「オーディオ雑談カフェ」 5.〜レコードの溝〜 2006-6-30 音迷人 ゼンマイが切れていなくどうにか回る蓄音機を街のがらくた屋の中から見つけてきました。いずれ修理してメルマガにデビューさせましょう。そのホーンアームから外した、いや外れたサウンドボックスです。ダイアフラムは半透明な雲母板のようです。仮止めで鳴らすと、音量は大きめに鳴らしているテレビ位でしょうか。意外と大きい音ですよ。 40年前の今日音迷人の誕生日を祝って、ビートルズが日本初公演を武道館でしてくれました。連絡悪くビートゥベンズにかぶれていた音迷人は聴きませんでした。 |
|
先週号の「ダイレクト・レコーディング」やレコード店、川本氏のレコード溝と針の話で、入門の方はお解かりになったかと思いますが、約百数十年もの間主流であったレコードについて敬意を表してもう一押し理解を深めておきましょう。これから先、ディジタル技術が進み益々疎くなる傾向ですから、レコードに世話になった私としても、もう少しお伝えしたいです。そして手元にある、巷にも在る様々な録音盤を大切にしたいと思います。 |
|
◆サイズの比較:サイズといってもレコード盤のサイズは今更なので、溝のサイズについてです。モノラールでは溝が左右に振れるだけですから盤の表面の断面で溝の大きさは同じです。モノラールではSP,EP,LPと有りますが夫々どんな溝でしょうか。基本即ち無音溝では下図のようになっています。 |
|
★溝や針先、カートリッジを考察する時は自分が感覚的に超小人になって、そこに入ってゆくと解りやすいですね。LP盤用カートリッジの直径2ミルの針先を、野球ボールと思って手のひら(溝)に載せると、1mmφほどのカンチレバーは1.4mφと言う巨大なイメージです。長さは7mmほどですが10mの長竿になります。こんな面白い、いやゾッとするイメージの世界ですね。もっとも針圧2gでも換算したら手のひら受け止めたり、動かすわけには行きませんよ。 ★ステレオLPの溝は右と左の音により刻まれた位置(瞬間)により、溝が深くなったり浅くなったりしつつ左右に振れます。さらにピンチ効果といって斜めにうねる波の途中は、丸みのある針から見ると少し幅が狭くなります。そのため少し上に持ち上げられるなど論理的でない部分が弾性変形同様あるのです。カートリッジや針圧で音が変わるのはこの辺にアルかもしれません。細かいことを言うとLPやカートリッジにはそれなりに音を変える問題点がいろいろなあるのです。例えばカッターやトレースでのトラッキングエラー、外周内周の曲率の違いや周速の違い、盤や温度差による弾性変化等などですが、それを乗り越えて良い音楽を奏でてくれます。 ある研究ではLP再生を安定させる為、ある程度の硬さを与え磨耗・変形を防ごうと、放射線を照射すると言う硬化工程を試みました。確か放射線で分子間に橋を架ける:放射線架橋とか言う奴です。当然柔らかい時スタンパーの隅々までビニールを行き渡らせたあと、架橋して硬くするのでしょう。ですから再生すると、音の鮮度が上がり、伸びが良く、きめ細かなのに溝が変形せずダイナミックになるということかと思います。実際採用されたのでしょうか?何方か教えてください。 ★先週のメルマガで川本氏の記事にある「基本的には溝の断面は45度のVの字になります」については「左右の壁が45度で立っている」と言う意味でV字の底の角が45度ということではありません。底の角度はご存知の通り90度です。(実際は鋭い角ではなく、上図に見るように底は緩い円弧になっています) ★録音特性についても触れなければなりませんが、難しいので簡単に書きます。(本音:だいぶ忘れた!)LPは定振幅録音で刻んでいます。ある割合で低音になるほど弱く高音になるほど強く刻むのです。そうして逆の割合(イコライザー)で再生すればフラットな特性になりかつ高音部にある盤の雑音が小さい比率に成ります。また実音では概してエネルギーの大きい低音を比率として弱く刻むので、溝のうねりが小さくなり幅をより使わなくなって沢山溝が刻め長時間録音となります。 ★写真下:あるSP盤の溝密度をチェックしてみました。写真下部は曲尺で1mmメモリで1cmを見ています。溝を数えますと35本です。それではレコードの片面で溝を刻んである幅を7.8cmとした場合、溝の数は総数何本でしょうか?35×7.8:暗算出来ますか?答えは最後に! |
|
◆材質:SPは主に貝殻虫の分泌物、シェラック主体の盤であり、LPはビニール重合体を用いています。ビニールはシェラックよりきめ細かく滑らかな物質の上、弾力性が有ったので、正にLPに適合したものだったのです。シェラック盤では5,6千Hz以上は擦音ノイズに隠れてしまうがLPは1万Hz以上も可能になったのです。とにかく雑音については月とスッポンですね。 ビニール盤の性質特質はいろいろあるようですが、私はシェラックに比べて「そこそこ」柔らかいという事だと思います。 ★滑らかで柔らかいので繊細な音溝が造れる。(音溝の細かいヒダまで行き届き高音まで正確にスタンプ出来る) ★ある程度軟らかいから針が通ってもごく高い周波数で弾性変形するので、概して急激に破壊(磨耗)しない。 ★弾力が有り割れ難い。(それでも無理をすれば割れます。私はたった1枚ですが人に貸して「割られた(欠けた)」ことが有ります。写真下:トスカニーニ指揮の「運命」でした。弁償なし!これも運命と・・) つづく |
|
おまけ:◆LP保存法 ★平らな水平面に置く場合は重みをかけないこと。重ねて良い枚数は10枚くらいか。 ★立てて保存の場合は斜めにならないように注意する。 ★火気・高温(日照など)厳禁 ★薬品・溶剤厳禁 ★ホコリ厳禁 ★カビが生えるので汚れ、湿気厳禁 ★LPを再生するために針があります。針のコンデション(磨耗してカッターのようになった針先、ダンパーが固化した針など)が悪いと溝を破壊します。良く保存するには良い針の状態であることも重要です。 ◆LPの簡単確実な掃除・手入れ法: ★日常はLPを聞く前後にベルベット風クリーナーで粗ゴミを取り除く。 ★サボって汚した盤、古い盤などは例えば箱入りクリネックスティッシューなどを水にぬらし、中性洗剤で軽く溝に沿って洗う。 次にティッシューを換え流水水道で水洗いし、乾いたティッシューでふき取り、乾燥すればゴミはかなり取れ、驚くほどリフレッシュする。ただしレーベルは出来るだけ濡らさない事。少々ハンドリングの慣れが必要。少々の汚れは堅絞り濡れティッシュの工程だけでも効果あり。水滴の自然乾燥は確か残留物で新たな雑音になった。 ◆ティシュで?と驚かれる方も居られましょうが、大変性能が良く濡れてもパルプ(繊維)がほぐれないのです。これはきっと大変な技術ではないかと思っています。「大阪のオバチャン」が行きと帰りに2つ貰うタダの街配ティッシュは確認してください。尚、観察すると「東京のオバチャン」はぐるっとUターン2回で3つ貰うとか?負けていませんよ。これも大変な技術?ですね。 ◆LP盛んなりし頃「○ン○ン盤はプレス工場が▲×工業地帯にあるのでそこのホコリの音がする」とまことしやかに言われました。それで雑音はチリチリと鳴るのですね。 答え:片面で始から終わりまで溝は1本です。(-_-;) |