「ピアノトリオ」2008年4月25日 おすすめCDは下記の店舗で試聴できます。 コンのおすすめCD その1 ヤン・ラングレン「プレイズ・コール・ポーター・ラブ・ソングス」 秋葉原店 コンのおすすめCD その2 テッド・ローゼンタール「マイ・ファニー・バレンタイン〜トリビュート・トゥ・ヘレン・メリル〜」 大須本店 |
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「コンのおすすめCD その1」 ヤン・ラングレン 「プレイズ・コール・ポーター・ラブソングス」 ヤン・ラングレン(p)、イェスパー・ルンゴ(b)、アレックス・リール(ds) 2006年2月デンマーク・コペンハーゲンで録音 マシュマロレコード MMEX-111 2007/3/21 発売 曲名 1) アイ・ラブ・パリス 2) ホエン・ラブ・カムズ・アラウンド 3) ユード・ピー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ 4) ソー・イン・ラブ 5) アット・ロング・ラスト・ラブ 6) ホワット・イズ・ディス・シング・コールド・ラブ 7) エブリタイム・ウイ・セイ・グッドバイ 8) ラブ・フォー・セール 9) イージ・トゥ・ラブ 10)トゥルー・ラブ 11)アイ・ラブ・ユー |
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抜群のメロディセンスを備え、香りの高い北欧ジャズを自然なテンションで優しく楽しめるヤン・ラングレンの新しいアルバムが発売された。日本マシュマロレコードからヤン・ラングレン久しぶりの登場である。北欧を代表するピアノ・トリオにはヨーロピアン・ジャズ・トリオの存在はあるが、ヨーロッパ・ピアノ・ジャズ・シーンの「貴公子」とまでうたわれ、完成されたピアニズムと美しいタッチで圧倒的な評価をうけるのがヤン・ラングレンだ。以前発売され、手元にある「コンクルージョン/ヤン・ラングレン」MTCJ-5005のCDジャケ(写真)を見ても、なかなかの美男子で若い頃のアラン・ドロンに似たところがある。 今回のタイトルからも分かるように、コール・ポーターの曲を演奏している。ラングレン独特のしなやかなピアノによるアドリブラインの美しい響きは、まさに比類なきものであると感じずにはいられない。まず1)「アイ・ラブ・パリス」を聴いたが、気分爽やかに歌心溢れるラングレンの魅力が感応できるものだ。続く2)「ホエン・ラブ・カムズ・アラウンド」においても、ある時は力強く、またある時はしなやかに紡いでいくピアノの心地よい響きは、ラングレンの解釈力の素晴らしさが出ているようである。ここでも彼のタッチの清澄さが光るし、趣味の良い選曲と酒脱なジャズ・センスの品の高さが伺えるというものだ。8)「ラブ・フォー・セール」でもラングレンのピアノは実に伸びやかで、気持ちよく弾いていることが分かる。ナチュラルなスタンスは彼ならではの個性を生み出している。存在が一段と際立っているように聴こえるのだ。 これまでラングレンをずっと支えてきた、ベースのイェスパー・ルンゴ、ドラムスのアレックス・リールの存在も忘れてはならないであろう。太く厚いベースラインは深くよく沈み、シンバルの繊細な響きともども、コール・ポーターの曲にがっちりとしたテーマ処理を施し、ひとまわり大きなプレイを聴かせてくれているのも嬉しい限りだ。何といってもラングレンのトリオは、常にジャズファンの心を捉えて離さない、実力派ミュージシャンである。 サウンドは欲をいうと音圧がもう少し高いと申し分ない。それにしてもリアルなピアノはすっかり聴き惚れるくらい音色が量感豊かである。低域の効いた重量感のあるベースも格別で、切れのよいタイトなドラムスにもやみつきになりそうだ。オーディオ的にも評価できよう。 |
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「コンのおすすめCD その2」 テッド・ロゼンタール 「マイ・ファニー・バレンタイン〜トリビュート・トゥ・ヘレン・メリル〜」 テッド・ローゼンタール(p)、ジョージ・ムラーツ(b)、アル・フォスター(ds) 2007年6月NYで録音 ヴィーナスレコード TKCV-35416 2008/1/16 発売 曲名 1) ユード・ビ・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ 2) マイ・ファニー・バレンタイン 3) アローン・トゥゲザー 4) ラバー・マン 5) 朝日のようにさわやかに 6) ドント・エクスプレイン 7) 枯葉 8) アイ・フォール・イン・ラブ・トゥ・イージリー 9) サマータイム 10)恋に恋して 11)ス・ワンダフル |
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2006年6月に発売されたテッド・ロゼンタールのスインギーなリーダー作、組曲「王様と私」は、多くのジャズ・ピアノ・ファンを魅了した。「王様と私」でもそうだったが、ローゼンタールのピアノの生き生きした躍動感は、オーディオ的にも抜群で注目し期待もしていた。待望の第2弾はヘレン・メリルに捧げたトリビュー作である。それは近年ヘレン・メリルの伴奏も務めたローゼンタールが取り上げるのは自然である。深い尊敬の意味も込められており、数多いトリビュー作とは違う力作だと今回のアルバムを聴いて感じた。今回の「マイ・ファニー・バレンタイン」を取り上げるにあたって、これらの楽曲をよく知り尽くしたベースにはジョージ・ムラーツ、ドラムスは前作ではルイス・ナッシュだったが、今回はドラムスにアル・フォスターを起用している。 1)「ユード・ビ・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」から聴いてみた。この曲は云うまでもなくヘレン・メリルの名前を知らしめた大ヒット・ナンバーでもある。出だしからゆったりしたリズムと、ローゼンタールがその思いを綴っていくところが見事に表現されている。続く2)マイ・ファニー・バレンタイン」、3)「アローン・トゥゲザー」においても、原曲を丁寧に扱い演奏していく。メリルをオーバーラップさせているかのようなコンビネーションのテンポが実に聴きやすく癒される。バラード曲6)「ドント・エクスプレイン」では、ローゼンタールのピアノが情熱を帯びたスタイルで力強くまた繊細に奏でていく。10)「恋に恋して」も熱をおびたジョージ・ムラーツのベースが力強くどんどん唸りを上げ、ベース・ソロの魅力を存分に魅せてくれている。ベースファンにはたまらない一曲だ。全体を通して軽やかで優雅な演奏は、ミディアム・テンポのスイング感が小気味よく響き、心地よさは格別だ。 サウンドはピアノが左からセンターへドラムスも右からセンターへと、中央から少し振り分けられ、好バランスだ。ベースは中央に定位し、グゥーンと低く腰を落とした低域が全身に染みわたる。ドラムスは音像の鮮やかな切れ味が際立ち、楽器一つ一つのトータルバランスと身体を包み込む心地よいサウンドで非常に安定している。自慢のハイパー・マグナム・サウンドらしい高い音圧レベルには満足感が宿る。 |