12月に入りまして都内も冬本番。冷たいビル風にさらされながら身体を丸めて家路に急ぐ今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。 ハイファイ堂 丸の内店 廣川勝正です。 さて今回は、「オーディオ機器の相性について改めて考えてみる」というテーマでお届けしたいと思います。 |
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人には相性というものが存在しまして、それこそ相性が合えば、親友となり、恋人同士となり、一生のパートナーとなり得ることもあります。 逆に相性が悪ければ・・・。 もちろん、オーディオ機器にもそれぞれ相性というものが存在します。 今回は、特にスピーカーとアンプの相性に関して、オーディオ歴40年と歴だけは長い私の拙い経験則からお話しさせていただきたいと思います。 |
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さて、オーディオ機器の相性とは何か? ご承知の通り、スピーカーだけでは音が出ないですし、アンプだけ手に入れても音楽を聴くことはできません。 オーディオ機器で音楽を聴く為には、音楽ソースを奏でるプレーヤー類、その音楽信号を増幅しスピーカーを駆動する為のアンプ類、直接空気を振動させて音を出す役割のスピーカー類のセットが必要となってきます。 そのセットを組む時の「組み合わせの妙」こそがオーディオ機器の醍醐味であり相性と言えるわけです。 |
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最も簡単なことは、同じメーカーのアンプとスピーカーを組み合わせることですが・・・個人的には嫌いな事です。 そのメーカーの音の全てが好きだという方は良いでしょうが、好きな部分もあるが、もう少し太い音が好きだとか、ズレが生じる場合はずっと妥協して聴いていくしかありません。 それは個人的には受け入れ難いものです。 もう一つ、個人的に嫌いなのは、いわゆるレールが敷かれているメーカーです。 どういう事かと申しますと、あるメーカーのスピーカーを試聴した時に、様々なアンプを組み合わせた結果、スピーカーと同じメーカーのアンプが最も音の相性が良かった場合の事です。「あぁ、結局このメーカーでシステムを組んでくださいって、レールが敷かれているんだなぁ。」と思ってしまうと、「組み合わせの妙」を楽しめないと思ってしまってダメなんです。 という事で、丸の内店にセットしてあるシステムについて、自分なりに考察していきたいと思います。 |
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上の写真のJBL 4320ですが、音の面で少し不満な点があります。 低域側のウーファーと高域側のドライバーの間の中低域がもっと欲しいと感じる事です。JBLのスタジオモニターだと乾いた音の極みみたいな感じで上記の欲求をなおさら感じてしまいます。 そこで、在庫移動で久しぶりにご対面となりましたMcIntoshのMC2205の出番です。 McIntoshならではの色濃くて脂っぽい音が聴ける1975年発売のパワーアンプ、このころのパワーアンプは最もマッキンらしい音を聴く事ができると自分は感じています。 その、色濃くて脂っぽい太めの音が、JBLのスピーカーに懐の深さを追加した様に感じさせるのです。 よくJBLとMcIntoshは相性が良いと言われていますが、正にそう感じた一例です。 McIntoshなら、どの年代のアンプでも相性OKというわけではない事を一言付け加えさせていただきます。 ただし、完全に希望通りの中低域を得られたわけではありません。もっと中低域が欲しいのならば、4343等のミッドバス搭載スピーカーを、という事になります。 |
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上の写真のALTEC 620AはJBLと同じアメリカ西海岸のスピーカーメーカーですが、音の性格は少し異なります。 アメリカ西海岸らしいカラッと乾いて明るい音という面では共通していますが、ALTECの場合、ルーツというか、用途が音に大きく反映されています。 もともと劇場や映画館で使用された事が多いので、音を明瞭に遠くに飛ばす為の音作りがされています。ゆえにウーファーなどの振動板がJBLに比べて軽く出来ているところが大きく違うところです。 パーンと弾ける様に音が勢いよく飛び出してくる、それがALTECの持ち味なのです。 そこで、脂っぽくて甘口なMcIntoshのアンプと組み合わせると、個人的には途中で音がボトッと落っこちて音が飛んでこない様な気がしてしまうのです。 自分の経験則からいうとALTECに合わせるには辛口のアンプを、という事になります。 在庫があればMarantzのmodel7とmodel8Bが理想ですが、今回はGASのTHAEDRA2とSON OF AMPZILLAを組み合わせてみました。 中高域のまっすぐ飛んでくる感じと、意外と低域のボリュームを増してくれる事が特徴のSON OF AMPZILLAが620Aの低域の弱点を補っている感じで気持ちよく音が聴けているシステムとなっています。 |
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さて、スピーカーに対してアンプを組み合わせる場合、スピーカーの長所(特徴)を、より引き出してくれる選択が主に良い結果を生むという事が多々有ります。 例えばDIATONE DS-1000シリーズ以降のボロンダイアフラム採用のスピーカー。 中高域は繊細でエネルギー感も十分なのですが、反面、低域が少しエネルギー不足を感じます。 そこで、低域を補う形でアンプを選んで組み合わせると、何か煮え切らない音しか聴けない事が多いです。 逆に、Accuphaseなど、中高域が繊細でクリーンな音が魅力のアンプと組み合わせると、お互いの長所の相乗効果で、生き生きとした音を聴く事ができる事が多いのです。 スピーカーって、褒めれば伸びる子なんですよ(そういうタイプの人も多いですよね)。 |
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逆に弱点を補い合う、と言うよりも逆の性格のメーカー同士の組み合わせの数少ない成功例を一つ挙げたいと思います。 それはVictorとYAMAHAの関係です。 Victorのスピーカーの特徴は、国産では珍しく箱の響きを大切にしているところです。エンクロージャーをうまく鳴らすことでナチュラルな響きを演出する、響きを大切にするメーカーです。 片やYAMAHAは響きよりも音の芯を明確に表現する方で、クッキリとした音作りが特徴のメーカーです。 異なる性格のメーカーですが、これが絶妙な相性の良さを生み出します。 Victorのスピーカーから、響きの豊かさに、明瞭さが明らかに加わり、非常にクオリティーの高い音を奏でてくれるのです。 上の写真のSX-3/2でも効果的ですが、できればSX-900やZeroシリーズのセラミック系振動板を使ったスピーカーなら、なおさら効果的ですので、一度組み合わされた音を聴いていただきたいと思います。 |
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いかがでしたでしょうか。 今回は、オーディオ機器の相性について、私の経験則を踏まえて実際に組み合わせた例を取り上げてみました。 オーディオシステムを組む楽しみは、1+1が10にも20にもなってくれる、正に「組み合わせの妙」にあると思います。 さて、ハイファイ堂各店では、中古品という1点ものゆえの、限られた在庫の中からという高いハードルを乗り越えた組み合わせの音を聴くことができます。 ぜひご来店いただきまして実際にご体感ください。 ではまた次回。 |