連日寒い日が続く今日この頃、東京丸の内近辺は皇居や公園が周りにある影響からか、時々前に進めないほどの強烈なビル風に悩まされます。 皆様、いかがお過ごしでしょうか。ハイファイ堂 丸の内店 廣川勝正です。 先日まで、丸の内店にJBL PARAGONが展示されておりましたが、ご来店ご試聴頂いたお客様のほとんどが「このスピーカーを入れられる様な部屋を作らなくては、なかなか買えないよね。」とおっしゃっておられました。 確かに、心置きなくレコード演奏を楽しむ為には、オーディオ機器はもちろんですが、同様に音に大きな影響を与える部屋も重要です。 そこで今回は、先月レコードコンサートの時に気になった、防音ルームや劇場の音響クオリティーについて語りたいと思います。 |
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昨年の10月30日を皮切りに、12月3日、今年に入り1月15日と現在まで合計3日間開催させて頂いておりますレコードコンサートの会場は、都営三田線高島平駅西口からほど近い、板橋高島平ハウジングステージ内にあります大和ハウスの防音ルームです。 それまで西新宿の東京都新宿住宅展示場の大和ハウスの防音ルームでも10回以上レコードコンサートを行ってきたのですが、音の聞こえ方が全く違うので、気になっていろいろ調べてみた次第です。 先に、個人的な音の好みで言うと、下の写真の高島平のお部屋の方が好きです。 双方の広さやコンセプトが違うので、音の聞こえ方が違うのは当然なのですが、高島平のお部屋のチューニングの方が適度にデッドで、音に落ち着きと浸透力を感じるからなのかもしれません。 ソファーなど、設置されているインテリアなども、上記のようなことに貢献しているものと思われます。 |
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ここで、特に注目すべきところは、上の写真の部屋の角にある音響アイテムコーナーチューンです。 写真ではコーナーチューンを解放した状態ですが、すぐ横の板状のものが可動式となっており、コーナーチューンを隠すこともできます。 お部屋自体は約5.5畳ほどのコンパクトなものですが、この様に細部にわたって響きをコントロールできるなど、こだわりが凝縮された部屋なのです。 |
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使用されている音響アイテムコーナーチューンなどは、奈良市にあります大和ハウス工業株式会社「総合技術研究所」にて研究開発されたアイテムです。 その他、防音間仕切り壁、マルチプレックス遮音床、配管防音材など、多くのアイテムが研究開発されています。 心置きなく音楽を楽しみたい方の為に、日々研究努力を続けている大和ハウス様には敬意を払いたいと思います。 |
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さて、先に述べました通り、高島平の防音ルームと西新宿の防音ルームは、部屋の響きがかなり違います。 ということは、それぞれに違うコンセプトがあるのではないかと思いまして、自分なりに検証してみました。 |
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新宿住宅展示場内の大和ハウスの建物はxevo 03というタイプで、3階建です。 1階には防音ルームの他、店舗として活用できるスペースもあるタイプです。 さて、防音ルームの遮音という点でいうと、高島平の防音ルームに比べて大変優れています。 おそらく高島平の防音は45dBAのスタンダード防音、西新宿はドラムセットなどが常設してあることから、55dBAのハイグレード防音仕様と思われます。 防音扉やサッシ窓は当然二重で、内窓と外窓の間が20cm位ある事から、防音壁の厚みが凄いことがわかります。天井も高く最大で約274cm (記憶ですので正確ではないですが)あります。 ホームシアターで大音量で重低音を響かせてもほぼ外に音が漏れません。天井が高い分空間に余裕があるのでライブ感のレベルは非常に高く感じられます。 ただし、広さもありますし天井も高いので、小音量で音楽を楽しまれる方にはライブすぎるかと感じました。 |
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さて、ここからは私が行ったことのあるホールの中から、2つ取り上げまして、簡単に音の感想を述べてみたいと思います。 まずは、上の写真の新国立劇場です。 詳しくは竹中技術報告論文に記載してありますので、技術的な内容はここでは省かせていただきます。 さて、大中小と3つのホールを抱える新国立劇場ですが、特に音響的に技術の粋が結集されて造られたのがオペラパレス、いわゆる大ホールです。 今まで行ったホールの中では新国立劇場の大ホールと中ホールの音には感激した記憶があります。 両方ともにオペラ鑑賞でしたので、オーケストラはオケボックスに入っているはずですが、全然そんな事を感じさせない響きの豊かさと、まるで透明度の高い湖の奥底まで覗ける様な深〜い低域に感心しました。 ただ、大ホールに関してはあまりにも響きが良すぎるので、劇中に仕事帰りで入場したOLの靴音が気になるという弊害があるという意見もありますが・・・。 |
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最後に、ハイファイ堂丸の内店のある新東京ビルのお隣、東京国際フォーラムの音響について、自分の感想をお話ししたいと思います。 今年で20周年を迎える東京国際フォーラム。ご存知の方も少ないんじゃないかと思いますが、元東京都庁の跡地です。 ここの利点は、何と言っても交通の便です。と言う事は、周りや地下に鉄道が通っているという事です。ですので、反面、音響にこだわった建物の建築にそれが大きな障壁になるとの事です。 その他、詳しい技術的な内容に関しましては、日本音響エンジニアリングの技術ニュースに載っておりますので、簡単に述べさせていただきます。 音響工事にあたった大成建設技術研究所の記事によりますと、施工計画と現場管理という品質管理にこだわっている事がわかります。 また、防振工事の場合、不具合個所が皆無ということは有り得ない事から、プロセス管理もしっかり行われていたとの事です。 フォーラムのホールの特徴は、ボックスインボックス構造にあると思います。ボックスインボックス構造とは、ホール全体を二重構造とし、ホール内部に外部からの騒音・振動が伝わらないようにするものです。 全体的なSNが良く、演奏者の演奏技術が良く聞き取れる優秀なホールとの高い評価がある一方、ホールAは大きすぎて、後ろの席では良い音が聴けないとの批判もあります。 私自身は、ホールCにて、ケニーGの来日公演を見に行った経験があります。 席は中央やや前よりで幸運という事もありますが、音的な不満は感じませんでした。 フォーラムの音は、響きの豊かさよりも、演奏者の邪魔にならない、ちょうど良い響きを追求しているのではないかと感じました。 |
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いかがでしたでしょうか。今回は防音ルームや劇場の音響クオリティーについて語らせていただきました。 オーディオ機器は、その部屋の影響を少なからず受けます。 私も、改めてお金のかからない音質向上、すなわち、部屋の環境を考えたセッティングの変更に取り組みたいと思います。 では、また次回。 |