「ジャズ・トランペット」 若手トランぺッター 今週のおすすめはCD2枚です。ご応募いただいた皆様から抽選で各1枚ずつプレゼントします。お名前、送り先、ご希望のCD(「サラ・スマイル」か「アドロ」)を明記の上、下記メールアドレスまでご応募ください。 mailto:merumaga@hifido.co.jp 締め切り日時は11/30(木)21:00です。当選者の発表は賞品の発送をもって替えさせていただきます。 |
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コンのおすすめCD その1 市原ひかり 「サラ・スマイル」 市原ひかり(tp,flh)、ドミニク・ファリナッチ(tp)、グラント・スチュワート(ts)、アダム・バーンバウム(p)、ピーター・ワシントン(b)、ルイス・ナッシュ(ds) 2006年6月NYで録音 (SACD/ハイブリッド盤) ポニーキャニオンPCCY-60003 曲目 (1) クレオパトラズ・ドリーム (2) フラジャイル (3) ブルー・プレリュード (4) イット・グッド・ハプン・トゥ・ユー (5) アイブ・ゴット・イット (6) サラ・スマイル (7) ゴールデン・イヤリングス (8) イントロ (9) クロース・トゥ・ユー |
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こんなに若くて素晴らしい日本人ジャズ・ミュージシャンが出現することは、ただただ嬉しい限りである。昨年の8月のデビュー作「一番の幸せ」でデビューした、市原ひかりのストレートアヘッドなセカンドアルバムだ。この時も女性のトランペットとフリューゲル・ホーンというのは珍しかったので、注目をし感心を持っていた。1作目の「一番の幸せ」ではフュージョン色の濃いものだったが、それは市原ひかりの若さと感性を強調したいという、製作者の意図的な戦略思惑も感じ取れるクオリティの高い作品だ。今回のニューアルバムを聴いた瞬間おもわず耳を疑った。「これがまだ初々しさが残る若き女性ジャズ・トランペッターの奏でる音色か」と感じ取ったのである。若さゆえ一年経てば遥かに進化している。これはまさに新星と呼ぶにふさわしい、ジャズのアコースティックな感じを抱かされる作品に仕上がっている。 細かく言うとまだ少しぎこちなさは残るが、それがまた逆に新鮮な感じを与えるし、等身大で現在の彼女を見出すことができるのだ。自分が表現したいストレートな女性らしい音色を、その音楽に合わせ、スタンダード的な曲を4ビートに乗せて歌わせていくスタイルには癒されるようだ。しかもトランペットとフリューゲル・ホーンは実にシンプルに聴かせているところが憎いではないか。スタンダードな曲の(1)「クレオパトラの夢」はパド・パウエルの有名な曲だが、テナー・サックスのグラント・スチュワートとの共演でも、市原ひかりは慌てることなく、スローテンポながら落ちついて渡り合っているのが見事だ。(3)「ブルー・プレリュード」では、市原ひかりがやさしく奏でるトランペットに合わせるかのように、ドミニク・ファリナッチのミュート技巧での音色が、これもたまらなくいいのだ。その存在感を強くアピールしていくのである。また(5)「アイブ・ゴット・イット」のようなシンプルな曲を、躍動感溢れるファンキーなリズムに乗せて、速めのテンポで軽快に聴かせている。こうして最後のポップスの(9)「クロース・トゥ・ユー」まで、トランペットだけでなく、フリューゲル・ホーンを用い、感情豊かに奏でていくところを聴かされると、とても23歳とは思えない素晴らしい演奏だ。 それにしても彼女を支えるバック・メンバーでのミュージシャンの顔ぶれも凄いものだ。ルイス・ナッシュ(ds)、アダム・バーンバウム(p)、ピーター・ワシントン(b)、ドミニク・ファリナッチ(tp)、グラント・スチュワート(ts)と豪華絢爛で堂々としたメンバーが揃った。市原ひかりは「これだけの豪華メンバーとこんなに早く共演できるとは夢見たいです」と語っているとおり、このことが彼女にどれだけ勇気と度胸と感動を与えたことか。これを見れば市原ひかりも自然と勇気が湧き、若いが、挑戦力も増してこようというものだ。今後も「自分の音色でパワフルに統一感を出していきたい」と語っている。頼もしいし、これからどんな素晴らしい曲を聴かせてくれるか、楽しみでもあり期待もかかる。もっともっと勉強していって欲しいし、「市原ひかりジャズ」の旅はこれから始まるのだ。 サウンドはSACD(ハイブリッド)盤なので、トランペットのよく伸びた繊細で美しい音質を存分味わってもらいたい。 |
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コンのおすすめCD その2 ドミニク・ファリナッチ 「アドロ」 ドミニク・ファリナッチ(tp)、ミルトン・フレッチャー(p)、ヤスシ・ナカムラ(b)、カーメン・イントレjr,(ds) 2006年3月NYで録音 M&Iカンパニー MYCJ-30388 2006/7/19発売 曲目 (1) アドロ (2) サマータイム (3) アディオス・ノニーノ (4) ボディ&ソウル (5) アン・カンシオン・パラ・マチルデ(マチルに捧げる唄) (6) ラブ・ダンス (7) ジャニュアリー (8) コンテンプレーション (9) 夜は恋人(メア・キュルバー) (10) アイ・ウィッシュ・ユー・ラブ |
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またしても若きトランペット・マスター、ドミニク・ファリナッチの素晴らしい演奏を聴くことができた。これで早くも5作目となるニューアルバムだ。一作ごとに上手と熟成さが加わり、最近この若さで何か風格さえ備わってきたようだ。それも堂々とした響きを聴かせてくれている。ファリナッチはなにしろその美しい響きが魅力なのだ。(1)「アドロ」でいきなりミュートの響きもなだらかに、スイング感いっぱいに奏なでていく。ファリナッチはどちらかと言うと、ストレートで抜けのよいトランペットの響きが似合うと思っていたが、なかなかどうして、ここでも心憎いばかりの、鮮やかなミュート技巧を披露してくれているのが絶妙で見事なものだと感じた。(2)「サマータイム」でも軽快にのびのびと歌っていて、低い音も美しい。(3)「アディオス・ノニーノ」のタンゴメロディにおいても、美しいトーンの響きには艶があり、シャープな音の輝きと、力強さが加わり表現も素晴らしいと感じた。また(4)「ボディ&ソウル」では一転してボサノバのリズムに乗せて奏でていく、トランペットの色彩感豊かな歌心と表現には思わず「うまいなぁ・・!」の一言が出るほど、その品格の高いプレイに脱帽だ。ファリナッチが持ち合わせている今にない、温かな素晴らしいリズムのアレンジとプレイがダントツに光っていることに感激した。 ピアノは前回の「スマイル」MYCJ-30330のダン・カウフマンからミルトン・フレッチャーに代わっているが、ベース、ドラムスは代わりがなく、個々のプレイで一体感を醸し出しいいフォローでの、いい音を聴かせてくれているのが素晴らしい。最後の曲(10)「アイ・ウィッシュ・ユー・ラブ」においては美しい音色と端正なフレージングでリズムを刻んでいくが、ファリナッチ特有のふくよかなトーンは、ここでまさに最高潮に盛り上がっていくのである。 サウンドについては、ベース、ドラムスにもう少し張り出し感の欲しいところだが、ここはあまり出しゃばらず、ファリナッチの美しい響きを味合い、盛り上げるには丁度いい音域かも知れない。ジャズ・トランペットがより好きになってくるから不思議である。今後ますます期待が膨らむ若きトランペッターだ。 |