「オーディオ風味 名曲アラカルト」 2006-3-10 音迷人 10.ヘンデル/ハープ協奏曲とモーツァルト/フルートとハープの為の協奏曲 |
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◆ヘンデル/ハープ協奏曲 ゲオルグ・フリードリッヒ・ヘンデル(1685〜1759)はドイツ生まれの作曲家です。しかしモーツアルト以前、この方も良く移動?されたようで、Vnで身を立てながら若い頃はイタリアでバロック音楽の勉強、25歳ぐらいからはロンドンに渡り、後にイギリスで市民権を得て、ロンドンで没しました。どなたもご存知の「ハーレルヤ、ハーレルヤ」のオラトリオ「メサイヤ」、水上の音楽、王宮の花火の音楽などが有名です。またオルガンの名手でもありオルガン協奏曲も残しています。 このハープ協奏曲はオルガン協奏曲から持ってきたと言われていますが、私はオルガンの方を聴いた事がありません。ハープはその響きが美しく皆さんも好きだと思いますが、私も大好きな楽器の一つです。 ヘンデル/ハープ協奏曲のお奨め盤は、吉野直子/フィルハーモニック・ヴィルトーゾ・ベルリン/ソニー盤です。 |
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ではこの曲のオーディオチェックに入りましょう。 第1楽章アンダンテ・アレグロ:歯切れの良いテーマーがハープとオケで初めから奏されます。ここで特徴的なのはオケの音色です。いかにも古めかしくも雅な品の良い響きです。これは実はフルートとVn弦楽がユニゾンで弾かれた効果なのです。このお奨め盤では13人の弦楽群と2本のフルートであわせています。ソロの吉野さんのソフトながらぼやけないタッチが曲の楽しさを倍増しています。そんな中でもハープ弦へのタッチ音なども聴き落とさないで下さい。コントラバスは1丁なので濁りの無い緩めの低音が楽しめます。オケ全体はあくまでも澄んでいます。 2楽章ラルゲット:オケはほとんど弾かれませんからじっくりハープを聴けます。ハープの響き具合が音階で異なります。低音部、中音部、高音部と聞分けて味わってください。指の腹で弾く為音の出かたが爪や撥で弾くのと異なります。「うプーン」とか「むコチン」言うように僅かに頭がくぐもります。私の私見ですが、ハープの古典曲では後述でチェックしたほど音域は広くないと思います。恐らく基音で80〜2000Hzくらいでしょう。ですから周波数的な問題ではなく、音の出方や「らしさ」をチェックすべきでしょうね。それと弾く場所は弦の中央部に近いので割りと高調波が少なく単純な響き(サイン波とまで言いませんが)です。それと弦を止めないと低い音ほど長く余韻を引きますので、音が重なって豊かに聴こえるのです。4分半過ぎから始まるカデンツァはハープの魅力が一杯詰まっています。只ただ豊かで美しく、それも弾かれた音は分離良く再生されるべきです。 3楽章アレグロ・モデラート:ここもオケは少なくメヌエット風に進行します。オケが合わせる時は強奏の時が多いので、混濁しないでフルートと合わさった華麗な響きが出ることです。LPでは時にハープのフォルテで潰れることがあります。 お奨め盤は更に他の素晴らしいハープ曲が聴けます。 ところで在職中、会社の受付の賢いS嬢が興味があるとのことでしたので、このハープ協奏曲のCDを貸したことを思い出しました。私は講釈を垂れたかと思いますが、ごく短くも的確な感想をメモで知らせてくれましたので、CDケースにはさんで大切に保存しておきました。それは 第一楽章:芽吹く様な、水のゆるやかな流れと、きらめき、生命感があふれている。 第二楽章:まるでオルゴール。一瞬の流れにのってわだちの様な溝へ深まってゆく悲哀にくれる魂を感じる。 第三楽章:転じてメヌエット風で、流転の末落ち着く・・ 何と初々しい感想では有りませんか!私なんぞ100回聴いても出てきませんよ。 今でも音迷人のことを[想って]音楽を楽しんでいるでしょう。 えぇっ〜! ◆詳細は書きませんが更に有名なハープ音楽でこれまた素晴らしいのが、モーツアルトの「フルートとハープの為の協奏曲」です。パリにて、フルート公爵とそのハープ令嬢のために作曲されたそうです。正に「優雅」そのものの曲で、1楽章出だしから「ギャラント・らったったった、ギャラント・らったったった」と聴こえます。 いずれにせよハープの煌びやかさ、中高音部の音の粒立ち、低音の締まった胴鳴りなどの魅力がフルートの美音と相乗して確認できます。 |
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ハープについて一寸調べましたのでポイントをまとめて見ましょう。 *共鳴胴に弦を張り、指ではじいてかき鳴らす楽器です。 *楽器のタイプは地域によっていろいろですが、歴史も紀元前からと古くから有ります。古代エジプト壁画(BC1400位)に弓形のハープが描かれているそうです。日本には中国から渡来したものが正倉院にあるとか聞きました。 *コンサートで使われるハープは弦を沢山張るので張力に耐えねば成りません。こう書くと皆さんお解かりでしょう?ピアノのフレームと弦のイメージです。と言うことで、19世紀初め、開発改善したのはやはりピアノを製作していたエラール氏だそうです。従ってこの稿の2曲はそれ以前ですから、少々違う響きだったかも知れません。(下スケッチと比較してください) *コンサートハープの弦は47本ぐらいだそうです。ハ長調のドつまりC系弦は赤、ファつまりF系には黒や紺の色を付けて演奏者をガイドしています。47弦で基本チューニングの音域は基音で33HzのCから3136HzのGのようです。ピアノより少々狭いと言う驚異的なものです。 ハープのソロなど再生の難しさは音域が広いこと、弾いたとき開放弦として手のひらで止めるまで鳴り続けるので、ほかを必死で弾いてる時は音が出ています。鳴っているところにまた指が行き雑音を出すこともあります。80〜200Hz位が結構野放図に鳴る上、スピーカー周りや室内の共振物が多い範囲ですので、音が濁り、ブーミーになる傾向があります。注意して聞いてみてください。 |
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*ハープの響胴と支柱の根元がハープのベースですがそこに2段踏み込めるペダルが7つあるのだそうです。恐らくA系のペダル、B系のペダルC・・Gと成っていてペダル踏み込み位置0-1-2があり基準を1とすると0では半音低く♭、2では半音高く♯なるのでしょう。これで総て?の弦の調子が出せましょう。あの優美なハープの中は、恐らく支柱を通るペダルのリンクと上部フレームの張力変更メカ(回転駒で弦長を変える筈)がびっしり詰まっていて、ロボコップみたいなモノですね。 ハーピストは頭の中では音階とペダルの相関が目まぐるしく読み解かれ、正にクロカンドライバーのようにギアチェンジをしながら走り抜けるのですね!涼しげに、可愛い顔して凄い! *コンサートハープは指の腹で弾きます。指はカチカチに成るはず。(ハーピストとは喧嘩しないように) |
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おまけ:◆珍しい資料を見つけました。1770年代の楽器工房の様子です。(下のスケッチ)上記の2曲はやはりスケッチにあるような小ぶりでペダルの無いハープで演奏されたのですね。 右端から*ハープの響胴、奥にパイプオルガンやファゴット *ハープネック穴加工 *ハープの仕上げやラッパ(ナチュラルトランペット?) *ビオラの仕上げ *上部に吊り下げて乾燥 *中央手前がハーディーガーディー(手で弓代わりの円盤を回転させ大正琴のように或いはキーボード風に音階をとりながら弦を押し付けて鳴らす楽器と推測)とケースだそうです。モーツアルトの舞曲?に同名の曲があり、キーコーギーコー、ハーディーガーディーと聴こえます。 |
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◆「アルパ」は爪弾きハープです。それにスタンドをつけて立って演奏することもあるんだそうです。「アルパ」はインディアンハープとも言われ中南米パラグァイ辺りが本場なのでしょう。私の愛聴盤をご紹介しておきますと上松 美香さんのアルパで「ポエシーア」と言うタイトル(キング)です。日本の聴きなれた歌を中心に編曲、演奏しています。(写真下)ご両親の影響で大変グローバルな活動をされているようです。音質は爪で弾く為か音がハープのようにくぐもらず、エッジのはっきりした陽気な響きを持っています。一般にペダルは無くテコや指につけた道具(爪状)でこじって半音上げるとか聞きました。 録音はサポートしている打楽器やチェロを含め割りとオンマイクでリアルな最優秀録音です。「デジタルはどうも・・」と言う方がおられますが、録音提供の観点からすると問題は全然ありません。貴方のシステムから癖の無い伸びやかな明るい響きが出るかどうかが試されます。 ところでよく「ハイスピードな音」と言う表現を聴きますが未だにどういうことか解りません。「トランジェント(過渡特性)が良い」と言うのが既にあるので解らないのです。どなたか教えてください!(-_-;) 下のジャケット写真(裏面)ではアルパは写真構成上横に倒されていますが、怒られます。コンサートハープより、少々小ぶりでペダルが無く金属フレームもなさそうです。軽いので響きも明るいのでしょう。弦を張るのはギターと同じようです。誰ですバスレフタイプだなんていう方は! |
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あと、膝に抱いて弾けるアイリッシュハープやアポロンが抱える弓形でない水瓶型ハープを覚えておけばハープ好きな女の子とデートできますよ!そうアポロンはギリシャ神話の武芸と音楽の神ですよ。 「あ〜らオジサマ!今はハーブの方が流行っているんですよ」だと (写真はミューズの一人が抱くハープ) |