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3大“接点”対決。今回は58接点アッテネーターを組み込んだ傑作プリアンプの聴き比べをしました。
1.CELLO ENCORE 1MΩ(中古売価:598,000円/定価:1,580,000円) 2.AR LIMITED MODEL 2(中古売価:220,000円/定価:650,000円) 3.LUXMAN C-10(中古売価:498,000円/定価:1,200,000円)
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リファレンスプレーヤー、アンプ、スピーカーは、
・CDトランスポート:AYRE D-1xT 中古価格228,000円/定価1,080,000円
・DDコンバーター:dCS Purcell 中古価格298,000円/定価1,155,000円
・DAコンバーター:dCS Delius 中古価格350,000円/定価1,155,000円
・チャンネルデバイダー:Accuphase F-5 中古価格99,800円/定価140,000円
・パワーアンプ(LF):MARK LEVINSON NO.332L 中古価格448,000円/定価1,312,500円
・パワーアンプ(HF):MARK LEVINSON NO.23.5L 中古価格498,000円/定価1,522,500円
・スピーカー:JBL 4350BWX 中古価格1,100,000円/定価2,000,000円
※dCS Purcellは44.1kHz→24bit 176.4kHzへアップサンプリング、Accuphase F-5は290Hzでカット
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1.CELLO ENCORE 1MΩ(1989年発売)
緻密で細やかな表現力はもちろんですが3機種の中で最もミッドの質感と量感を感じます。しかしかといって張り出してレンジ感が無くなる感じもない、非常に絶妙なバランスが取れています。Sonus faberのような、繊細で1本筋の通ったような音質のスピーカーに組むと繊細さは堅持しつつさらに弾力性の強い音になります。ウッドベース等を聞くとコシの良さが表現されます。
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リチャード・セクエラ氏が設計したと言われる、ドラム型アッテネーターを搭載しています。アッテネーターのシャフトの先に爪のようなものが伸びていて、その爪先に細かく開けられた58個の溝に引っかかってクリックする機構になっています。ボリュームの感触が独特でカリカリカリ・・・という金属質の軽い音がクセになります。
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2.AR LIMITED MODEL 2(1994年発売)
音自体はENCOREに近い感じですが下から上まで綺麗なフラットバランス。ややハリのある音で4350をモニターライクに鳴らすならこちら。 欠点として寝起きの悪い体質のようで電源の入れはじめからしばらくは音にハリが無くか細い音なのでできたらCELLO同様、常に入れっぱなしが良いです。電源を入れた日の音とその次の日の音とでは歴然と差が現れます。
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CELLOのと同様の機構のドラム型アッテネーターを搭載していますがよく見るとこちらの方は4連式になっており、バランス回路設計になっています(ENCOREは2連式のアンバランス回路です)。よりCDなどデジタル機器との組み合わせを意識した作りになっており、ライン専用アンプになっています。ちなみにボリュームのクリック感はENCOREより硬くガリっ、ガリっ、といった感じでしょうか。
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3.LUXMAN C-10(1996年発売)
固定抵抗ボリュームを組み込んだプリアンプ、パッシブアッテネーターなどは解像度が高い一方で音が細身になりがちで特に低音の量感を出すのが難しいものですがこのモデルはそのような線の細さが無く、3機種の中で最も低音質感と量感が出ています。しかも音の見通し具合も素晴らしく、空気感が如実に伝わってきます。
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3機種の中では最も大型の固定抵抗アッテネーターを組み込んでいます。開発段階では一般的なアンプサイズに収まらないくらいの大きさだったそうです。写真に写っている細かいパーツはすべて抵抗で全部で456個、これがすべて人間の手でハンダ付け処理されています。恐ろしく気の遠くなる作業です。 なお、このアッテネーターの交換費用はメーカーにておおよそ40万円弱ほど(!)。“20世紀最後の最高のプリアンプ”と誉れ称されるのも分かります。 ボリュームのクリック感は3機種の中で最も自然でENCOREの乾いた軽さに少しねっとり感を出して重く滑らかにした感じでしょうか、なじみやすい感触です。 ただ欠点として接点がくすみやすく、簡単にガリが出てしまうことです。5日間電源を入れないでおいただけでボリュームを回したとたん、バリバリバリ…!というガリ音が出てパワーアンプのメーターがビュンビュン振れまくりました(!?)。3機種の中で最もガリの出やすいアンプといえます。
ちなみにC-10は過去のメルマガ(07年08月31日号)にもC-10を紹介しています。
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こうして3機種の音を聞いてみましたがいずれのアンプもパッと聞きではあまり個性を感じるものではないのですが、聞きこむほどに音の質感や空気感などの伝え方が3者3様だったのがとても興味深かったです。そして何よりその音に飽きが来ない。リファレンスとしてずっと置いておきたくなる、そんな魔性の魅力を持ったアンプたちでした。
大須本店 小島 陽介
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