「オーディオ風味 名曲アラカルト」 2006-4-7 音迷人 14.三味線/津軽三味線/三味線じょんから、即興「岩木]など 大変厳しい環境に鍛えられた音楽いや情念の呻きでしょうか。 現在広く受け入れられるまでのすざましい状況は、私がこの項で軽々しく語れるものではなく、失礼に当たるので、是非皆さん各人でひも解いてください。(たまには宿題です!) |
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先週西洋の撥音楽器ギターを取り上げたので、今週は日本の素晴らしい撥音楽器「三味線」を取り上げましょう。 私が小さい頃は与えられる遊びなど少なく、ラジオを聴くのが家庭の日常的「文化」でした。父親の良く聴いていた落語、講談、浪曲はひとりでに耳に入ってきました。母や姉は進駐軍の放送やバタ臭い音楽でした。広沢虎造、春日井梅鴬氏などの浪曲をそれとなく聴きましたが、何時も私の耳が追っていたのは三味線の調子よさです。三味線の前弾きがあって、おもむろに浪曲師が唸りだし、物語の情景、台詞などに応じ三味がすばやく反応して盛り上げます。大袈裟に言いますと、たった一丁でも聴き手にとってオペラのオケに相当する昂ぶりをくれます。正に三味線の第一義的な役割を存分に果たしているわけです。先週のイェペスさんがギター一つで映画を支えたのと通じるのでしょう。何処かで聞いた「三味線は唄なり」と言うことでしょうか。これは民謡で言うのでしょうが、浪曲の方がより役割が重く活躍しているように思うのです。如何でしょうか?同じ高い音を続けたかと思うと、しゃくる様に回してから落とし、また徐々に大きくし(正にロッシーニのクレッシェンド媚薬)打ち止めたりと、とにかく「調子」が良いのです。 |
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かなり後になって、津軽三味線を聴いたその時、浪曲DNAの私の中に更に凄い感動が走ったのです。この強い音色、しかし繊細な撥返し、激しく優しく繰り返すリズム、即興的な歌い方、日本にこんな音楽があったのかと!バッハみたいなリズムもあったり、ジャズの様だしブルースもあると感じました。 現実は洋楽で手一杯だったので深く知ることは無かったのですが、高橋竹山師の特集CDだけはしっかり求めていました。 主に津軽で厳しい「環境下の人々」が生きる術として関わった唄を含む三味線音楽全般を「津軽三味線」と言うのだそうで、ハードの三味線を呼ぶ名称ではないのでしょう。 |
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三味線はシルクロードを通って中国にわたった三弦が沖縄に入り、爪弾きの三線(さんしん)または「蛇皮線」となり日本中に広がりながら進化したのでしょう。細棹、中棹、太棹と種類があるそうで、用途により使い分けられているようです。津軽三味線では厳しい自然や、状況、情念を表わす為に時に荒々しくなるので、当然音のダイナミックレンジが広くなり、太棹が合うことになります。更に太く、胴は大きくなっているようです。このように丈夫でなければならないので皮は猫ではなく犬だそうです。 先週のギターの時と同様調べて見ました。三味線が無いので下手な絵ですみません。でも撥なんか感じが出ているでしょう?これぐらい書ければ「撥?が当たらない」と・・ |
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三味線は本調子とか二上がり、三下がりとか言ってるのを聞いた事があります。 弦番 太さ 基音周波数(あやしい!) 材質 一の糸 :太 294Hz〜 絹 二の糸 :中 392Hz〜 絹 三の糸 :細 568Hz〜2200Hz? ナイロン 基本周波数は確証ありません。洋楽と違ってピアノ音階表(メルマガ162号1/6付け)のような対応が判明しませんでした。(本調子でレ、ソ、上レ、らしい・・・)聴感的には私の装置でウファーを切っても三味の音質にあまり変化が無いので、まあ下は250Hz位かなとも思います。ご存知の方は是非ハイファイ堂に教えてください。 三の糸の上は最高音つぼ位置と三味の寸法比から求めました。(開放弦の2オクターブ上で約4倍) 津軽三味線はかなり即興的だし、歌があるときは歌い手のキーに合わせて調子をとるようなので、西洋楽器ほど厳密ではないのかも知れません。いずれにせよ音迷人の邦楽に対する無知がされけ出された結果で、超参考どまりで勘弁してください。上記の仮定で進めますと7倍音で1.5万Hz位と高音部が中々大変でしょう。それに演奏上かなりの範囲、撥を高速で叩きますから、倍音の多い過渡特性を要求する音だと思います。また混調歪が少ないことが必要です。録音、再生系に悪い部分があると、付帯音が必ずズィー、ジーと入ります。実は総ての三味線ではないでしょうが、一の糸の上駒の所に、「吾妻さわり」という仕掛けがあって、振動する一の糸に僅かに触れて濁り音(ビューインというような)を出すようにしてありますが、この音とは違います。オーディオ的には音色の変化、奏法(撥の上げ下げで撥く、糸を擦る、右手で弾く、撥で皮を打つ、指ではじく等)による音の違いと思われる「変化」を聴き取れる様に再生できているかでしょう。経験ではホーンで再生すると、三味線の音が「べたつかず」軽く切れよく聴こえます。 先のギターにも負けない豊富な音を持っていますが、決定的な違いは形、構造からくる音の在り方でしょう。ギターは胴が大きく音の持続が三味線より数倍長くボローーーーーンですね。三味はベェーン、ペンです。従って音楽の作りが変わってきますね。ギターはメロディー、ハーモニー、リズムを受け持ちますが、三味はハーモニーが弱いです。音迷人の無知と偏見で申し上げれば、日本の音楽では「ハモル」ことは無いに等しいですね。民謡でも斉唱で音域パートを持った合唱ではないです。婚礼の席?で「オラが村さの若い衆はたけー音出せるが、わしゃー年で出ねえがな!低く唄うが勘弁しろや!な、のだめ!」なんて言って斉唱とも合唱ともつかぬ「雑魚(雑居)唱」(またまた造語です)をしているんですね。ですから西洋に多い残響利用などの「余韻」のある音楽より、「間」を味わう、重視する様になったかもしれません。ということでギターと三味を比較することから、音迷人流東西音楽文化論暴投編が出来ちゃいました。(-_-;) |
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先代高橋竹山師(1910〜1998):津軽三味線にはいろいろ流派?が有って良く解りませんが、この方は相当功績のあった方ですし、演奏からも凄さが伺えます。現在は当時の竹与さんが二代目を継いで居ますね。 写真の竹山師のCDでは1974年〜のアナログ録音が主体で、1981年のディジタル録音が半面ほどあります。録音の場所、時間など状況は違いますが、上流で小粋な三味群に比べるとやはり太く、激しく呻きや叫びに聴こえます。その意味でアナログ録音のものが、低域が太く引きずられ感じが出ているようです。録音環境の差以外ここでもA・D録音の違いは認められません。またリズムも旋律も一所に止まらず絶えず流転し、意外と柔らかく繊細な弾き方を沢山しています。激しく、太いだけの先入観は捨てなければなりません。 |
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津軽三味線は信越中心の瞽女(ごぜ)の音楽の影響も受けていると聞いています。昔、これらの音楽のありようは中世ヨーロッパの吟遊詩人を思わすほどで、いろいろな情報を運んだり、自分特有な(人を惹きつける)世界を作ろうとし、また生存競争として各奏者は研鑽されたようです。ですから西洋音楽のように楽譜に留める様な共通性は乏しく、即興を含む独自性が強い音楽の様ですので、口伝え(弾き伝え?)のような伝承の仕方でした。このような状況の為地位を得た現在「師」の流れを受け流派?が多いのでしょう。その為に力がそがれぬ様にと願っています。 私は本当に素人で、どこを聴いても、西洋音楽のように「あ!マーラー巨人だ」などと言う風に曲名が解りません。本当に複雑で大変な音楽です。 つづく |
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おまけ:◆3/25この項のタイトルを書いたその日、夕食を終えて、普段は観てなかったNHK総合TVの「JR全線鉄道乗りつくしの旅」をそれとなく見ていたら本州最後の乗車で、「津軽線」の終点三厩(みんまや)駅に向かう映像になり、車内イベントの紹介がありました。な、なんと車中で津軽三味線の演奏サービス?をしており、「津軽じょんから節」と出たではないか!「ううっく!」慌ててデジカメを出したが間に合わず、終点駅の画像になってしまった。(普通、終点ならそれなりの街を形成していそうなものですが、映像からは何と厳しいことか。吹雪が渡る冬を思うと津軽の凄さが・・・)それにしてもまたまたピンポイントな「不思議」な出来事が続きます。次は何だろう!早々無いかな? |
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◆上記のように書いて置いたら締め切り間近の4/2ののんびりした午前中、TVの「波瀾万丈」で津軽三味線奏者の上妻宏光氏が登場!またまた偶然が! ロックGrで南米コンサートをした時、正調でじょんからを演奏したら、シーンとなり真に受け入れられたと感じ、伝統の津軽三味線を足元に固めないと、変形した活動(三味ロックなど)は頭でっかちになり受け入れられないと悟ったそうです。中々の若者で、きっと任せられるでしょう。 ◆ハイファイ堂は凄いです。既に三味線の記事が有ったのです。メルマガバックナンバー102号(2004/11/12)の目次1,2です。2では何と上妻氏のCDを取り上げています。これまた何と言う一致! かようにここのメルマガは残されていて楽しいようです。どうぞいろいろなバックナンバーもお時間を見つけてご覧下さい。 |
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