レコードプレーヤーの初期セッティング術 その1 大須本店 越濱 靖人 |
|
最近のアナログブームを受け、レコードプレーヤーを購入するお客様が増えています。そこで今回から数回にわたりプレーヤーの調整方法を書いてみようと思います。 そもそも、なぜ調整が必要なのでしょうか? レコード再生の原理から実際に針がレコードに接触し信号を読み取ります。その際に適正な重さ・角度・位置で使用しないと正しくレコード信号を読み取れません。CDプレーヤーは非接触でレーザー信号を読み取っている為コンピューターが自動調整しています。しかしアナログレコードは全て手動調整です。当然ながらコンピューターがやってくれませんので自分で調整する必要があります。その為レコード再生には多少の知識と慣れが必要です。 CDプレーヤーはCDを入れて再生しかありませんが、レコードは苦労して調整すれば良い音に育てる事ができる、正に「打てば響く」オーディオです。私はこの苦労がレコード再生の楽しみだと思っています。 |
|
1.本体を水平にする。 レコードプレーヤーは針先にわずか1.0〜3.0gほどの圧しか掛けない、非常に繊細な再生装置です。故に本体が斜めになっていると適正な測定が出来ません。その為ある程度、本体の水平は必要です。意外にもテーブルやラックの水平が出ていない場合がありますので、レコードプレーヤーの4点足を上下し水平を出して下さい。水準器を使うことをお勧めします。 |
|
2.回転の確認 33回転、45回転の回転数を確認して下さい。速すぎたり遅すぎたりするとピッチ(音程の高い低い)が変わってしまい、音楽そのものの良さを損なってしまいます。回転数の確認にはストロボスコープを使います。写真にある通りストロボ縞は4本あり60Hz/33回転、50Hz/33回転、60Hz/45回転、50Hz/45回転と分かれています。静岡・長野・新潟を境に関東圏は50Hz、中部・関西地域は60Hzの所を見ます。スコープ縞が止まって見えれば適正回転数です。光源は白熱球が好ましいですが、古い蛍光灯でも大丈夫です。最近のLED電球やインバーター式蛍光灯では残念ながら縞を見る事が出来ません。最近では写真の様なストロボ専用光源が販売されていますので、この方法が一番確実です。ストロボ縞が時計回りに流れて行った場合、速すぎになります。逆に反時計回りに流れる場合は回転が遅いです。 |
|
3.針圧について カートリッジ(レコード針)には「適正針圧」があります。針圧をかける事で針がレコード溝に落ちます。適正針圧はカートリッジの構造や作りにより違いますが説明書もしくはインターネットのサイトにも概ね出ていますので参考にして下さい。正しい圧をかける事でより良い音を引き出す事が可能です。適正針圧より高い針圧をかけた場合、カートリッジの腹を擦ってしまったり音が鈍く重くなります。逆に針圧が軽い場合は音が歪んでしまいちゃんとした音になりません。わずかに軽い場合はしつこくない軽やかな音質になり良い音になる場合もありますが、軽すぎると歪みます。正しい測定をする為デジタル針圧計をご紹介します。アームについている目盛りで針圧をかけたつもりが左下の写真の様に0.42gもオーバーしている場合があります(写真で使用しているDENON DL-103カートリッジの適正針圧は2.5gです)針圧計を使うと一目瞭然です。 ※本来であればここで針圧に関わるゼロバランスの取り方、適正針圧の掛け方を特集したいのですが長くなってしまいますので割愛します。次回の特集に書きたいと思います。 |
|
4.アームの高さ調整 意外に軽視されがちなアームの高さ調整。これも水平が基本です。これをバーティカルアングルと言います。ここも音質に大きく響きますので正しく合わせて下さい。まずプレーヤーにレコード盤を乗せ、レコード針を落として下さい。この状態でアームが水平になる様調整します。右下の写真の様にモノサシかゲージがあると測りやすいです。 |
|
カートリッジ側の高さ(左)と軸側の高さ(右) ※アーム水平が基本ですが、少し高くすることを「ケツ上げ」と言い、好みにより上げ目に使っている方もいます。若干高域が冴える傾向にあり、あえてケツ上げする場合もあります。逆にケツ下げの場合、高域が曇る傾向があります。あくまでも水平を基準にご自分で確かめてみて下さい。 |
|
5.カートリッジの傾きについて 音が入っている溝はV字型に掘られている為、レコード針は垂直に針が降りていることが理想です。もし傾きがある場合は音像や定位、輪郭がぼける傾向にあります。左下の写真はやや傾いた状態です。DL-103カートリッジ前面にある白線とレコード面に写った白線を比較します。傾いている場合は「く」の字のように真っ直ぐなりません。右下の写真の様に真っ直ぐになれば垂直に降りていることを示しています。 |
|
6.オーバーハングについて 簡単に言うと「カートリッジの前後ズレ」になります。レコードプレーヤーのトーンアームは機器によりアームの長さが異なる為、適当にカートリッジを付けただけでは正しい位置に針先が降りません。正確な位置に調整するのをオーバーハング調整と言います。レコードは内周になるにつれ再生環境が厳しくなってきます。それは外周に比べ内周は円の弧が小さくなり円の直線が取りづらくなる事と、1周あたりの距離が短くなり情報の密度が高くなる為です。その様な厳しい条件の中で一番うまく再生するには・・・円の弧の一番平らな溝、直線場所(弧の頂点)に対して平行に針を落とす事でトラッキングエラー(読み取り間違い)の少ない再生が出来ます。その調整を今回はSMEのオーバーハングゲージでやってみたいと思います。 SMEオーバーハングゲージは簡単に言うと「真上から見た時にゲージ黒線とカートリッジシェルを平行にする」ものです。使い方はカートリッジ針先をゲージ矢印のポイントに降ろし、真上から見ます。右下の写真はちょうど平行になった、オーバーハングが合っている状態です。 |
|
下の写真はダメな例です。左下写真はオーバーハングが短い状態です。この場合カートリッジをもっと前へ出して下さい。右下写真はカートリッジが前へ出過ぎた状態です。この場合はカートリッジをもっと後方へ移動させて下さい。オーバーハングゲージは簡単に自作する事が出来ます。以前私が書いたメルマガを参照下さい。http://www.hifido.co.jp/merumaga/osu/080201/ |
|
上記の調整が出来れば、ひとまず再生には問題ないレベルになると思います。是非調整にチャレンジ頂き、良い音でレコードを楽しんで下さい。 次回はアームの基本動作・針圧の調整の仕方を特集します。 |