「星影のステラ」 コンの試聴 今週のおすすめはCD2枚です。ご応募いただいた皆様から抽選で各1枚ずつプレゼントします。お名前、送り先、ご希望のCD(「星影のステラ」か「マンハッタンの幻想」)を明記の上、下記メールアドレスまでご応募ください。 mailto:merumaga@hifido.co.jp 締め切り日時は3/1(木)21:00です。当選者の発表は賞品の発送をもって替えさせていただきます。 |
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コンのおすすめCD その1 ザ・グレート・ジャズ・トリオ 「星影のステラ」 ハンク・ジョーンズ(p)、ジョン・パティトゥッチ(b)、オマー・ハキム(ds) 2006年9月東京で録音(SACD/ハイブリッド盤)ヴィレッジミュージック VRCL-18835 2006/11/22 発売 曲名 (1)スイート・ジョージア・ブラウン (2)星影のステラ (3)オールド・フォークス (4)ソング・フォー・マイ・ファーザー (5)インア・メロウ・トーン (6)アイム・オールド・ファッションド (7)四月の思い出 (8)ディープ・イン・ア・ドリーム (9)スクラップ・フロム・ジ・アップル (10)トラベリン・ライト |
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これを聴くと何といっても頼もしい限りで元気づけられるようだ。ハンク・ジョーンズの「ザ・グレート・ジャズ・トリオ」が放つニューアルバムの登場である。ザ・グレート・ジャズ・トリオのリーダーであるハンク・ジョーンズは、現在88歳の現役最高齢ということだが、そのピアノはいまだ衰えを見せるどころか、ますますダイナミックに奏でる音は若々しく新鮮に聴こえるのだ。 ハンク・ジョーンズは「東京JAZZ2006」にも出演し、相変わらずエネルギッシュで見事なまでの透明感溢れるピアノ演奏を披露してくれた。この新作は2006年9月に東京で録音した新生グレート・ジャズ・トリオのニューバージョンでもある。また今回あの渡辺貞夫がゲスト出演して(2)(3)(6)(8)の4曲を熱演してくれているのも嬉しいではないか。そのことでハンクもかなり気合が入っており、一音が発せられた瞬間からハンクの美しいピアノに聴き入り、このような時間が何時までも続いていて欲しいと、願わずにはおれないくらい魅了されっぱなしであった。それは(1)「 スイート・ジョージア・ブラウン」及び(5)「インア・メロウ・トーン」(7)「四月の思い出」など聴けば、洗練され選び抜かれた独自の音で綴っていく姿を思い浮かべると、年齢からくる衰えなど微塵も見せないのだ。奏でるピアノには聴いていてもかなり余裕を持って、美しくダイナミックに紡いでいく見事な演奏に聞き惚れるのである。 ハンクはただ元気だけでない。一音一音が美しい時を刻み、ピアノ・プレイそのものに美しいタッチと、真珠のようにメロウな輝きを放っていくのだ。一方ベースのジョン・パティトゥッチもハンクに刺激されたのか、そのピアノ・プレイに寄り添うように、ダイナミックで力強く躍動感あふれるベースラインを演じている。ドラムスのオマー・ハキムはその繊細で透明感のあるシンバル捌きも魅力だが、(4)「ソング・フォー・マイ・ファーザー」で珍しくボーカルでも、その素晴らしい喉を披露してくれている。このような特別企画が実に楽しいではないか。 サウンドもこれまたSACDならではの効果もあり、音像のフォーカスが鮮明で奥行間もあり、楽器と楽器の空間やその距離が身近に感じられ、SN感の突起した繊細でダイナミックな再現性を発揮している。 |
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コンのおすすめCD その2 リッチ・バイラーク・トリオ 「マンハッタンの幻想」 リッチ・バイラーク(p)、ジョージ・ムラーツ(b)、ビリー・ハート(ds) 2006年3月NYで録音 ヴィーナスレコード TKCV-35380 2006/10/25 発売 曲目 (1)あなたは恋を知らない (2)オン・グリーン・ドルフィン・ストリート (3)イフ・アイ・ワー・ベル (4)マンハッタンの幻想 (5)ショパン・エチュード (6)トランジション (7)星影のステラ (8)ベイルス (9)ブラッド・カウント (10)フットプリンツ |
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優雅な響きと切々と哀愁を込めて奏でる、リッチ・バイラーク「哀歌/No Borders」TKCV-35305からもう4年になろうか。リッチ・バイラークファンが待ちに待ったニューアルバムの登場だ。リッチ・バイラークの特徴ある、耽美的で輝くような美しい響きと鋭いタッチにダイナミック感を加え、刺激的ですらあるのだ。「恋とは何でしょう」TKCV-35084、「ロマンティック・ラプソディ」TKCV-35091、「哀歌」TKCV-35305などのアルバムでピアノの煌びやかな音色は、ジョージ・ムラーツ(b)、ビリー・ハート(ds)を配して、オーディオ的にも大変優れており、リファレンス・ソースにしたいくらいの優秀な録音であった。聞くところによるとリッチ・バイラークは70年代西ドイツのレコード会社ECMとの契約が長かったということだが、その時も次々にユニークなアルバムを発表していったという。 今回のニューアルバムはヴィーナスが90年代後半からリッチ・バイラークの作品を、世のジャズファンに送りだして以後、同一メンバーでのピアノ・トリオ作だ。どちらかというと、リッチ・バイラークのアルバムはクラシック曲が多いが、それもそうだ現在はドイツの音楽大学で教鞭をとり、教育分野に進路変更したということ だ。「道理でこの4年間ニューアルバムが出なかった訳だ!」 (1)「あなたは恋を知らない」を聴いたとたん、それはリッチ・バイラーク独自のゆったりとした、メロデックなピアノの究極な美しさで、早くも立証された。爽快なリズム・テンポで優雅に、美しいタッチを存分に生かしたリリシズムだ。(3)「イフ・アイ・ワー・ベル」ではよくスイングしながら、美しい旋律とリズムでぐいぐいと強烈に引っ張っていくのだ。(7)「星影のステラ」でもスローテンポにもかかわらず、聴き手をグイグイ引っ張り込み、情感溢れる心地よい躍動感を呼び起こすようである。 今回のアルバムもリッチ・バイラークが今までやってきた中での、総仕上げをしたいということだ。彼が目指してきたジャズとクラシックを即興演奏で融合させる「リッチ・バイラーク音楽哲学」というあの美しいピアノの響きは、ビル・エバンス、スティーブ・キューンと同様クリスタルな輝きをもって奏でられていく。ジャズのどろどろした熱さは感じられない。しかし熱狂はある。それもロマンティックで斬新なセンスを伴う熱狂である。ベテランにしてなお新境地を開いていく意欲溢れるアルバムだ。 サウンドはさすが最新録音で、溢れんばかりのエネルギー感と、量感と切れ込みのよさを兼ね備えたジョージ・ムラーツのベースの低域感は、エッジを立ててリズミカルに弾んでいく。明るく繊細な音を織りなすピアノと、鮮やかさが増すビリー・ハートのシンバルは伸びやかで、量感に満ちた音像はみごとなもので透明感もあり、三人の呼吸もピッタリとあっていて、その迫力ある音質を、ここはダイナミックかつ実物大の音量で聴きたい。オーディオ的にもおすすめの一枚だ。 |