最近、通勤時に使用しているポータブルオーディオ機器が大幅にモデルチェンジしたのでその紹介をしたいと思います。ここまでガラリと変えたのは16年ぶりくらいでしょうか、一気に流行の最先端まで到達しました。 |
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SONY NW-WM1Z オープン価格(販売価格300,000円前後) |
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再びオーディオ熱が高まるきっかけになったのは昨年の秋に発売されたSONYのフラグシップウォークマン、NW-WM1シリーズでした。その中でも上位機種にあたるNW-WM1Zは価格300,000円というプライスタグに衝撃を受けました。歴代ウォークマンのフラグシップを使い続けている以上、手にしないわけにはいかず、「ポチッ」としてしまいました。それにしてもウォークマンが30万というのは…あとからとんでもない買い物をしてしまったことに気づいた時には…手元に届いた後、という…。 |
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ETYMOTIC RESEARCH ER4SR オープン価格(販売価格〜約49,400円) |
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もう1つのきっかけは16年来愛用しているER-4Sに遂に新型が登場したことです。25年近くも現役だったモデルに新型が登場するとあれば見過ごすわけにはいかないので…、ER4SRも「ポチッ」としてしまいました。 |
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今回のモデルからケーブルコネクターがMMCXタイプへ。汎用性が高いコネクターで今のトレンドにようやく追いついた感じです。これならかねてから興味のあったリケーブルで楽しめるかも…とほくそ笑んでいたのですが…、実際はそんなに甘くはなかった…。 |
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(左上)ER4SR、(右下)ER-4S |
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音質は、聴いた瞬間にER-4の音だなと直感しました。フラットバランスで定位のしっかりした音作り。それに加え全体の解像度が大幅に高まり、音に奥行きが生まれました。ER4SRの、鮮明で3次元的な音を聴いてしまうとER-4Sの音が懐古的な音に聞こえてしまうのは否めない所。 |
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それでも依然としてER-4Sがすばらしいと感じるところもありました。それは、 1.中音域に厚みがありしっかりとした質感を伴っていること 2.全体的に暖かみのある音質 特に中音に関してはER4SRが奥行き方向に音を伸ばしたような感じでER-4Sより厚み、質感ともにやや希薄気味に感じます。 ER-4シリーズ、思えば大手代理店の完実電気さんがこの取扱いを始めたのが2005年か2006年頃。実は本国では1991年頃から販売されているという驚きの長寿モデル。ER-4Sを讃えて(揶揄して?)「老兵」と呼ばれることがありますが「老兵は死なず」(使いどころが違う…?)、時代を超えて素晴らしい音質を誇るイヤホンであることは間違いないです。 |
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この中音の不満を解消させるため、今回のウォークマンの目玉機能のひとつであるバランス出力機能を使ってみようと思いました。 なお、ここでは「バランス出力」や「バランス接続」をはじめとする電気的、回路上の説明は割愛します(説明まで含めると本来の主旨が見えなくなりかねないので…)。他のイヤホン、ヘッドホンに熱心な方々のブログを見ていただければ非常に分かりやすく書いてあります。興味がありましたらそちらをご覧になってみてください。 |
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(左)ER-4Sのプラグと内部配線(3極)、(右)後述するケーブルプラグ(4極) |
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ER4SRをバランス接続させるためにはいくつかハードルがあります。まずはER4SRの純正イヤホンケーブルですがプラグが一般的な3極(芯線が3本)仕様になっています。前提としてバランス接続させるためにはケーブル側の芯線が4本による4極仕様のプラグに交換しなければなりません。ところが純正ケーブル側の芯線は3本しかないため結線出来ません。これはグラウンド側の配線が途中で1本にまとまってしまっているためです。ER4SRでは試していませんがER-4Sの交換ケーブルがいくつかあるので1本切ってみてみたとことろ、やはり3芯仕様でした(グラウンドは上のER-4Sのプラグ写真でいう黒いケーブル)。 対策はいくつかあるのですが今回は早くて安全で確実な、イヤホンケーブルを4芯仕様の専用ケーブルに交換(リケーブル)してみることにしました。 しかしここで(前述したように)大きな問題が…。 |
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ER4SRのユニット側のMMCXコネクタ周りを見ると1ミリ弱ほどの「堀」がある、かなり特殊な形状になっています。MMCX仕様のリケーブルは数多く発売されていますがこれに合うプラグ形状のケーブルは極めて少ない上にコネクタからケーブル部分のまでの形状がL字かJ字形状のように曲がったタイプでないとなりません(ストレート形状だとかな〜り不恰好になるので… ―6(- -;)∂― )。 ようやく採用してくれた待望のMMCX端子でしたがしかし新型になっても相変わらず仕様にはうるさいようで…。 |
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数あるMMCXケーブルから好みのケーブルを探す…のではなくどれが取り付けできるケーブルなのかを探す日々。そのなかで取り付け具合、見た目、品質が備わっているケーブルを見つけました。 |
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Final Audio Design OFCシルバーコートケーブル(MMCX/L字タイプ/φ2.5mmプラグ) 定価26,330円 |
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もともと同社のイヤホン、F7200というモデルに採用されている同タイプのケーブルですがこのF7200はER4SRと同様、ユニット形状がストレートな円筒タイプなので取り付け後の見た目はかなり自然。しかもER4SRのコネクタ部分にある堀の一部に入っている切れ込みが奇しくもコネクタ部分の干渉を解消してくれるのに一役買ってくれるという、うれしい偶然。 |
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さて、ケーブルは決まったので次はプレーヤーへ挿すプラグ部分を変えていきます。実はこのFinalのケーブルですがプラグがφ2.5mmの4極仕様なのでこのプラグが装着できるφ2.5mmのバランス出力を備えたプレーヤーがあればそのままバランス接続が可能なんですが…。 NW-WM1Zのバランス端子は新しいφ4.4mmタイプなのでプラグ手前で切断、φ4.4mmプラグに交換します。 |
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使用したプラグは、 日本ディックス PENTACONN(ペンタコン)φ4.4mmバランス接続プラグ OFC仕様 定価9,800円 同社の廉価版(…でも定価5,800円!)もあったのですがケーブルもこだわったのでここまできたらプラグにもこだわってやろうということで…。 このφ4.4mmプラグですが実は絶縁リングが4つある5極仕様になっています。当然結線はφ4.4mmプラグに準じた位置(ピンアサイン)に結線してやる必要がありますがケーブルの芯線は4本なので4箇所の結線でOKです(結線しない1極分は一番根元のグラウンド)。 プラグ交換は業者にお願いしました。手元に工具があるにはあるのですが目的のためとはいえ、25,000円もする新品ケーブルを何のためらいもなく斬り落とせるほど肝が据わってないので…。 |
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ER4SR OFC φ4.4mmバランス仕様、完成。 イヤホン、ケーブル、プラグ、諸々で総額85,000円ほど。 本体の筐体がOFC、プラグのシェル部分もOFC、イヤホンケーブルもOFCとOFC尽くしの仕様。OFC(無酸素銅)様様…。 |
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(左下)ER4SR純正φ3.5mmアンバランスケーブル、(右上)オリジナルφ4.4mmバランスケーブル |
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やはり期待通り、中音域の質感が高まりました。そしてなにより、全体を通して“音が立って”ます。 「音が立つ」というのは私独特の言い回しなんでしょうか、イヤホンではあまり表現しないのですがスピーカーを通して聴く音には時々そういう表現が合うシステムに出会うときがあります。音量を上げていっても音崩れせず力強い安定した音を出しているのを個人的に「音が立っている」と表現してます。こういう音って何もスピーカーの中心で聴かなくても傍から聴いていても良い音がするもので別の言葉で言えば「存在感がある音」といえばいいでしょうか、お客様がいらっしゃればちょっとした試聴会になります。 イヤホンでもこういう音が出るようになったのか…と、感無量…。 |
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因みに比較視聴時のウォークマン側のゲインはバランス、アンバランス共に『ハイゲイン』に設定。『ローゲイン』同士の比較では差が出にくかったのですが『ハイゲイン』にした途端、特にバランス出力側の音質が(良い方向に)激変。ボーカルがより浮き出て聞こえ、定位感がより鮮明になります。と言うわけで、個人的にはイヤホン、ヘッドホンの低能率、高能率に関係無く『ハイゲイン』に設定するのがオススメです。 |
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良いとこずくめのリケーブル(によるバランス接続)ですがひとつ注意点があります。リケーブル後の装着感はオリジナル時と比べ若干変化します。私の場合、おろしたてのイヤチップを使用すると左耳側で隙間ができて密閉度が不足し、低音がスカスカになる現象が起きました。対策として使い込んで柔らかくなったイヤチップに取り替えて気密性を確保しています。あと、これは個人的な対策ですがケーブルを耳掛けにしてイヤホンを気持ち上に引き上げたような状態で装着する事で更に気密性が高まりました。 |
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プラグ4種類。左から、 φ6.35mm(3極)、φ4.4mm(5極)、φ3.5mm(3極)、φ2.5mm(4極) |
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いまさらになりますが、ケーブルの交換、およびプラグ交換は自己責任で行なってください。また、今回のようなプラグ交換を始めとするカスタム作業は改造扱いとなるため、一切の保証が無い事(改造をされる業者から同意書にサインを求められます)も併せてご了承ください。 ※当店では上記のカスタム依頼は承っていません。 大須商品部 小島 陽介 |