私のお宝 溝の数よりしわの数 LPプレーヤー遊び(その2) 2005-12-2 音迷人 前回の分類で?カートリッジとシェルの遊びです。 LPは昔一枚1800円〜2300円と高価で貴重でした。1ヶ月飲まず食わずで働いても10枚ぐらいしか買えませんから大変なものです。(しかしその後の所得倍増を経て現在に至ってもあまり単価は変動していませんね。卵の価格みたいですな)ビニールと言う軟らかい材質のうえ、溝が繊細な物なので、尚更注意深く扱わねばなりません。チコンキの場合針圧は大変重くもし指先で受けたら確実に針が刺さって血が出るでしょう。それより何分の一も軽いと言われたLP用でも、当時どなたかが計算され象が踏みつけているのに匹敵すると言ってました。これらのイメージから、針圧は可能な限り軽いことと言うのが頭にこびり付いてしまいました。 |
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プレーヤーの音を決める最大の要素はカートリッジですね。「Cartridge(以下CA):レコードプレーヤーのピックアップの先端に取り付け、機械的振動を電気的振動に変換する部品。」と広辞苑に出ています。そうですこの短い説明の中にCAに要求される機能が全部詰まっていますね。機械的振動を電気信号に<正確に>変換するとしたら完璧ですね。HIFIのスタートです。もう一つ私の言い方で「CAは小さな小さな芸術的発電機」です。 さてCAの遊びは色々ありますが、?CAを交換して楽しむ。?可能な改造を施す。?究極としてCAを造る。のうち?でしょう。可能な改造の狙いは正確な電気変換をするため◆針圧を軽くする為の改造◆振動を受けにくくする改造◆振動を少なくする改造になります。針圧については針の振動マスを軽くしながら針先のコンプライアンスを上げる事(動きやすさ)でしょう。その例の一部を下記にて見てみます。 |
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例1.(上部説明写真)半世紀程前 モノラール時代のサウンドC-2 CAではベリリウムカンチレバーとその先端の針チップの裏についている誘導用鉄片を削って軽量化をはかり、それに見合った感じでゴムダンパーを小さくしました。音を聴きながら少しづつやりました。C-2の針圧は確か7〜8grでしたが、最終的に4grほどで掛けていました。貴重なレコードをいため難かったかと思います。あまりレバーをフニャフニャにしますと共振点が下がり可聴範囲で痛めてしまいます。50年近く置いておいたら針先はなくなり、鉄片も剥がれてマグネットにくっついていました。このころの接着剤はセメダインぐらいでしたので尾を引いて使い難かったです。それでなんとマニキュア液を使いました。なんとなくピンクっぽい色が見られるでしょう?このCAはバリアブルリラクタンス型といいます。(当メルマガバックナンバー140号をご参照下さい)この方式は確かアメリカGEが開発したと思います。GEのはレバーがミューメタル(優秀な磁性体)で造られており、磁石はレバーの中間ほどの背中に配置されていたと思います。日本(サウンド、アカイ?)のは磁石がレバーの針の先に配置されていました。ですから針先裏にミューメタルチップを張れば、レバーは非磁性体で振動特性の良いものを選べます。恐らくGEに比べコイル巻数も少なく磁石も弱くて良かったかもしれません。これはジャンケン後出しのジャパンさんの勝ちですね。また昔はターンテーブルが鉄板で造られていたのも多く(私の初期CEC)磁石で吸い寄せられて僅かに針圧が上がるから注意して下さいと言われていました。 |
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例2. ステレオになってオーディオメーカーとして名乗りを上げたオーディオ・テクニカの第1作CA AT-1で見てみましょう。MM型の正に基本構造のような造りです。棒状マグネットをアルミカンチレバーに接着し四角いゴムダンパーで包んで針ホルダーに挿入してあります。音を決めるのがこのシリコン系?合成ゴムダンパーです。私はマグネットを半分ぐらいに折り砥石を掛けて細くし軽量化を計りました。パイプも適当に短くしたと記憶しています。(写真)ゴムダンパーも消しゴムや合成ゴムなどから切り出して色々作って遊びました。良い所も有るのですが概して高音に癖が出て中々メーカーのダンパーを超せませんでした。磁石が細くなった分パンツがゆるくなりますので、アラルダイトを球状に付けダンパーで包むように取り付けました。ダンパーの中で球が振動(回転)するので、振動の中心が明確になるわいとニヤニヤしていましたら、某社から球状マグネットMMCAが発売されビックリしました。こうして何やかや針圧は1.0grまで減らせ、実用1.5grで使用しました。本当にモッコリしたAT-1の音が繊細で伸びやかな感じになりました。このようにMM型は「おいたし易い」のでテクニカのほかにグレースやテクにクス製も犠牲?に成りました。どれも大方音質も滑らかで高音域が伸びました。メーカーに代わって?代弁しますと、製品はいろいろな人に使われますので、特性を多少犠牲にしても、それなりに丈夫にしておかねばなりません。繊細を追いすぎるとかなりリスクが高くなります。ですから改造は自己責任でやるべきです。オーディオ機器に接する以上、機器に対して「愛着」を持たねば成りません。改造しなくても適した範囲で働いてもらわねばなりませんので、機器の特徴、能力を心得ておかねば成りません。例え専門外でデジタル的に無理としてもアナログ的にその機器の大体の限界を理解してください。限界は殆ど常識的な範囲です。車でも積み過ぎたり、踏み込み過ぎれば壊れますよね。壊れる線はココと線を引いていないですよね。 それと写真のものはいずれも古くまた実験などで接着剤などで汚れたままですが音は綺麗です。うん? |
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例3. MC型では代表的なオルトフォン型?またはデンオン型が殆どですがこれはまず素人はいじれません。それに私は当時コイルの中に磁気効率を上げ出力を大きくする為の鉄心がありましたので、磁束ヒステリシスでHIFIでないと使いませんでした。MMも同じですけど本音はMCが高価だったからです。(-_-;)そうこうしていると原理的に明快で高出力の上素人でもいじれる針交換MC型CAが出てきました。サテンです。それっ!とばかりに購入しました。写真でもわかるように非常に明快な発電方式でHIFIと感じます。改良され何代目かのサテンは本当に自然で、柔らかでした。M117は後期の作品でした。分離がよく硬いという方も居られましたが、家では分離良く柔らかでした。サテンの針交換は初めの頃は小ネジ止めや板バネのアクションで留める方式でしたが、終いは写真のように発電磁界の磁石を利用した磁気吸着式になりました。改造して遊ぶのに打ってつけです。ここの遊びはもう一つ進めて溝からダイレクト的ピックアップすることでした。パイプレバーの中ほどのところ(右写真円内↓)で発電機構のカンチが受けているのを、針のごく近くで受けるようにして、溝の(針の)振動のすぐ傍で拾うことでパイプの撓み等から逃れダイレクトに発電するようにしました。工作上は針の位置が深くなり腹擦りなど起こしますので、写真のように頭蓋骨切開して逃げています。コイルはてこ作用で動作している正規品より倍の振幅を受けるので、出力は上がりますが針圧は軽くなりません。これも本当に良い音でした。ならば徹底しようと針先部のアルミパイプを切り落としカンチに貼り付け、極細ワイヤーで引っ張っておくことでダイレクトPUと成るだろうと試みました。これで聴いた音は「まるでマスターテープを聴くようだ」と言う当時はやった評論家の表現(私たちはマスターを聴けることはまず無いので想像です)が思い当りました。しかし強度等不十分で5分位で針が飛んでしまいジ・エンド!それでカンチも壊れ修復したのが上の写真の左側です。ダイレクトと言う同じ考え方のCAでヴィクターのCAがありました。ICを作る技術でコイルを造り、針先にエリマキトカゲ宜しく取り付けた様です。現在「IKEDA」がダイレクトタイプのようですが、構造など詳細は知りません。 |
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例4.現在はと言うとCDでの聴取が多くなったのと、CAメーカーも潰れてしまったりで、音質を追うと馬鹿高いものになりますので、安いオーディオテクニカのMMを使用しています。しかし昔より振動系も驚くほど小さく軽そうなので、改造の必要もなさそうですし、且つラインコンタクト針とか言う超楕円針で、針音が少なく、小さく、短いのです。どうも針が通過している位置が従来と違っていて、そう聴こえるのではないでしょうか。そして何より音が良いのです。馬鹿に出来ませんよ。オーディオテクニカはごく最近はもうCAを造っていないのか?と思われるほどですが、如何なんでしょうか?(注:2007/02調べで製造しているのを確認できました。MC,VM,シェルなど変わりありません) いじるところが無いので針ガード(シュアー式?)の寄生振動を嫌い取り外し、最近流行の地震対策用エラストマー樹脂(ゲル状)を切り、シェルの背中、横、CAの横腹などに貼り付けています。(写真右)分離や響きの安定性が増し素晴らしいです。これは良く利きウン万円の効果です。お試しあれ! つづく |