最近、車を買いました。 スポーツカーではないですがマニュアル(MT)車です。 最近は新車ではめっきり少なくなったMT車ですが、スポーツカーでなくともクラッチ操作とシフト操作は新鮮で愉しいです。それに何か妙な愛着が湧いてきます。これはAT車にはないなにか特別なもののように感じます。 ふとオーディオのことを考えてみました。レコードを手動でかけていた時代からセミオート、フルオートタイプが増え、CDの登場で一度は廃れ、最近また手動タイプが復活してきたレコードプレーヤー。 車もいまやAT車全盛、数千万円するスーパーカーだってAT限定免許で乗れてしまう時代。MT車の復活は…してきているとは言うもののまだまだ至らない様です。 今は「余計な手間を惜しむ」、早くて無駄の少ないエコで便利な時代ですが、そんな余計な手間を掛けるからこそものに愛着を持って永く接していけるんだよな、と私はオーディオの分野からいつも考えてしまいます。 そんな話はさておき、今回はアンプのウッドキャビネットのお手軽メンテナンスを紹介します。 |
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これはラックスマンCL-35系のキャビネット。キャビネット自体にキズは少ないのですが特に天板が白っぽくくすんでいます。60年代末から70年代前半のアンプによく見かける状態です。 今回はこのキャビネットにハリ?と潤いを与えてみます。 |
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用意するのは、 ・ラッカースプレー(クリア/つや消しクリアの2種類、クリアは2本以上あると安心) ・紙ヤスリ(空研ぎ320番/水研ぎ600番の2種類) ・キズ補修ペン(ウォールナット/オークの2種類) ・クロス(乾拭き用/水拭き用の2種類) ・ヘアードライヤー ・水入りバケツ ※塗装を施すので換気の良い所で、汚れても良い場所で行って下さい。 |
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まずはキャビネットを紙ヤスリ(空研ぎ320番)で軽く削っていきます。ここで力を込めてガシガシ削ると突き板があっという間に剥がれて地の木部が出てしまいます。 そうなっては元も子もないのであくまで軽く、削るというよりも擦る感覚で行います。削る方向は突き板の目に沿った方向に行って下さい。 |
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面全体をまんべんなく削ってこんな感じにします。あくまで軽い力で、表面に白い粉が吹いたような感じです。これを両側面、前面にも行っていきます。 これらの作業を行う目的はキャビネットの表面を平滑にするため。凹凸があると仕上がり後、光にあてたときに美しく反射しなくなってしまいます。なので手触りを確認しながら削っていくようにしてください。 |
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前面の四隅は突き板同士の接合面で削る方向を変えて下さい。ここで向きを無視して削ると仕上がり時に四隅の角がキレイに立たなくなる可能性があります。 |
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削った直後の状態。 こんなあられもない姿になってしまってクリアのラッカースプレーだけでなんとかなるのか?? と思うかもしれません。 ちなみにここでキャビネット全体を水拭きすると…、 |
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あら不思議、水で表面を濡らすと綺麗な茶色が出てきました。 ちなみに乾くとまた再び白っぽい粉を吹いたような状態になります。 クリアスプレーを吹き付ける目的は常にこの水で濡れたような状態を作ってやることです。 濡れたキャビネットを乾いたクロスで拭き上げ、ドライヤーで乾かしたら次の工程、キャビネットをクリアラッカーで吹き付けていきます。 |
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吹き付けは削る際と同じように木目に沿って行っていきます。 スプレーの先端にはノズルが付いていて、この向きを変えることで上下に、もしくは左右にスプレーが広がります。大概のスプレーの初期状態は横方向に動かして吹き付けられる(上下にスプレーが広がる)ようになっているので、縦方向に吹き付けたい場合はノズルを回して左右に広がるように調整して下さい。 |
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左の写真は吹き付け前で端の部分が白く色が落ちたような状態になっています。ほかの部分もまだらに白くくすんでます。 右の写真はラッカー吹き付け後。白い部分はまるで無かったかのように他の部分と同化しています。まだらになっていた部分もまったく判らないくらいにキレイになります。 |
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クリアー塗装をした後、少し時間を置いてもう一度クリアー塗装を施したところ。そこそこにテカテカしていますが手触りはなんとザラザラ! このざらざらをなんとかするため、再びヤスリで表面を擦ります。 |
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ここで行うのは空研ぎではなく水研ぎになります。紙ヤスリ(水研ぎ600番)で十分に水をつけながら、ここでも手触りで表面を確認しながら削るのではなく擦る、いやもっと言うと「撫でる」感覚で擦って?いきます。 ほかの面も同様に作業が行えたら乾いたタオルで拭き上げ、ドライヤーで乾かします。 |
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その後、再びラッカー塗装を施し、再び水研ぎ、乾かし、また再びラッカー塗装を施します。結構面倒ですがコレをやるのとやらないのとで表面の手触りが大きく変わります。 上記の研磨と吹き付けを繰り返すと写真のような感じになります。赤みが前面に出てきて結構ゴージャスな感じになりました。 さて、この状態になったところで次に行うのはキズ補修。擦り傷等で色が落ちた部分をキズ補修ペンで補色していきます。 |
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ここではキャビネット色にあわせて主にウォールナット(焦げ茶)で着色します。色を入れたら少し時間をおいた後、親指の腹の部分で軽く擦ってみます。 すると右の写真のように周りの部分の色と見事に同化しました。 色んな段階で補色を試してみましたがこの、「キャビネット艶あり状態」の時に行うのが一番色が馴染み易い様でした。 |
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着色補修が終わったら最後の工程、つや消しクリアの塗装。これは1回の吹き付けでOKです。これで華飾気味?のキャビに抑えが効いて一転、上質なキャビネットに変化します。 |
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黒い木目部分が少し落ち着いて表面がとろっとした滑らかで柔らかな感じに仕上がります。光の反射具合もバキーンと反射させてギラギラしているのでなく、光を吸収して内側からじんわりと放出しているような感じ。 ここまでの工程で1.5時間くらいというところでしょうか。表面のざらつきには目を瞑り、時短を目指すなら水研磨をやらず塗装だけで半分以下の時間で行えてしまいます。 お持ちのキャビネットで同様の状態になっている方がいらっしゃれば是非お試し下さい。 大須商品部 小島 陽介 |