエネルギーが体にぶつかってくる様な音を想像される方が多いと思いますが、・・・まさにその通りです! が、しかし、そこは組合わせの妙という物を発揮させて、本当にボーカルシステムに仕上げてしまいました。 スピーカーの詳細はここでは詳しく述べませんが、110cmを超える高さと70kgを超える重量、ペアで189万円(1999年発売時の新品価格)という堂々としたハイエンドスピーカー。先に述べた通り、どちらかと言えばモニター的な細かな描写力が自慢のスピーカーです。 このような難しいスピーカーだからこそ、組み合わせる機器が以下の様になった次第です。 |
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私の持論の中に「スピーカーの次に音色に大きく影響するのはプリアンプである!」というのがあります。スピーカーが決まったら次にプリアンプを選択するというのが私のポリシーなのです。 そこで、打ってつけのプリアンプを秋葉原店で発見。上の写真のMARK LEVINSON/No.32Lです。 このプリアンプの印象を一言で表現すると「大人の音」です。あくまで個人的印象なのですが、そう感じます。同社の下位モデルと圧倒的に違う落ち着きのある安定感と音の厚み、それでいてフラッグシップ機と呼ぶにふさわしい高い情報量を持ち合わせる隙のないプリアンプです。 自分の納得する音を出したいのなら、このプリアンプかジェフのコヒレンス2のどちらかしか考えられませんでした。という事でプリアンプはNo.32Lで決まりです。 |
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さて、パワーアンプは最後にお話しするとして、音の入り口を先に紹介しましょう。CDトランスポートはMARK LEVINSON/No.37Lを採用しました。今回、スピーカーをREVEL AUDIOにした時点で、「アップコンバートは避けよう。」と心に決めていました。 理由としては、えぐり出す様な情報量を求めるよりも、音のまとまりと厚み、それに密度感を維持したかったからです。合わせてニュートラルな個性の持ち主である事を重視しました。 No.37Lは上記条件を満たしてくれるトランスポートでした。 |
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D/AコンバーターはESOTERIC/D-70VUを採用。 先に述べた通り、ここではアップコンバートせずあえて44.1kHzでの使用です。No.37Lとの組合わせでは、意外と滑らかな表現もいけると感じました。出て来た音はこの後述べるパワーアンプの次に良い意味で意表をつく感じでした。 |
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REVEL AUDIO/Ultima Studioを選んだ時点で、自分の選択に絶対無いと思っていたMcIntoshのパワーアンプ。実際に事前にMcIntosh/MC300と組み合わせて聴いた時に、全体的に重苦しく、まるで靄がかかった様な音で、相性の悪さを知っていたからです。 ところが、組み合わせたくなるパワーアンプが店内で見つからず、駄目元でMC150を組合わせノラジョーンズを鳴らしたところ、驚きました。 暖かで滑らかな、まさに肉声と言える音が聴こえてきたのです。何かの間違いと思い、ユーミンのCDで再度試聴しましたが、好印象はそのまま、実に心地よい響きに包まれました。 発売時期も近く、しかも同じメーカーの上級機のパワーアンプで全然駄目だったのになぜMC150だと好結果が出たのか未だに不思議に感じます。 実は、「ボーカルシステムを組もう」と思って色々試行錯誤して出来上がったシステムではありません。REVEL AUDIOと組み合わせるパワーアンプがなく、たまたまMC150を組み合わせたら「ボーカルシステム」になってしまったのです。これほど心地よい音がREVEL AUDIOから出て来るとは想像していませんでしたから。 REVEL AUDIO/Ultima StudioとMcIntosh/MC150という、オーディオを熟知している人ほど決して組み合わせないペアリングが驚く様な好結果をもたらしてくれました。1点モノの中古製品中心のハイファイ堂だからこそ発見出来た「ボーカルシステム」でした。 |
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さて、次にお届けするのが「新旧ソナス対決」と題しまして、ソナスファベールのミドルレンジトールボーイスピーカーの聴き比べです。 こちらは自分が想像していた通りの勝敗結果(あくまで主観的な)となりましたが、思っていた以上の音の違いに驚かされたという新たな発見もありました。 |
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まず、最初に聴いたのが2000年発売のGrand Piano Homeです。18cmウーファー、同口径のミッドレンジユニット、2.6cmドームツイーターという構成で、天板からバッフル面、底面、背面までぐるっとレザーが張ってあり、ピアノブラックのボードでサンドイッチした構造のエンクロージャーです。 実は、自分も一時期自宅で鳴らしていたスピーカーでもあり、音は良く知っています。 今回改めて、オーディオショップで思わず足を止めてしまい聴き入っていた時の記憶が蘇りました。全帯域に整ったエネルギーバランス、澄み切った中高域がもたらす美音と呼べるホーカルなど、改めて良いスピーカーだと感心させられました。はっきり言ってメチャクチャお買い得なスピーカーだと思います。 ということで、大絶賛と言える程の評価です。 |
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さて、Grand Piano Homeの後継機として確か2007年頃発売されたCONCERTO DOMUS。 使用されているユニットは18cmウーファーと2.5cmリングラジエーターツイーターの2ウェイ構成です。基本的な構成やプロポーションはGrand Piano Homeに似ていますが、エンクロージャーが後部に向かってなだらかに細くなっていく形状に進化している点が最大の相違ポイントです。 さて、出てきた音にこれまた驚きました。Grand Piano Homeと全然違う音なのです。「同じメーカーのスピーカーなの?」と疑問を抱く程に。 まず、音の中心位置(そのスピーカーの一番おいしい帯域)が違う事です。Grand Piano Homeは中高域(女性ボーカルの帯域です)であるのに対し、CONCERTO DOMUSはもう少し低域側に中心を置いている感じです。ただ聴いていて違和感を覚えるくらい最高域だけ透明感が高いのに他の帯域は眠った様な暗めの表現なのです。ただ、その分陰影感やスケール感には優れていると感じましたが・・・。 イタリア製のスピーカーなのにデンマーク製や英国製のそれと思えるくらいです。 ソナスファベールに対するイメージが崩れる様な音で個人的には受け入れられません。 今回の対決は明らかにGrand Piano Homeに軍配が上がりました。 |
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同じソナスファベールなのにどうしてここまで音が変わってしまったのか、その理由はエンジニアが変わった事にあります。 Grand Piano Home時代までは、ソナスファベール創始者のフランコ・セルブリン氏の設計でした。 スピーカーを一つの楽器として設計開発する同氏が手がけるスピーカーの音色に魅了されてきた方は多いのではないでしょうか。 透明でチャーミングで響きの豊かな音は永遠の産物と思います。 さて、同氏は2007年頃を最後にソナスファベールを離れ、のちに自信の名を配したブランド「フランコ・セルブリン」を立ち上げます。同氏が去ったソナスファベールは音作りの方向性が変わり、この様に大きな音の差が生まれたのだと思います。 今年、フランコ・セルブリン氏が惜しまれながら天に召されてしまいました。スピーカー制作の偉人がまた一人逝ってしまった事に、とても哀しく残念に思います。 最後に比較試聴に使用した機器を紹介します。プリメインアンプにはアキュフェーズの中でもニュートラルな音が特徴のE-406、CDプレーヤーにはフラットな特性で透明感のある音が魅力のMARANTZ/DV-12S2です。 |
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如何でしたでしょうか。 今回のメルマガが2013年最後にお届けするという事で、力が入り長文となってしまいました。最後まで読んでいただきましてありがとうございました。 来年2014年は皆様にとりましてよい年であります事をお祈りいたしております。 では、また来年。 |