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蒸し暑い6月の京都では、アジサイがいっそう涼やかに感じられます。
京都商品部の朴 高史です。
ある日のお昼休みに、スマホを眺めてますと気になる記事が有りました。
「ジャズ喫茶という日本にしかない文化に今、新しい流れが」と言うタイトルで、内容は、シュート・アローさんの「昭和・東京・ジャズ喫茶」と言う本の紹介と、
「なんだかすごく居心地が良くて、飲み物や食べ物が美味しい」がLPレコードでこだわりのジャズも聴かせる女性好みのジャズカフェのお話で、本のPRが目的の記事でしたが、
私は「ジャズ喫茶という日本にしかない文化」と言う所に引っかかり、いろいろと調べるのですが、出不精な私は、京都にわずかに残るジャズ喫茶の有名店に行く訳でも無く、
京都店の近くにあるジャズカフェにも行かず、本を読んでみました。
まずはこちら、
「昭和ジャズ喫茶伝説」
平岡正明著
2005年
平凡社
「ジャズ宣言」、「山口百恵は菩薩である」などの著者による、
混沌と混乱の1960年代東京、横浜のジャズ喫茶の紫煙の中で巻き起こる、
ジャズと闘争のお話です。
いきなりの、「ジャズはジャズ喫茶で聴くもの」との断言で始まり、各地の有名ジャズ喫茶でのジャズや人との出会い、ブント活動のヤバい事、などアツい話がアツい文章で続きます。
登場するジャズ喫茶のオーディオセットが驚く程の細かさで描かれており、説明も的確かつ正確です。平岡氏がかなりのオーディオマニアだと伺える所が意外でした。
(佐久間アンプの佐久間駿氏がローサーのユニットを好み、池田圭氏がフィリップスのユニットAD9710M/01 とテクニクス1,Victor SX3、グレースG180Sの4点しか広告文を書かなかった事など勉強に成りました。)
足立正生氏の話や、「佐武と市捕物控」の話、赤瀬川原平氏の贋千円札の件、など当時を象徴する人や事が入り交じり、ジャズエイジの如き時代が生々しく描かれておりました。
松下 テクニクス1 Victor SX3
次がこちら、
「渋谷百軒店 ブラック・ホーク伝説」
2007年 (CDジャーナルムック)
音楽出版社
「昭和ジャズ喫茶伝説」にも登場する新宿DIGの支店として1964、5年頃渋谷、円山町の百軒店にオープンしたのがDIGの渋谷店。
ですがある日、店に泥棒が入り、一枚だけを残しレコードがすべて盗まれてしまいます。残ったレコードがケニー・ドーハムの「マタドール」。(犯人は捕まりレコードはすべて戻ります。)
オーナーの中平穂積氏は、残った一枚のレコード「マタドール」が、泥棒からのメッセージ「また盗る」と不吉に思ったのか、店を他人に譲ります。(中平氏はその後、新宿DUGをオープンさせます。)
新たなオーナーの水上義憲氏が、店員とレコードも引き継ぎオープンさせたのが伝説のロック喫茶「ブラック・ホーク」です。(オープン当初はジャズ喫茶として営業されます。)
本は、オーナー水上氏のインタビュー(ロックへの移行はオーナーの指示に依るものだった様です。)、関係者、常連客へのインタビュー、松平維秋氏のエッセイ、
お店の機関誌「スモール・タウン・トーク」1977年12月に掲載された「ブラック・ホークの選んだ99枚のレコード」の再現と成っております。
ブラック・ホークを伝説足らしめたレコード係の松平維秋氏の考えや選曲、(ルーツ系ロック、西海岸系SSWからスワンプロック、トラッドロックからブリティッシュトラッドへと時代に捕われず独自の選曲をされてた様です)
新宿DIG譲りの厳格な店のスタイル(私語厳禁との事です。)とその当時、他では味わえない空間だった様です。
常連客には後に「はちみつぱい」(ムーンライダーズ)のメンバー(鈴木氏、かしぶち氏、渡辺氏など)や武蔵野タンポポ団の若林 純夫氏などがおられ、強く影響されたとの事です。
99枚の幻のレコードは、現在、再発盤やCDならばがんばって探せば見つかります。(オリジナル盤は難しいかも)
はちみつぱい センチメンタル通り 武蔵野タンポポ団 武蔵野タンポポ団の伝説
最後がこちら、
「東京ジャズメモリー」
シュート・アロー著
2012年 文芸社
某楽器メーカー(ヤマハの様です。)勤務のサラリーマンによる、実体験に基づくエッセイ。
高校時代のジャズ喫茶巡り、(村上春樹氏が作家デビュー前に開業されてたジャズ喫茶「Peter-cat」で村上氏本人にリクエストされたそうです)
大学時代の六本木でのジャズバーでのバイトの体験、就職後のジャズミュージシャンとのエピソードの構成で進みます。
作者は私と同年代で時代の雰囲気がリアルに伝わります。バブル時代の六本木の雰囲気や、有名ジャズミュージシャンがどんどん来日したり、そんな感じだったと思い出されます。
しかし私は、ジャズ喫茶の存在すらあまり知らなかったので、作者はやはり特殊な状況に有ったと思われます。
60年代はジャズ、70年代のロックと時代の中心は時々に変わり、私の時代では音楽は聴くだけの物ではなくなり、ジャズ喫茶、ロック喫茶の役割は輸入レコード店やクラブDJに取って代わったのかと思われます。
現在のネット社会となると、ネット配信やYouTubeと情報はいとも簡単に手に入る様になりましたが、その時代の空気は、それぞれの思いの中にしか存在しないものでもあり、昨今の昭和レトロや、レコードへの関心は、少しでもそんな空気を感じられるからかもしれません。
ハイファイ堂では、思い出のジャズ喫茶の音の再現なども、お手伝い出来るかと思います。お気軽にスタッフにご相談ください。
一度、あのジャズ喫茶に行ってみようと思う朴高史でした。
では、失礼します。
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