猛烈な夏が走り抜け初秋の兆しも垣間見えてきた9月の第二週。 皆様いかがお過ごしですか。 今週のメールマガジン、日本橋店からは渡辺が担当致します。 独り善がりの駄文に暫しのおつきあいを・・・ |
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さて本題に入る前に先週のメールマガジンでのレコード店片岡兼人のメルマガ回想の記事について言及せずにはおれません。 http://www.hifido.co.jp/merumaga/2f/130906/index.html これまでの500回のメルマガで印象に残った記事ということで私の独り善がりの駄文を2篇も紹介下さいました。 片岡さん、大慶至極であります!! 因みに私の印象に残るメールマガジンの記事と言えばこれ。 http://www.hifido.co.jp/merumaga/2f/130111/index.html オーディオ文化を3歩進んで2歩下げる銘品達!! オーディオ業界の鼻毛とも言えるオカルトグッズを真っ向から取り上げたウィットに富んだセンスと、一歩進んで二歩下がるのではなくとりあえず(笑)一歩進めたことにしてしまう紳士な姿勢は感服するとともに見習いたいものです。 |
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“茶色い瞳のソウルミュージックとポリエステルのシャツ” Patato & Totico Carlos 'Patato' Valdes & Totico Arango UCCU3124 |
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「NYに咲くアフロ・キューバン・ルンバの大輪」これが このアルバムの帯に添えられたキャッチコピー。コンガ奏者カルロス・パタート・バルデスとヴォーカリストのトティーコ・アランゴによる双頭アルバム「Potato & Totico」のストリート感溢れる演奏は、そんな言葉がぴったりくる傑作アルバムだ。CDをトレイに乗せプレイボタンを押すとおそろしくドープでスピリチュアルなマシュケナダにのっけからやられる。ざわざわとした空気の中からおもむろに鳴り出すコンガ。そのリズムに誘われるようにドス黒いが意外と人懐っこい声のスキャットでアルバムはスタートする。冒頭のこの部分だけでも彼らの住む街、イーストハーレムの一画にあるバリオと呼ばれるヒスパニック街の日常の光景が脳裏に浮かんでくる。シンプルだが恐ろしく雄弁な演奏だと思う。 録音は1967年、ブーガルーの熱狂が渦巻くニューヨーク。ヒスパニック街の、いわゆるあんちゃん達は軒先に並べた太鼓(タンボール)叩いてこんな粘っこいリズムアンサンブルを繰り広げるのが日常。赤ん坊の頃から身につけたルンバのリズムはラジオから流れる最新流行のジェイムズ・ブラウンのR&Bやフィラデルフィアの甘いコーラスとも簡単に結び付いていく。それがニューヨークの下町の空気であり気分だ。そうして自然発生的にできあがったブーガルーと呼ばれる混血音楽は爆発的な流行となる。ティーンエイジャーの軽いパーティーミュージック的色合いの強いこの熱狂の渦は数年で過ぎ去り、より流麗でシャープなリズムとメロディを持つ70年代サルサへと結実していく。 ブーガルーという音楽をサルサへの過渡的音楽やラテン音楽のイミテーションと見る向きも少なくないが、その拙さや時代の徒花感と折衷感がむしろカッコ良く思うのは、イギリス60年代に雨後のタケノコのように出現したR&Bに憧れるビートバンドに抱く感覚に近いだろう。 一部の辺境で偏狭な音楽好きの間ではブーガルーなどR&Bに根差したラテンミュージックをブルーアイドソウルの向こうを張ってブラウンアイドソウルと呼ぶ。西欧の植民地政策でアフリカの黒人達はアメリカやヨーロッパ諸国に強制的にやって来た。そして、それぞれの国や地域で、その占領国の言語を使い西欧の楽器を使い様々な音楽が出てくる。英語圏ならブルース〜ソウル〜ジャズ。スペイン語圏ならソン〜ルンバ〜マンボ。ポルトガル語圏だとショーロ〜サンバ〜ボサノバになるのか。フランス語圏となるとよくわからないので割愛(笑)。分散拡散されたブラックミュージックはその時々に接触し交配しながら、より深いニュアンスを獲得して行く。それは今もどこかで起きているはずで、だから音楽は面白いと思う。話がとっ散らかって申し訳ないが、要はソウルだけがソウルではないという事だ。スペイン語を母国語とするプエルトリコの移民二世達が作る巻き舌英語で歌う流行歌。コンガのリズムを中心に据えたR&B。それがブーガルーでそれがブラウンアイドソウル。 ここで、もう一度「Potato & Totico」のアルバムジャケットに注目してほしい。この二人のファッションに注目。いわゆるニットシャツで元はヨーロッパの富豪たちのリゾートファッションとして大流行したプリントシャツやポロシャツ類 。それらをアメリカが素材をポリエステルに置き換えて大量生産大量消費させた。本家の上品さは消えて無駄とも思える過剰な切り替えやらストライプが施されていく。それらの多くはプアーな黒人やヒスパニックやアジア人のファッションの要となる。フィラデルフィアやニュージャージーのコーラスグループなどもステージやアルバムジャケットではスーツを着ているが普段はこんな感じ。その辺のことはドリームガールズやファイブハートビーツとかこの時代のソウルミュージックを題材にした映画などを見ると良くわかるだろう。そしてヒスパニックのストリートを信条とする連中はそんなポリエステルのシャツを着てアルバムジャケットを飾る。そんなところからもパタートの出自や立ち位置がよくわかる。 王道から少し外れた茶色い瞳のソウルミュージックとポリエステルのシャツ。トゥーマッチ感とチープさ加減がうまくシンクロし不思議な渦を巻く。一部の辺境で偏狭な音楽好きは雑居ビルの階段を上がる中古レコード屋のジャズやソウルやロックの餌箱からそんなブーガルーのレコードをせっせと漁り、下町の寂れた商店街の紳士洋品店でポリエステルのシャツを血眼で探している。何故ならばマニアックなレコード屋でなければ何のジャンルかわからず適当に扱われてしまうし、ポリエステルのシャツはその昔オキュパイドジャパン(占領下の日本)で大量に作られて、根気良く探せば未だに寂れた商店街にある、ジイさんが店番してるような洋品店に眠っているからだ。 |
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El Barrio Dream An Orignal Musical Portrai PCD-4995 |
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「1967年、Bugalu Craze渦巻くニューヨーク。夢と野望、そして愛を抱きコンガを叩き続けるひとりの若者がいた」19歳のプエルトリカンを主人公にした架空の映画サントラ盤。日本編集の傑作ブーガルーコンピ。音楽はもとよりインナージャケットに小さな文字でびっしり書き込まれた架空の物語のあらすじにブーガルーのエッセンスが詰まっている。 |
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“シナモンなポリエステル製” |
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http://ameblo.jp/boogaloo/entry-11532764679.html ミスターシナモン“チャーリー宮毛”氏のブログより |
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夏の終わり感、沈む夕陽感、オレンジっぽいブラウン感、あぶく感、レモンスカッシュ感、摩天楼を遠く見上げる下町感、コンポラスーツ感、ポリエステルのシャツ感・・・ そんなたまらないものが詰まった窒息するくらい甘く切ないブラウンアイドソウル。 最後にお聴き下さい。 RAY TERRACE / I MAKE FOOL OF MY SELF http://youtu.be/kkt6ybU21dg 日本橋店:渡辺正 |