ハイファイ堂メールマガジンをご覧のみなさま、こんにちは。 大丸東京店の北村です。 いよいよ寒さが和らいできて、我が家の暖房稼働率もだいぶ減少してきました。先週は季節外れの「4月の雪」が降り、ところによっては桜と雪のコラボレーションも見られたとか。 私の住んでいる場所でも早朝に雪が降り、屋根に薄く積もった眩しい白色が眠気を覚ましてくれました。綺麗だなぁと見惚れつつ、念のため通勤電車の遅延が無いかをチェック。もうちょっと落ち着いて眺めていたかったなぁ。 今冬の東京は去年のような豪雪が無くて安心した反面、降雪自体が少なく、それはそれでちょっぴり寂しい感じもしました。次の冬は“交通機関に影響が出ない範囲”で綺麗に積もってくれないかと、空に向かって贅沢なお願いをしてみたり…。みなさまはいかがお過ごしでしょうか。 |
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季節も春になり、部屋の模様替えで心機一転、という方が多いとテレビで紹介されていました。気分転換には良いですが、オーディオ機器があるとなかなか自由な模様替えというのは難しいかもしれません。そんな中でも気になるのはスピーカーの設置場所。スピーカーの設置というのはけっこう重要なもので、この扱い如何によっては本来の性能を発揮できないケースもしばしば。 店頭ではスタンドやベースに乗せて展示している事が多いですが、そもそもそういったスタンドに乗せる必要はあるのでしょうか。お客様からもそういった内容のご相談を受ける事がよくあります。今回のメルマガでは、スピーカーの設置方法をご紹介したいと思います。店頭で3パターンの設置を比較試聴してみました。 |
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スピーカーでは専用・推奨モデルのスタンドがある物もありますが、こういう物は中古市場ではなかなか入手が難しい場合があります。 今回の試聴では… ?床に直置き ?移動用台車に乗せる ?オーディオ用スピーカーベースに乗せる、の3パターンで比較します。 |
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使用したスピーカーはYAMAHAのNS-1000M(写真上)。小さなセッティングの変更にも敏感に反応してくる、描写力の優れたスピーカーです。 試聴時の耳の高さは床から約110cm。スピーカーとの距離は約2mです。L/R幅は近距離なのでスピーカーに角度は付けずに正面を向けています。スピーカーと後方の壁は30cm離し、また試聴室の横幅が約230cmなので、スピーカーと壁との距離は比較的近い部類に入ると思います。 |
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●床に直置き まずは床に直置きのケースを検証してみます。店頭では床にラグが敷いてあります。ラグはけっこう音を吸収するので、これがフローリングだとまた印象が変わるかもしれません。また、商品が汚れないようにスピーカー直下にフェルトを1枚敷いています。 |
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まず一聴して思うのは、音がこもり気味だという事。NS-1000Mはウーファー口径30cmというやや大きめのスピーカー。豊かな低域再生が可能ですが、その分床や壁に反射する音波のエネルギーも強くなります。床に直置きだとスピーカーから出た音がもろに床からの反射音に濁され、歯切れが悪くモヤっとして聴こえます。 また、スピーカーと床・壁の距離が近いと、共振や反射により特定の帯域が増幅されてしまいます。 今回の試聴でも床との共振・反射のせいか、低域がかなり膨らみ気味に聴こえました。量感は出るのですが、全体のバランスでみると低音過多というか、中高域が埋もれてしまいます。これも歯切れの悪さの原因なのでしょうね。最低でもウーファー口径の半分は持ちあげたいところかと思います。 逆に言えば、音を調整したい時にはスピーカーを壁や床に近づけたり離したりしてみると、上手くコントロールできる場合もあるという事。使いこなしのひとつとして覚えておいて損はないですよ。 高域の繊細さ ★★☆ 中域の密度感 ★★★ 低域の豊かさ ★★★★ 総合評価 ★★☆ |
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●移動用台車に乗せる スピーカーも大型になってくると、一度設置したら簡単には動かせない場合が多いと思います。しかし家具の位置や生活動線等様々な理由から、動かせないと困るという設置環境もあります。そういった環境下では台車に乗せて使っている方もいるようです。移動は楽ですが、音質はどうでしょうか。店頭で45×60cmの台車に乗せて検証します。 |
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台車の高さは約12cm。台車の上面は荷物に傷がつかないマット状になっています。 床に直置きパターンと比較すると、低域の贅肉が削ぎ落とされた印象。スッキリとした分、音の輪郭がはっきりしてきました。 しかし、音質が改善されたという感じではないようです。台車のコロのせいでグリップが効かないのでしょうか、何だか力感に欠ける音になってしまいました。 過去の経験からすると、台車に乗せるケースでは乗せる物の重量の影響が大きいように思います。重量があるほど台車の動きを抑えこむ働きがある為かと推測しますが、JBL 4343くらいの重量(約80kg)になると今回ほどの悪い影響はあまり無いように感じます。 トゥイーターの高さは床から約73cmと、床直置きよりもリフトアップされました。 トゥイーターは耳の高さと揃えるのが理想ですが、床直置きセッティングよりも耳に近づいた分、高域の明瞭さが若干ハッキリしたように感じます。 高域の繊細さ ★★★ 中域の密度感 ★★☆ 低域の豊かさ ★★★ 総合評価 ★★☆ |
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●オーディオ用スピーカーベースに乗せる 最後はスピーカーベースの定番、TAOC SPB-300DLを使用。 ハイファイ堂店頭でのスピーカー展示は、このTAOCのスピーカーベースシリーズを使用する事が多いです。SPB-300DLは奥行き約30cm/高さは約14cmとわりと小型のスピーカーベースです。NS-1000Mはエンクロージャー部分の奥行きが約29.5cmなのでピッタリのサイズでした。 |
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ここに来てようやく本格的な高音質に近づいてきました。鳴きの少ない頑丈な金属質、安定感のある重量、グラつきの無い2面支持で、スピーカーをしっかりと支えてくれます。 輪郭の明瞭な中高域から描かれるピアノの生々しさ…、これこそNS-1000Mの独壇場です。低域の歯切れの良さも◎。まるでアンプの制動力が上がったかのようです。 NS-1000Mよりもうひと回り大きなスピーカーを乗せた時に、ちょうど耳の高さくらいに高域ユニットが来るのでしょう。NS-1000Mではちょっと背が低いかもしれませんね。本来はもうちょっと大型のスピーカーを乗せるものかと思います。今回の組み合わせではトゥイーターの高さが床から約75cmと、耳の高さに足りないのが惜しいです。 もう少し高さを上げて耳の高さに近づけると、キレの良さと、音離れの良さがより際立ってくるかと思います。 高域の繊細さ ★★★★ 中域の密度感 ★★★☆ 低域の豊かさ ★★★☆ 総合評価 ★★★★ |
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当然といえばその通りですが、やはりオーディオ用に設計されたスピーカーベースでの設置が一番の好結果となりました。TAOCのスピーカーベースは高価ながらも入荷するとすぐに注文が殺到する人気ぶりですが、なるほど納得の音質改善効果。部屋に合わせてセッティングを微調整すれば、もっと良くなるだろう手応えも感じました。 高価なものにはやはりそれなりの価値がある…。分かってはいますが、何だか負けた気分もするのが正直なところ。「あまりお金を掛けずに」というのは誰もが思う願い。部屋の環境によっては他のセッティング方法のほうが良い場合も、もしかしたらあるかもしれません。私も昔、敢えて床直置きで鳴らしこんでいた時期がありました。 今回ご紹介したような設置方法だけでも随分と音に違いが出る事が分かりましたが、基本的には「しっかりした場所」に、「グラつき無く」置き、「耳の高さに合わせる」というのが基本です。 他にもブロックに乗せる、角度をつける、インシュレーターを使用する等、多種多様なセッティング術がありますが、それはまた次の機会にご紹介したいと思います。 |
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スピーカーはオーディオ部屋の主役と捉えてもいい位の存在感があるジャンルかと思います。その場所に常設するかどうかは置いといて、一度だけでもベストのセッティングを探ってみてはいかがでしょうか。スピーカーのポテンシャルを知るためにも大事な事ですし、何より、オーディオと戯れる時間をたっぷりと過ごす事によって、あなたとオーディオ達との信頼関係も深まる筈。 時間をかけて工夫をこらせば、どんどん良い音が出てきますよ! それでは、今回はこの辺で失礼致します。みなさまのご来店を心よりお待ちしております。 ハイファイ堂大丸東京店 北村 ハイファイ堂大丸東京店 〒100-6701 東京都千代田区丸の内1-9-1 大丸東京店10階 TEL 03-6256-0516(直通) 03-3212-8011(代表) |