「オーディオ雑談カフェ」 5.〜ダイレクト・レコーディング〜 2006-6-23 音迷人 |
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私はこの前まで知らなかったのですが、1957年、今からほぼ半世紀前に「11月3日・文化の日」を日本のレコード協会が「レコードの日」としたそうです。最近いろいろな「○○の日」と言うのが出来ますが、大体語呂合わせ、駄洒落系が多いですね。「ゴミの日」とか「ミミの日」とかですね。この流儀で今なら5月10日を持って来たら如何でしょう。「05−10」でレコード。ダメですか? 冗談はさて置き、恐れ多くも「文化の日」を当てるのですから、その高邁な精神はちゃんと受け継がれたのでしょうか。文化もピンきりですが出来るだけ崇高な香りのするレコードでありたいですね。(ここでレコードと書きましたが、意識は録音出版物?のことでCDやテープ、音楽ビデオも含むでしょう)ただただ商売の臭いしかしないのもありますよ!選ぶのはあんた達だよと出してくれるのは嬉しいけれど、「ガックシ盤」がかなりあります。 |
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それではと「日本レコード協会」を覗いて見ますと <レコード業界全般の融和協調を図り、優良なレコード(音楽用CD等)の普及、レコード製作者の権利擁護ならびに、レコードの適正利用のための円滑化に努め、日本の音楽文化の発展に寄与することを目的としています>とあります。やはり日本に多い産業界のまずは集りなのですね。更に入会資格は *当協会の目的に賛同するレコード製作を業とする法人であること *自社ブランド(契約による独占使用のブランドを含む)の商業用レコードの製作を業とすること 等です。まあ活動している部会などで、音楽家や愛好家が参加していると思いますがやはり産業側主体であることは間違いありません。昨今の産業界の怪しさを考えると心配な向きもありますが、レコード文化を確り支えて頂ける様お願いしておきましょう。恐らく売れ行きなど統計を取って何か判断されているでしょうが、「売れることが善」だけは無いと思うので、満遍なく種をまいて欲しいです。クラシックレーベルの衰退は何なのでしょうか? 下図は日本レコード協会資料から日本の生産量を5年毎にチェックしてみました。何が読み取れるでしょうか? ★1:SP時代は演奏時間が短いにも拘らず枚数が少ない。お金持ちの「お道具」らしく普遍的で無い。洋楽系はほとんど輸入盤だったと思われる。 ★2:LPが出ると長時間、コンパクト、高音質であるのと、生活向上、西欧化などで需要が急増。 ★3:CDが開発、発売との情報から、様子見市場状態となった後、CDへ確実に移行して言った。 ★4:CD装置の低価格化、高品質化でピークを1998年頃示したが、8cm盤を減らしアルバム化して重み付けをしたので枚数は減少。メモリーオーディオで聴取するスタイルが増えたと言う理由もありそうです。 |
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以上はソフト主体の話でしたが、ハード主体ではどうなるのでしょうか? 調べましたら有りました。「音の日」と言うのです。何日でしょうか。頃あわせをやってみたのですが、上手くあてはまらず解りません。 さてそのレコードですが振動を記録して残し、再生して聴くという技術はエジソンの蝋管蓄音機に始まるのはご存知ですね。1877年のことですが、小さなラッパに声を張り上げて歌うことで、音波がラッパの底にある振動板を振るわせ、取り付けた針が上下に振動するのを回転する蝋管(初めは錫箔)表面に記録したのです。録音が終わったら回転筒の初めから針を当てると再生が出来ました。シリンダー・フォのグラムと言いますね。 エジソンは1887年12月6日に音を聞かせる公開デモで、自ら「メリーさんの羊」を歌って再録を行ったそうです。日本ではこの日を「音の日」にしたと言う訳です。1994年に日本オーディオ協会が決めたそうです。わりと最近なんですね。 |
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★横の写真はステレオLPレコード、オーディオチェックシリーズ、チェロ組曲3番の溝です。(わがデジカメで精一杯の処理。黒いレコードですから光を反射させたアングルで溝を黒く見せました。ニコンで「ファーブルフォト」という顕微鏡的クローズアップアダプタがあるらしいが8〜9万円とのこと)ソロ演奏ですのでもう少しセンターに固まってモノラール的かと思いましたら、オンマイク録音のせいか結構左右チャンネルに違う音が入っているように見えます。 ★下の写真は同じシリーズの一つで「ツァラトウゥストラ・・」の初めの2分間です。ジャケットに有る時間経過説明を並べてみました。1分42秒からのテュッティの溝はあたかもクレーターのようでカートリッジの針先に掴まっていたら物凄い揺れで振り落とされるでしょう。 |
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さて如何にも人間の営みが感じられる、この溝の存在を認識できたかと思います。 目には見えない空気の振動(それすら気が付かないこと)を、一体どうして機械的な処理で表面に留め様などと思いついたのでしょうか。エジソンには本当に感心してしまいます。 エジソンの蓄音機は構造的に縦振動で記録したのですが、エジソンが白熱電球に研究を切り替えている間に、他の人が改善などを行いました。ベルリーナは縦振動より横振動の方が音質が良いと特許を出し、更に円筒も発展させて円盤に展開し量産性をプレスで保障し、現在のレコードの基がこの世に出たのですね。 |
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◆第1次的ダイレクト・レコーディング 初めは先に書きましたように、音を振動板に当てその振動する力で原盤に直接刻み込みました。そこで音を沢山集めてエネルギーを集める為に大きなラッパを設けてそこで演奏しました。表紙のラッパつきのVnはその録音用のラッパにVnラッパを向けて演奏したそうです。小さいラッパは自分や周りの演奏者にはね返りSPのように聞かせる為のようです。1925年マイクや電気カッターを使う電気録音が出てくるまではこの方法で、「ラッパ吹き込み」と呼んでいます。歌手はラッパに向かって歌い込んだのですね。ですからVnなどソロ楽器や声楽のレコードが多いのです。オケのようにたくさんの音は集音からカッターへの導入が難しかったのでしょう。条件が揃いこの方式の良い点に合致したある部分の音は、ダイアフラムだけを介した状態ですから、正にハイファイです。それで古いSPを評価して、好んで聴く方が居るのでしょう。その素適な音のイメージを広げてあれだけ物理的には苦しい盤を聴き遂げるのではないですか?古い痛んだ絵や写真でも感動が伝わってきます。一つの再生文化です。 |
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◆第2次的ダイレクト・レコーディング 電気吹込みが1920年代登場してこれ以上無いほど発達し、ステレオLPに至りましたが、それでも満足せず、マイクからレコードカッターまでを簡略化して「音の純度」を保とうとした製盤作業がありました。それはテープレコーダなどを省略しマイクからミキシングコンソールを経てカッターへ送ります。カッターは普段はテープ音源からカッティングするので、ヘッド送りはバリアブルで、自動制御しています。この機能を人間がカッティングしながら予測制御しなければならないようです。ですから原盤製造は音楽演奏と共にあり、俗に言う「一発録り」の緊張で良い演奏があったといいます。しかし安全を見るので溝の間が広くなり収録時間が短くなるとか、生産性などデメリットがある上、評価する人々が俗にマニアだけですから、売り上げに寄与しなか様です。 横の写真は私の持っているピアノトリオのジャズ盤で「ザ・スリー」というタイトルのダイレクト盤です。諸元を下にコピーしますが、大変灰汁の無い、タバコの紫煙が煙っていないJAZZと思えるほど音がスムースなのです。 つづく |
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おまけ:◆少なくとも50〜60年前の物と思いますが、SPレコードの袋に印刷してある、今で言うキャッチコピーです。今の音から考えると「過大広告」で取り締まられてしまいそうですが、その時々では最先端だったのでしたのでしょうね。 あの音で当時私だったらこう書けたかどうか?それにしても昔は真面目と言うか硬い文で、今となっては中々味のある表現ですね。中に『実演其儘』と言う表現があります。今の「ハイファイ」ですね。と言うことはこのお店は「実演其儘 堂」なんだ! |