こんにちは、京都商品部の朴 高史です。 京都商品部での作業は、主にスピーカーのメンテナンスなのですが、様々な作業の中で、最も時間を取られるのが、エンクロージャーの外観のメンテナンスでして、 つまり、ほとんどの時間、木製エンクロージャーを撫でたり擦ったりしています。 そこで、今回は木のお話です。 |
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スピーカーエンクロージャーには、様々な種類の木が使われてます、代表的なのが、世界三大銘木と呼ばれるチーク、ウォールナット、マホガニー。 まずはチークから |
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チーク(teak)は、シソ科チーク属の落葉性高木の総称。アジアの熱帯モンスーン気候地方に分布する。 材質は堅く、伸縮率が小さく、水に強いので、船舶・家具などの用材や建築材として広く使用される。 「チーク」という名前はインド南部ケーララ州の言葉マラヤーラム語の「thekku」に由来する。「チークノキ」とも。(ウィキペディアより) 画像は木材博物館より http://www.wood-museum.net |
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19世紀後半、タイ、ビルマ(現ミャンマー)から、英国の植民地企業より船の甲板用や家具材料として、多くヨーロッパに広まった木材です。 加工性の高さや、シロアリ等の害虫にも強く、軽量でもあり、上質のものは、ビルマ固有種のビルマチーク(ミャンマーチーク)やタイ産のゴールデンチークとされる。 仕上がりも美しく、高級家具などにも使われ、珍重されていました。 現在、天然のチーク材が唯一生産されているミャンマー(旧ビルマ)でも、違法伐採などにより森林面積が急激に減少しており、伐採量が30%未満に制限され稀少性が高まっております。 |
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チーク材が使われたスピーカーは、実はあまりないのですが、商品部での扱いの多いTANNOY の6,70年代を代表するモデル「Autograph」「G.R.F.」や 「3LZ」「Rectangular York」など定期的にありますので、馴染みがあります。 メンテ上感じますのが、Monitor GOLD期までのエンクロージャーは、芯材にフィンランドバーチ合板で、チーク材の上貼りも上質のものが使われております。(杢目の照りが違います。) |
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次はウォールナット |
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クルミ(胡桃、山胡桃、英: Walnut、Black walnut、学名:Juglans)は、クルミ科クルミ属の落葉高木の総称。また、その核果の種子(仁)を加工したナッツ。仏語ではノア (noix) 。木材としてはウォールナット。 北アメリカやカナダで産出されており、チークやマホガニーと共に世界三大銘木の一つに数えられる。 1660年から1720年にかけ、ヨーロッパ市場ではイギリスデザインやウォールナット種の製品が大きな人気を博し、ヨーロッパ家具の歴史では「ウォールナットの時代」と呼ばれるほど持て囃された。 木質は重硬で衝撃に強く、強度と粘りがあり、狂いが少なく加工性や着色性も良いという特性を持つ。落ち着いた色合いと重厚な木目から、高級家具材や工芸材に用いられてきた。 アメリカ合衆国大統領の指揮台やアメリカ合衆国最高裁判所のベンチに使用されるほか、耐衝撃性の強さを生かしてライフルの銃床にも使用される。 また、チップは薫製づくりの際のスモークチップとしても用いられる。(ウィキペディアより) 画像は木材博物館より http://www.wood-museum.net |
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近世ヨーロッパ家具(ロココスタイル)に見られる、装飾性の高い寄木貼り加工などにに使われた、ヨーロピアン・ウォールナットが、三大銘木とされる説があります。(近年は、ほとんど流通されてません。) |
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近世ヨーロッパ家具の技法、(バール・ウォールナットのクォータリングの天板に、寄木貼り加工) TANNOY RHR Special ltd. ヨーロピアン・ウォールナットではないです。 |
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最近、ウォールナットと呼ばれるのは、アメリカ、カナダ産のアメリカン・ウォールナット(ブラック・ウォールナット)です。 アメリカン・ウォールナットからイメージされるのは、ヨーロッパ(ロココスタイル)の装飾性の高いものよりは、ジョージ・ナカシマの木工作品の様な野趣溢れる素朴な雰囲気かと思います。 |
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ジョージ・ナカシマ コノイドベンチ 画像は 六家道具商店webより https://www.roccashop.jp/exhibits/view/10915 |
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ウォールナットが使われたスピーカーと言いますとやはり、こちら JBL D-44000 PARAGON |
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やはり、初期のものは、厳選された材料で、突き板の木取りも贅沢にされてると感じます。 発表当時のフラッグシップモデルである「PARAGON」。 現代彫刻の様なスタイルに、アメリカン・ウォールナットの荒々しい板目を使い、キハダの風合いを残すオイルフィニッシュで仕上げられた、その存在感は他に類を見ないものです。 以降のモデルの、ウォールナットのオイル仕上げは、この「PARAGON」に倣ったトップダウン戦略と思われます(自論です)。 |
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そして、マホガニーです。 |
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マホガニー (英:Mahogany、日本語表記:桃花心木) とはセンダン科マホガニー属 (Swietenia) に属する植物に冠される総称。 木材としては導管が大きく柔らかいため加工しやすく、繊維方向に現れるリボン杢と呼ばれる立体的な見た目から高級家具や高級楽器などに使用される木材として知られる。 近年、マフィアやギャングが私有地や国立公園に自生する樹木を違法に伐採し資金源にしていることから、 一部ではワシントン条約の附属書IIに登録され、板材や原木を輸出入するには盗難品ではないという生産者の証明書類が必要である。(ウィキペディアより) 画像は木材博物館より http://www.wood-museum.net |
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三大銘木とされるマホガニーは、18世紀、ジョージアン王朝時代のチッペンデール様式や、ヘッペルホワイト様式の家具に好んで使われた密度が高く、独自の赤みの強い色合いのキューバン・マホガニーを指すとされてます。 しかし、この時代に過剰伐採されほぼ絶滅してしまい、幻のマホガニーとされてます。その後は、中米産のホンジュラス・マホガニーが流通するのですが、こちらも現在では、ワシントン条約により取引が制限されています。 最近は、赤っぽいマホガニー風の〇〇マホガニーという木材が色々あります。 |
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マホガニーのスピーカといえば、エレクトロボイス社の50年代を代表するその名も Georgian ?です。 |
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ジョージ4世は、ワーテルローの戦いで、ナポレオンの軍に勝利した時の王様です。美術、建築を愛し、文学にも造詣が深い奔放な浪費家だった様です。 |
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最後は、スピーカーエンクロージャーでは、音響的に優れてるとされ、50-60年代のアメリカのヴィンテージに使われているのが、米松合板です。 |
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ベイマツ(米松、学名:Pseudotsuga menziesii)は、マツ科トガサワラ属の常緑針葉樹。 和名は「アメリカ産のマツ」の意味だが、マツ属の仲間ではなくトガサワラに近縁である。 別名はアメリカトガサワラ(アメリカ栂椹)、ダグラスファー(ダグラスモミ、Douglas fir)、オレゴンパイン (Oregon pine) 。なお、ファーはモミ、パインはマツの意味である。(ウィキペディアより) 画像は木材博物館より http://www.wood-museum.net |
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ALTEC A7,A5の古いものや、JBL HARTSFIELDや、Georgian ?の背面にも見られます。 |
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ダグラスファーと聞いて、思い出されるのが、ドラマ「ツイン・ピークス」です。(私だけかもしれません。) デビッド・リンチによる、ソープオペラ風サスペンスドラマ。 ダグラスファーの森、炎、梟、FBI捜査官、小人、巨人、チベット仏教、フリー・メイソンの様な秘密結社、チェリーパイ、ヘンリー・デイヴィッド・ソローの超越主義などなどが、アメリカのソープオペラの形式で繰り広げられます。 様々な登場人物の中、最も印象的で、重要かと思われるのが、「丸太おばさん」(The Log Lady)です。 |
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森と人々との仲介人とも思われる役割で、抱いている丸太からのメッセージをクーパー捜査官などに伝え、物語は進んだり、進まなかったりします。 丸太おばさんの抱く丸太は、やはりダグラスファーの丸太のはずです。(ポンデローサマツと書かれたものもありますが、それはパイロット版の設定に引っ張られてると私は思います。) 画像はGIZMODOより http://www.gizmodo.jp/2016/07/11-facts-of-twin-peaks.html |
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ドラマ終了から25年目の今年、新シリーズが始まる様です。(脚本マーク・フロスト監督デビッド・リンチで撮影は30話全て終了しているそうです) このことはあらかじめ予言されてたみたいです。 |
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Laura Palmer I'll See You In 25 Years YouTubeより |
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今日もまた、木製エンクロージャーを撫でたり擦ったりしています。 では、失礼します。 |