御世話になっております、京都商品部の八木です。 台風5号が日本列島を荒らして回っておりましたが、皆様無事にお過ごしでしょうか? 幸いにも僕の身辺では特に目立った被害はありませんでしたが、ただ予定していた海水浴が中止になるといった個人的には非常に悲しい事態に陥っておりました。 次の休みにこそリベンジをと考えております。 (下写真:若狭和田ふるさと情報より http://www.eonet.ne.jp/~wakasa/) |
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ところで先日、テレビで「嵐にしやがれ」の「隠れ家ARASHI」のコーナーを見ていたところ、Victorのスピーカー「SX-3」がセットに使用されているのが目にとまりました。 職業上からか、テレビ番組やCMのセットに使用されているオーディオ機器には目がいってしまいます。 そんな訳で?今回のメルマガでは、Victorの名器「SX-3」について触れてみたいと思います。 非常によく売れたスピーカーで、特にマニアの方には説明などいらないとは思いますが、簡単に紹介させて頂きたいと思います。 |
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この「SX-3」ですが、Victorが1972年に発売したブックシェルフ型の密閉型2Wayスピーカーです。 特徴的なのがやはりこの白木仕上げの外観でしょうか。 発売当時を知らない僕としては、何の変哲もない小型スピーカーですが、当時は白木仕上げのエンクロージャやサランネットがないというのが、スピーカーデザインの常識としてはなかったそうで、この外観も当時はなかなかの話題になったそうです。 右写真:オーディオの足跡より http://audio-heritage.jp/ |
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この「SX-3」は72年から約8年程販売されていたそうですが、非常に人気があったため約20万台程作られたそうです。 そしてその8年の間に少しづつマイナーチェンジをしており、74年に「SX-3/2」、77年位「SX-3/3」と3代に渡るモデルになったようです。(下写真:左からSX-3,SX-3/2,SX-3/3) 価格も手頃(当時¥65,600/ペア)というのもよく売れた要因の一つとは思いますが、ただ安いだけではこんなに人気は出なかったと思います。 今回はそんな「SX-3」の3代の違いについて調査してみました。 |
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まず外観です。(それぞれの色味違いは経年や個体差によるところです) この白木仕上げの外観は「スプルース」という「マツ科唐檜(トウヒ)」という針葉樹の突き板を化粧板として使用しており、このスプルース材は主にアコースティックギターのトップ材としてもよく使用されているものです。 左写真:島村楽器 ギターセレクション 木材辞典より シトカ・スプルース http://info.shimamura.co.jp/guitar/feature/guitar-wood-materials-encyclopedia-3/ |
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最初に一番区別できるポイントが本体右下のバッジ。 (些細な事ですが、1は2,3に比べ正方形寄りで、2,3は同じ寸法で長方形寄りです) ですが、これを入れ替えられても判別できますでしょうか? 他を見てみましょう。 |
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ツイーターは1.2は見た目に違いがありませんが、2になると手動でカバーが外れません。 3になるとカバー自体の形状、素材も少し変わります。 (1,2は樹脂製ですが、3は金属製) (下の2枚の写真は左が1、右が2) |
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ウーファーはグリルのフチのゴムの形状が3だけ少し変わりました。 グリルも気のせいかもしれませんが、若干アールの付き方が違う様に感じます。 |
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そしてATTも3だけ変わりました。 ツマミ状のものから平面状のものになりました。 |
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続いて背面を見てみましょう。 こちらもパッと見は分かりにくいですが、1は「BASS ADJUST」のスイッチがあり、2になるとそれがなくなり、3になるとターミナルが変わりました。 |
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続きましてユニットをバラしていきたいと思います。 ウーファーを外すとてんこ盛りに吸音材が現れました。 この吸音材はグラスウールの2〜3倍の吸音効果がある「エステルウール(動物性)」だそうで、この「SX-3」のウーファーのダンピング向上に大きく貢献しているようです。 どれも11枚入ってました。 カタログでは整然と並べられておりますが、実際はどれも無造作に突っ込んでありました。 |
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次はウーファーです。 これはこの「SX-3」の売り文句の一つも言える「クルトミューラー」製のコーン紙です。 「クルトミューラー」というのはドイツ(当時西ドイツ)のコーン紙メーカーで、有名なところではあの「TANNOY」も75年頃〜現在に至るまで使用しており、他にも古くは「SIEMENS」や最近でも「Kripton」や「ELAC」,「SonusFaber」などとも仕事をしている一流コーン紙メーカーです。 |
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グリルを外すと埃がモリモリ出てくるというのもこの形状のあるあるです。 この埃に湿気が加わるとコーン紙にダメージを与えてしまうのでマメにエアーダスターなどで掃除をしてあげて欲しいです。 |
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裏側です。 パッと見、1,2は違いないように見えますが、ゴムのガスケット部が少し違います。 そしてに3になるとフレームがアルミダイキャストになり、ダンパーも1,2より大型化されています。(約3~4mm程) マグネット部の表記が写真では見づらいので左から ・SK2192G 4Ω NOM.6W MAX.50W ・SK2192GZ 4Ω NOM.6W MAX.60W ・SK2164D 4Ω NOM.6W MAX.60W(何故3だけ2164?) となっており、2以降最大出力が大きくなっています。 |
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続いてはツイーターです。 正面から見たところ1,2はほぼ同じでしたが、裏側のマグネット周りで変更がありました。 2になるとバックキャビティが追加されて、これによってf0,Q0を低く抑えられ、広帯域化する事に貢献しているようです。 それに依るところなのかクロスオーバーも200hz下がっているようです。 磁気回路にも銅製のキャップを採用しているそうです。 3になるとさらに、ボイスコイルが細くなって磁気効率の改善が計られているそうです。 バックキャビティの材質・形状も変更になっています。 ちなみにこちらも見づらいので左から ・SK2307B 8Ω NOM.8W MAX.50W ・SK2307D 5Ω NOM.6W MAX.60W ・SK2307E 5Ω NOM.6W MAX.60W |
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そしてネットワークですが、1の頃は割とシンプルな構成でしたが、2~3になるとコンデンサーの量が増えました。 見たところ2,3は同じ部品を使っている様に思われます。(設置場所が変わっただけ?) |
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最後にエンクロージャです。 エンクロージャは前後バッフルにダグラスファー合板(米松合板)が使用されており、中にも響棒というエンクロージャ内の縦横の音の伝播速度を等しくして,響きを美しくするという,ピアノの響板の技術に通じる響棒をリアバッフルに取付けてあります。 密閉型スピーカーという事もあり、やはり箱鳴りも大きなサウンドの要素になっている訳です。 |
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ちなみに3のみ、オプションでサランネット付きというのもあったそうです。 |
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いかがだったでしょうか? 難儀なのは状態のいい個体が少ないため、巷ではなかなか良い「SX-3」に出会えません。 ですが当社では、極力メンテナンスを施し、できるだけ当時の「SX-3」を皆様にお届け出来るよう日々がんばっておりますので、また商品化の折には是非チェックしてみてください。 それではまた! |