いつもお世話になっております。 ハイファイ堂 京都商品部の滝本です。 今回のメールマガジン第718号は、2017年11月3日の配信、文化の日です。 そして私どもに関係の深いところではレコードの日であったりもします。 他にも文化の日に因んだ記念日は色々あるようです。 ところで、この日に限らず日本では「3」にまつわる記念日や神事、言い回しなどが多いようで(正月三が日、3月3日ひなまつり、御三家、三つ巴、三位一体、三大〜〜など。)、これは古来、陰陽道の「奇数は陽(良い)数字」という考えに由来しているそうです。 |
|
そして、京都商品部に珍しめなスピーカーが これまた珍しく3台同時に届いた事がありました。 これは何かの吉兆だったりしたのでしょうか? |
|
まあ、当然何もなかったわけですが、 この光景は珍しいものではあります。 |
|
UREIの811Cです。 ペアで一組と、単独のものが一台やって来て、写真のような3ショット実現となりました。 |
|
UREI 811Cは同社の良く知られる813Bスタジオモニターなどと同様に、スタジオでのプロ仕様に合わせて設計された、UREI独自のTIME ALIGN monitor system(タイムアライメントネットワーク)を採用したモニタースピーカーシステムです。 タイムアライメントは位相差を電気的にズラして解消し、結果、優れた定位を実現しこれを採用したシステム、UREIの8XXシリーズは多くのスタジオで人気と信頼を勝ち取ってきました。 以下は8XXシリーズで使用されているシステムの一覧表です。 |
|
↑ UREI SYSTEMS REFERENCE CHART ※1 |
|
UREIは自社で部品等を設計するメーカーではなく、いわゆるアッセンブル(組み立て)メーカーとしての色合いが強い所です。 このタイムアライメントネットワークに関しても、別会社が設計したものをライセンス使用する、という形で作られています。 同軸ユニットなどもALTECの604-8GやPAS(Professional Audio Systems)社製 38cmノンコルゲーションコーンにJBLのドライバ2425Hを組み合わせたものが使用されたりしています。 |
|
それでは、811Cの仕様と、説明書です。 〈仕様〉 同軸型ユニットを搭載した2ウェイ・1スピーカー、バスレフ方式。 38cm同軸型ユニット (801C) クロスオーバーネットワーク (Model 844) 再生周波数帯域 60〜17,500Hz(±3dB) インピーダンス 8Ω 最大入力 120W 出力音圧レベル 99dB/W/m レベルコントロール 中域・高域各可変 幅667×高さ527×奥行445mm 58kg *カタログ値 |
|
|
|
↑ 811C Technical Manual ※2 |
|
説明書の頭には『JBL/UREI』と書かれていますが、1985年にUREIはJBLに買収されており、しばらくはここにあるように、JBL/UREIとしてその名前とサービスが引き継がれています。 パッケージ方法がユニットを下にした状態で保護されていたりするのを見て、なるほど、正規(メーカー的)にはこういう梱包をされているのか、と何気に参考になったりします。 オプションでグリルがあるのですが、811シリーズのグリルはそれぞれのモデル名の後ろに「G」が付いた表記になっています。 811Cのグリル→「811CG」 ただ、カタログによっては811GCなどと文字順が逆になっていたりもしていて、この辺りは古い時代の、そして外国の特有のおおらかさという事でご愛敬でしょうか。 |
|
それでは、各部の様子を見ていこうかと思います。 |
|
|
|
UREIご自慢のTIME ALIGN monitor system採用のクロスオーバーネットワーク。 Model名は844。 ただ同システム採用の、例えば318BXのネットワーク(Model 841)などと比べると幾分シンプルなように見受けられるのは、318BXのサブウーハー1台分の差か、モデル格差か。 もちろん交換したコンデンサ等の違いはありますが。 |
|
|
|
318BXのネットワーク → |
|
|
|
操作パネルには各可変域に対応した周波数特性の図と堂々と主張する「UREI TIME ALIGN MONITOR SYSTEM」の文字。 やはり相当のご自慢の様です。 |
|
|
|
811Cに使われているユニットは38cm同軸型の801C。 PAS社製 38cmノンコルゲーションコーンにJBLの高域ドライバ2425HとUREI製のホーン800Hの組み合わせ。 |
|
(コルゲーション: 振動版に施された同心円状の溝。 周波数特性の補正の為やコーンの共振を抑える働きなどがあります) |
|
何度も思いますがやはりこの発泡状フォームが付いた青いプラスティック製ホーンがなんともインパクトあります。 でも見た目の派手さだけではなく、ホーン上下に2本ずつ入れられた穴やこのフォームなども安定したにごりの無い音を出すための工夫であり、細部に渡ったチューンが施されている感じがあります。 |
|
|
|
↑ この個体は2425HSでした。 取り付けがスクリュータイプのS |
|
エンクロージャーへの取り付けはJBLのウーハーなどでよく見るタイプのクランプで4点留めです。 |
|
|
|
総重量58Kgの内、25Kgくらいはあるんじゃないか?と思えてしまうほど堅固な造りのエンクロージャー。 |
|
内部の梁もしっかりしています。 |
|
|
|
ユニットの取り付けはUREIによく見るスリットに差し込む方式。 場所は取るかもしれませんが他のスピーカーでよくある基本ネジだけで固定するやり方よりも色々と理にかなっていると思います。 |
|
← ターミナル部は基本、ネットワーク取り付け位置の裏側に来ます。 |
|
分厚い吸音材をめくると開口部が。 → |
|
← 少し下辺りになります。 |
|
|
|
エンクロージャーの設計上、例えば右用の箱を上下反転して左として使う事も出来るので、後ろを見てみると、たまにこんな組み合わせ(↑右写真)でやってくるペアもあります。 ネットワークの差し込み用スリットが2本入っているのはこの為なのでしょうね。 |
|
|
|
吸音材もかなりのもので内部壁面に張り合わせられているブロック状の物もさることながら、内部空間に詰められる吸音材はこれだけ(上写真)の量になり、文字通りあふれんばかりの量です。 全て詰め込むとやはりあふれそうです。 |
|
|
|
バスレフ開口部、粗目のスポンジのような穴あきのシート状ポリウレタンフォームを表側から枠に向かってはめておくだけです。 内部裏側から見るとこの様に枠は作られています。 |
|
今回の811Cの音チェックは3本を、ペアと一台単独とで分けて2回行なったのですが、その2回共で音の定位というか奥行き感がちゃんとしているな、と感じました。 この辺りはモニタースピーカーとしての面目躍如といったところでしょうか。 一方で、モニタースピーカーという割には音色として中低域に際立った特徴を感じました。 ただ決して高域が頼りないという事でもなく、歪みなくビーンと飛び出してくる感じの高音の方も安定感を感じられる鳴り方をしていたので、結果としては「全体的に安定していて、特に豊かな中低音域を持つ音」と表現すれば良いかもしれません。 過去にチェックした813BX同様、音量を上げれば上げるほど安定感を保ちつつパワーだけがどんどん増していくような鳴り方は、ベース・ドラム音に特徴のある楽曲と相性が良いのではと感じました。 サブウーハー(2234H)ひとつ分の低音増強がない分、813BXと比べればパワー感がおとなしめだったものの、逆にその分高音とのバランスが良い音が聴けるとも考えられるので、サイズ感を考えても8XXシリーズの中でも、とっつきの良いスピーカーではないでしょうか。 |
|
弊社の店頭でもなかなかお目にかけられる事が少ない機種でしょうが、もし出会うことがあれば、ぜひ音量大き目でこのパワー感を試してみて下さい。 店頭スタッフがご近所様に怒られない範囲で、がんばって良い音を聴かせます!(はずです!) それではまた。 |
|
資料参照元 ※1 http://www.jblproservice.com/pdf/Systems%20Reference%20Charts/UREI%20Series.pdf ※2 http://www.jblproservice.com/pdf/UREI%20Time%20Align%20Series/811C-L,R.pdf 「jblproservice.com」( http://www.jblproservice.com/ ) |