いつもお世話になっております。 ハイファイ堂 京都商品部の滝本です。 |
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すでにこのハイファイ堂メールマガジンなどにおいても 何度か告知させて頂いていたのですが、 雑誌「モノ・マガジン」の2017年7月2日特集号(6月16日発売)において 弊社の、YAMAHA NS-1000M のレストアへの取り組みを記事として 取り上げて頂きました。 モノ・マガジンと言えば、私自身もまだネットや情報媒体も十分でない 20数年前という時代に、新製品の情報などを得る為にとても重宝させて 頂いていた事を思い出します。 あれから時も経ち、昔の私がそうした様に 今回のモノ・マガジンの記事を読んでレストアされた1000Mの 情報を得て興味を持って下さる方がいるのかなと思うと 色々と感じ入る所がございます。 |
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ともあれ、そんな方々の興味に応える為にも私ども京都商品部においては 各店で品切れ、不足などが出ないようにと、常々、1000Mのメンテナンス・ レストアを行なっているわけです。 元々が常に需要のある定番人気商品でもありますので。 そんなわけで先日も1000Mメンテナンス作業を行なっていたのですが、 その折にNS-1000・M 取扱説明書が付属しているのを目にしました |
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現物を見るのは初めてでして、 もちろん中身も見たことがありません。 |
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実際問題、現物を手にする機会は少ないとしても、 メーカーのYAMAHA様のHPにおいてダウンロードコンテンツとして NS-1000M 取扱説明書のPDFファイルが閲覧出来ますので、 今までその中身、内容を見る事がなかったのは、単に 今更わざわざ内容を確認しなければならないほどの事は書かれていないであろうと 高を括っていたからです。 しかし今回、手にした説明書の中身を確認して 意外にも再認識というか、あらためて知る事もありましたので その辺りを含めて今回のメルマガは1000M の話を少しばかり。 |
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取扱説明書にはお馴染みの「ご使用になる前に」の項目に 次のような記述がありました。 |
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※ご使用になる前に |
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『定格入力程度のプログラム入力で 長時間使用しますと、 アッテネーターつまみの温度が 上昇することがありますが、 性能上問題はございません。』 |
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アッテネーターが発熱するのは電気信号の減衰をつかさどる役割上 当然なのですが、自身が1000Mを長時間使い続けるという状況が 無かったもので、「そうか、1000Mは(も)熱くなるのか」と あらためての認識だったわけです。 |
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ツイーター(HIGH)とスコーカー(MID)を -3dB〜+3dBまで可変出来る アッテネーター部。 ここが熱を持つようですが、 |
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内部ケースはステアタイト (誘電率が小さく高温での 絶縁性を持つセラミックス) が使われているようで 問題はないようです。 |
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エンクロージャーに止められている、 パネル部とATT本体部は ナットで固定されているのですが、 取り外し時には少し注意が必要です。 |
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ツマミを引き抜くように外し、パネル部の前面から覗くナットを 回してやれば良いのですが、 |
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それぞれの位置合わせ用に、アッテネーターケースにある穴と、 パネル裏の突起部分が合わさっているので、 そのままナットを回してしまうとパネルも同時に動いて 突起部を折ってしまう恐れがあるのです。 ですので手でパネル部とケースを握り固定しながら、 ナットを回す必要があります。 |
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「設置場所」に関してはこんな表記が。 |
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※設置場所 |
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『スピーカーは縦にも横にも設置 できますが、その中心が聴く時の 耳の高さになるように設置するのが最良です。』 |
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なんとなく視聴位置の定石として、ツイーターの高さを耳の高さに、 という感じで今まで聴いてきたのですが、 どうやら1000M の正解は「中心を耳の高さに」のようです。 実際には個人差や視聴環境の条件によってそれも変わってくるのでしょうが、 どうにも「メーカーの公式のアナウンス」という響きに私は弱いようで 試しにその通りに1000Mを聴いてみると、ほんの少しの高さの違いだけなのに、 中心寄りに聴いた方が低・中・高音のバランスが良くなったように聴こえました。 単純だなあとは思いつつも良く感じたのは事実なので これからはこのポジションで聴いていこうかと思います。 |
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説明書には指向特性のグラフも掲載されています。 |
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※指向特性 |
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100Hz帯域が綺麗に360度の聴感であるのが特徴的です。 |
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1000Mの特徴のひとつに、ツイーター、スコーカーで使われている ベリリウムのドーム型振動板が挙げられます。 |
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虹彩、あるいは玉虫色のような色付きを見せている Be振動版。 |
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再び説明書から文を借りてくると、 『Beは非常に軽くしかも剛性が高いので、(1)音の立上がり、過度応答に優れ (2)能率が良く(3)その上極めてすばらしい高域特性が得られます。』 確かにベリリウムは硬くて、強くてその上軽いという金属として 非常に優れた性質を持っています。 説明書には他の金属と比べての物理特性比較表があるのですが、 |
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※物理特性比較 ↓ |
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一般的なマグネシウム、アルミニウム、チタンと比較して、 明らかに高い数値です。 実際のところ、この数値の差が現実のスピーカーの挙動に 具体的にどれだけの差を生むのか、ということは分かりませんが、 いずれにせよ1000Mに関しては成功の結果をもたらし、 特徴のひとつとして印象付けられています。 |
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(ベリリウムは毒性を持つ金属としても知られていますが、 粉状になってそれを人体に吸引してしまった場合を特に 危険としていますので、1000Mの通常使用には問題ありませんし、 私どももその辺りを十分に考慮しての作業を行っております。 しかしながら皆様方が個人的に分解等行うのは お控えいただければと思います。) |
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中・高域ユニットの特徴には他にも タンジェンシャルエッジの採用やディフューザーの存在が挙げられます。 |
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真ん中へ渦巻きが 向かっているかの様に見える タンジェンシャルエッジ。 |
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『布に熱硬化性樹脂と粘弾性のあるゴム系樹脂とを二重にコーティングして 作り上げたタンジェンシャルエッジはハードドームに起きやすい高域でのピークを 取りさりました。』 |
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↑ Be振動板の前方に覆い被さるディフューザーは、 『ユニットの受持つ高い周波数領域での干渉を防ぎ、 山谷の少ないなめらかな特性を得ました。』 |
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次に、中・高域に対して、低音域のウーハーにYAMAHAが見せたこだわりは、 コーン紙の素材の追求、布製エッジの採用などです。 ↓ ※ 顕微鏡でみたコーン紙の素材 |
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説明書にコーン紙素材の顕微鏡写真を載せてしまう程に こだわりを持って開発された特性のコーン紙だったようです。 |
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手持ちのハンディ顕微鏡でも実物を覗いてみました。 ↓ ウーハーのコーン紙(約20〜100倍率) |
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以前に見た事のあるJBL系など他のユニットのコーン紙の様子を 思い浮かべてみても、こちらの方がきめ細かく密度が高い様に 見受けられます。 |
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↑ 併せてセンターキャップの接写も。 無数の凸があるようにも見えます。 |
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↑ ウーハー、エッジ 当時主流であったウレタンエッジではなく中・高域と同じく 二重コーティングした布製エッジを採用しています。 ですのでウレタンの様な加水分解による劣化などを心配する事なく 長期間に渡ってウーハーの駆動性を保つことが出来ています。 未だに中古そのままの1000Mでも比較的当時に近い状態で音を 聞けるケースがあるのはこういった事が要因かもしれません。 |
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エンクロージャーは高密度パーティクルボードを使用した 堅牢な造りです。 厚さは平均して25mmくらいの板でがっちりと囲われていて ウーハーとスコーカーの境に位置する所にも、上部・下部と 分けるような見た目で補強板が渡してあります。 |
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重量が23kgという事なので、カタログなどにある31kg/本 という所から逆算して、その他ユニットなどの合計重量が 8kgになる…ということでしょうか。 |
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※ NS-1000Mの仕様 |
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最近耳にする事の多い、フェイクニュース、という訳ではありませんが、 同じような意味合いでネットから得る情報はやはり玉石混淆、信用しきれず、 確実性に欠ける所があります。 そうした中、こうした公式の資料(しかも紙媒体)というものは 得も言えぬ安心を感じました。 資料入手の困難さや時間の制約などを秤にかけて、ネット上のデータ (勿論、公式やそれに近い所の信用性の高いもの)を参考にする事も多々ですが、 これからも皆様には信頼してもらえる正しい情報をお伝えしていけるよう 心掛けていきますので、よろしくお願い致します。 |
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最後に一つ、 説明書を見ていて気になったのですが、 1000Mの表記、『NS-1000・M』と 1000とMの間にドットが入るんですね。 |
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今まで何とはなしに「1000M」と思っていたので「へーー」と これまた発見のつもりでいたら、説明書の最後の方では 『NS-1000M』と変わっていました。 公式なのに曖昧なんでしょうか…。 こういう場合はどちらでもアリなのだろうと、 柔軟に対応していこうかと思います! それでは、また。 文中の ※ 及び『』内、 NS-1000・M 取扱説明書より参照・引用 |
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現在、取り扱い中のNS-1000Mは、下記リンクより キーワードボックス内に「NS-1000M」を入力し検索の上、 ご高覧くださいますよう、よろしくお願い致します。 http://www.hifido.co.jp/ |