B&W Nautilus 解体新書 その3 大須本店 越濱 靖人 |
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いよいよ4本のノーチラスを一気に修理する日がやって来ました。首都圏・中部マランツサービスの中でもノーチラスに精通した4人のベテラン勢が一度に集結。前代未聞のフルユニット交換を致しました。今回は特に観ものであるウーファー交換に着目していきます。 |
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ウーファー以外の全てのユニットを外します。ノーチラスのウーファーが並大抵の力では外せないことを意味しています。他のユニットを潰してしまわないよう全て外します。 |
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サービスマン手作りによるサービスマニュアル。通常では見ることが出来ません。今まで培ったノウハウが記されています。服装や腕時計、ベルトを外す等の細やかな指示が記載されています。なお、よく読むとシリアル299を境に内部コネクターの形状が違うようです。 |
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細かく手順が記されています。書いてあることは理解しやすいですが、実際は相当な熟練技が必要と感じました。私のような素人では出来ない作業です。 |
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ウーファー取り外し専用器具。バール状の物をMIDレンジ穴から差し、てこの力を利用して前へ押し出す工具です。 |
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ウーファーの固定はエンクロージャーに入っているサポートジョイントと呼ばれる軸にウーファー軸(バスサポートバレル)を挟みこむことで固定しています。まずは挟みこみを緩めるためサポートジョイントに付いているネジを外します。 |
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さっきのバールのようなもので引っ掛け、押し出していますが・・・長年くっついていた為、全くウーファーが外れません。格闘すること30分。結局ウーファーのコーンを切ってフレームを全員で引っ張る事になりました。言うなれば帝王切開でしょうか。 |
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ああ!!無残にもカッターでスパっとエッジカット→アルミコーンを剥離。このウーファー1発で修理代が500,000円!マランツの方は躊躇いなく切っていましたが、私のココロはズタズタに切り裂かれました。そうこう見ているうちにカット作業は終わってしまい写真を撮りそこねました。 |
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ウーファーのボイスコイルとフレーム、ダンパー部。これを見ることが出来るのは恐らくB&Wのユニット製造者かサービスマンのみ。貴重な写真だと思います。 |
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真ん中に見えるのがサポートジョイント。ここにウーファー軸が刺さっています。軸上部の切れ込みを絞ることにより固定されています。ノーチラスのユニットはほとんどフローティングした固定方法ですが、ウーファーは前面の縁ゴムリングとサポートジョイントの2点で固定しています。何故ならばウーファーのマグネットが相当重いためゴムリングだけの固定は難しいのです。しかも250W以上のパワーアンプによる強力な振動では直ぐに外れてしまう為この様な仕様になっているのだと思います。 |
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いよいよ引きぬき作業。結線を外し3人+固定人1人の4人での作業です。相当食い込んでいる様です。せーの! |
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やっとウーファーが外れました。結局この作業までで既に3時間経過。おつかれさまです。しかし作業としてはまだ中盤。今度はウーファーの取り付けでさらなる試練が待ち受けている・・・ |
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ノーチラス本体に付いている軸(サポートジョイント)。この部分とウーファー外周をゴムリングで支えています。 |
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巨大なマグネット。おおよそ15kgくらいあったと思います。 |
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いよいよ新品ウーファーの取付け作業開始。指にワセリンを盛り、本体の内周に塗り込んでいきます。これは白いゴムリングの滑りを良くするためでいわば潤滑油の役割になります。 |
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慎重な作業。3人がかりで結線、マウントしていきます。 |
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これが大変でした。なかなかウーファーがハマらない。結局4人で押し込み、私はノーチラスが動かないように後ろで踏ん張っていました。合計5人での大仕事でした。結局この作業に2時間かかりました。 |
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ようやくウーファーが取り付きました。上手くハマらず出し入れすること数回。本当に大変な作業であることと、ウーファー交換は人数が必要です。あと、本当に奥まではめ込めたかはサービスマンの感覚によるところが大きい様です。何事も感覚が大事という事を感じました。 |
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外したウーファー本体。バスサポートバレルは新品ウーファーの方に移植しています。左側のウーファーはコーン紙が取れずクシャクシャにしてフレームへ手を入れました。なんとも痛ましいです。 |
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ウーファーのボイスコイルボビン、ギャップの拡大。意外にもサビは有りません。ギャップはやや広めのクリアランスが取られています。ボイスコイルからの線は接触しないようにコーキングされ余分な振動を最小限に抑えているのがわかります。ダンパーはこの色からするとお得意のケブラー素材でしょうか(わかりませんが) |
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今回で最終回となったノーチラス解体新書。随分と勉強になりました。今回を通じて感じたことは ・古いノーチラスはミッドレンジとミッドハイが歪みやすく、ある程度の間隔で修理が必要となる場合がある。 ・ユニットの故障だけでなく内部コネクターのバネ折れが原因で音が出ていないケースが有る。 ・ユニット修理の前にチャンネルディバイダー修理が事前に必要。 ・ウーファーの故障は極めて少ないが、もし修理となった場合は相当な覚悟が必要。 ・ノーチラスには製造時期でいろいろな仕様があり、正確に本国からユニット取寄せしないとマウント出来ない。本体のシリアルナンバーは最重要項目である。 ・ユニット交換後の音チェックはスイープ信号(チェックCD等)で何度も行う必要がある。 ハイファイ堂はノーチラスの修理を承ります。上手く空間が出ない、どうも歪っぽい、凹んでいるユニットの交換を頼みたい、等のご相談を受け付けます。 詳しくは大須本店 越濱(こしはま)までご相談下さい。電話052-249-2600です。 |