いつもお世話になっております。 ハイファイ堂 京都商品部の滝本です。 |
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前回のメールマガジン (第707号 2017年08月18日)では 日本国内では珍しいサランネット付きの NS-1000Mをご紹介させていただきました。 |
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普段、ユニットがそのまま見える状態の1000Mを見慣れてしまっているせいか、 サラン一枚覆っているだけでずいぶんと違う印象になるものだと感じていました。 サランネットが担っている役割は、主にユニットを衝撃やホコリなどから 保護する事ではありますが、スピーカーの顔ともなる真正面を覆うわけですから その有無やデザインによって、スピーカー自体の印象が変わってしまうのも 当然と言えば当然でしょうか。 |
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そんなサランネットによる印象の変化、という事を考えさせてくれたスピーカーが、 この1000Mと同じ頃のメンテナンス品でもう一点ありました。 |
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ウォルナットの箱に 前面が黒系一色なサランネット。 とてもオーソドックスな見た目が シンプルで、スピーカーっぽいスピーカーといった印象を抱かせてくれるこちら。 |
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いざサランを外してみますと… 「?、何か見覚えが……??」 |
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そうです、こちらです。↓ |
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JBLのL88 Nova(ノヴァ)。 この独特なデザインのフロントグリル(サラン)で知名度も高い 1967年発売の人気モデルですが、このNovaと 冒頭写真のスピーカーはサランは違えどその中身は同じなのです。 それではこの黒系サランの方は何なのか?、と言いますと 次のカタログ写真をご覧になった事がある方はご存じだったかもしれません。 |
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L88 Novaと系譜を同じくする 「L88-1 Cortina」です。 Nova発売の翌年、1968年に発売されたこのCortina(コルティナ)。 ユニット構成もNovaと全く同じで (Novaは息の長い商品の為、ユニットの構成も時期によって 少しの違いがあったりするのですが)、 違っているのはサランのみになります。 |
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各パーツを過去のNovaメンテナンス品と見比べて行きますと、 (左側 Cortina、右側 Nova) |
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◆エンクロージャー正面 ※記録写真の都合上、Nova側の上下が逆転している事、等については ご容赦下さい。 |
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◆エンクロージャー背面 |
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◆エンクロージャータイプ |
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◆ウーハー 123A |
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◆ツイーター LE20 |
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◆ネットワーク、パネル部 |
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◆ネットワーク裏 |
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以上のように全く同じ構成です。 違うのはサランだけ。 Novaのサランの造りがしっかりしていて作るのにもなかなか手間が かかりそうなので、ひょっとしたら生産数を上げる為に (詳しい数値データがあるわけではないのですが発売当初から 人気が高かったという事なので、品薄な状況があったのかもしれません)、 サランの造りを簡単なものにして、製造を早める策であったのかな、などと 想像したりもしましたが、そうなると当時の両者の販売価格が同じであった事は Cortinaの購入者にとって割が合わない気がしますし、 Novaの人気の一端はあのグリルのデザインに因るところも大きかったと思うので、 それを削ってしまうのは本末転倒に思えます。 |
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少し話がずれますがこちらはJBLの冊子(価格表、おそらく1971年のもの)なのですが、 |
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Lancer 77と並んでCortina、Nova ともに198.00ドルになっています。 |
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当時のドル円為替レートが¥330/US$くらいだったので それから概算すると¥65,000ほどになってしまいます。 日本での販売価格は一貫して¥100,000程でしたので なんだか計算が合いません。 現在は個人でも安価な手数料で簡単に海外製品を手に入れる事が出来ますが、 それが難しかった当時、その難しさ分だけ日本での販売価格にも反映していたのでしょうか? |
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-閑話休題- さて、同じく簡単になってしまったこちらのサランの方はと言いますと、 ちょうど私の過去分のメールマガジン(第698号 2017年06月16日)で Novaのサランについて記述させて頂いていましたので、そちらと併せてご覧いただければと思いますが、 メルマガ第698号 Novaサラン リンク先 http://www.hifido.co.jp/merumaga/kyoto_shohin/170616/index.html |
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全体的な形状は同じに見えるのですが、 |
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ウッドパネル部が無く、そのため 境になる部分や溝などがありません。 |
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裏側の丸窓部分のフチの溝もありません。 |
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生地を張ってしまうと、あらためて、やはりとてもシンプルな見た目です。 (ちなみにカタログでのCortinaの生地の色表記は charcoal brown patternです) サラン装着状態で比較してみますと… |
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やはり随分と違った印象を受けます。 |
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音の方は、当然ですが Cortina も Nova も同じように 小型なスピーカーながらそのサイズ以上のスケール感で バランスの取れた「クセがないけど雰囲気のある良い音」 そんな音を聴かせてくれますのでどちらもお薦めです。 前回ご紹介のサラン付き1000M同様、 購入時の選択肢がひとつ増えた、と考えてみるのもいいのかなと思います。 それでは、「シンプル派にはCortinaを」という事で、 しかしながら弊社におきましても取り扱いの少ない品でありますので、 お見かけになられましたら、ぜひお早めのご一考を。 |
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L88系には他にも色々と系列機がありまして、 |
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見た目もポップで色鮮やかな JBL L88 Plus。 *2 |
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Novaのデザインをそのまま ミニチュア化したかのような JBL L88M。 |
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こちらなどもまたぜひ併せてご覧いただければ。 入荷状況はハイファイ堂トップページより 検索キーワード「 L88 」等でご確認のほど、よろしくお願いいたします。 |
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今回のCortina、発売の経緯など当時の情報を調べてみたかったのですが、 Novaなどと比べると明らかにデータが少なく、これがそのままいわゆる 知名度の差なのか、などと感じていました。 その名に冠した「Cortina」の文字。 これはスペイン語では「カーテン」を意味する言葉なのですが、 私にとってはあたかもカーテンが閉ざされているかの如く 姿の見え切らないスピーカーでした。 今後もう少しこの cortina(カーテン)を開いて、あらたに良い情報が得られれば 皆様にもご報告していきたいと思います。 それでは、また。 |
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※ JBL Cortinaの由来がカーテンから来ているかは不明です。 人名や地名にもよく使われる言葉ですので、そちらから来ているの かもしれません。 参照 *1,*2 ホームページ「Lansing HERITAGE」 ( http://www.audioheritage.org/ ) JBL LIBRARY / Catalogsページより |