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ハイファイ堂メールマガジンをご覧の皆様、こんにちは。
大丸東京店の北村です。
早いものでもう10月になりました。ついこの間まで猛暑に耐えていたと思ったらもう秋の気配が近づいてまいりました。朝起きて窓を開けると肌寒さを感じ、季節の変わり目を実感しています。
秋といえばオーディオ新製品がたくさん登場する時期ですね。私が注目しているのは家庭用では初登場となる「ドルビーアトモス」を搭載したAVセンターです。
映画館でしか聴けなかった最新の音響規格ドルビーアトモスが家庭でも楽しめるようになります。
ドルビーアトモスとは従来の5.1chや7.1chサラウンドに加え天井方向にもチャンネルを増設し、より臨場感有るサラウンド再生をねらった最新の音響再生方式です。
劇場用では最大で64ch、民生用では32chものスピーカー出力が可能との事です。
ただ単にチャンネル数が増えただけではなく、設置されたスピーカーの数、再生能力や配置を計算、さらにデータ化された音声の高さと時間軸の情報を加え、最適な音場となるようにプロセッサーが音声を再構築し補正してくれるのも新しい機能のひとつです。
これにより再生環境の違いに関わらず、より正確なサラウンド再生が可能になるそうです。
このドルビーアトモスはすでに日本でもいくつかの映画館に採用されています。
実際に何度か聴いてみましたが、その効果は確かに従来方式とは一線を画するものがありました。
私が鑑賞した中で一番その効果が実感できたのが「ゼロ・グラビティ」という映画でした。
「ゼロ・グラビティ」は2013年に公開された映画で、第86回米アカデミー賞では音響編集賞、録音賞を含む7部門を受賞しています。
この映画は宇宙飛行士が宇宙空間で遭難するというストーリーなのですが、主人公が遭遇する様々なシチュエーションが迫真の音響効果により、まさに自分が「体感」しているような臨場感が味わえました。
音による閉塞感と開放感のコントラスト表現が、映画館でこれほど実感できたのは初めてでした。
作品のテーマを読み解く鍵となるメタファーが、映像や脚本だけでなくサウンド面からも脳に訴えかけてきます。これがドルビーアトモスならではのサウンドなのかと驚きました。
ただ、ドルビーアトモス上映でも作品によってはあまり効果が感じられないものもありました。
これは映画のサウンドデザイン自体がドルビーアトモスの特性を活かしきれていないのかもしれないし、またはプロセッサーの信号処理自体がバランスを重視し、あまり大胆な効果がでるのを避けているせいかもしれません。
いずれにせよ今後対応作品が増え、プロセッサーの精度が進化すれば改善されるでしょう。
さて、民生用ではドルビーアトモス対応のAVセンターがいよいよこの秋に登場予定です。現時点でパイオニア、オンキヨー、ヤマハ、デノン、マランツの5社がドルビーアトモス対応のAVセンターをリリースする事が判明しています。今後はソニーの参加も期待されます。
家庭用ドルビーアトモスでは、住宅事情から天井へのスピーカー設置の難しさを考慮して、「イネーブルドスピーカー」なる物も発表されています。
天井スピーカーの代わりにこのイネーブルドスピーカーをフロントスピーカーの上に設置する事で、反射音を利用して同様の効果が得られるそうです。確かに天井へスピーカーを設置するのは一般家庭では現実的でないので、こういった配慮はありがたいですね。
ドルビーアトモス・サウンドトラックを採用した世界初のBlu-ray Disc「トランスフォーマー/ロストエイジ」が北米ではすでに発売されており、今後もドルビーアトモスでリリース予定のソフトがいくつかラインナップされています。
日本国内販売では「ネイチャー」という大自然をテーマとしたドキュメンタリー映画が第一弾で、11月に発売予定です。
まだ家庭用ドルビーアトモスを聴いたことはないのですが、高さ方向での音像の実存感の改善には期待しています。普通の5.1ch音源等をアトモス化して鳴らす事も出来るそうなので、新作に限らず、鳴らしてみたい作品がたくさん思い浮かんできます。
イネーブルドスピーカーの効果の程も気になりますし、もうリリースが待ちきれない気分です。そして個人的には、はやくドルビーアトモス対応のAVプリを出して欲しいですね。やはりお気に入りのパワーアンプと組み合わせて鳴らしたいですから・・・。
実際に試聴できたら、そのインプレッションはまたの機会にご報告したいと思います。
チャンネル数が増え続けるサラウンド業界ですが、それをどう使うかはクリエーター次第です。チャンネル数の限界に挑戦する人もいれば、そうでない人もいるでしょう。
昨年公開された宮?駿監督の映画「風立ちぬ」は、サラウンド上映が当たり前のようなこの時代に、あえてモノラル音声で制作されました。
要は作品を表現するのに必要なツールが取捨選択できればいいのだと思います。複雑さを伴っても、音響技術の進歩によりその表現の幅が広がる事には賛成です。いろいろと思うところはありますが、ひとまず今はドルビーアトモスの動向に注目したいと思います。
それでは今回はこの辺りで失礼致します。
ハイファイ堂大丸東京店 北村
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