「All of Me」 この曲は1932年に公開された映画「ケアレス・レディ」で取り上げられ、当時の人気女優ジョーン・ベネットが主演したこともあり瞬く間に広まり、多くのミュージシャンが取り上げるようになりスタンダードナンバーとなりました。 原曲はいわゆるトーチソング(失恋ソング)で言ってしまえば自分の元を去っていく恋人に対しての未練節。 ヴォーカルではビリー・ホリデイやフランク・シナトラ、演奏ではテディ・ウィルソン、レスター・ヤングやカウント・ベイシーが知られています。 写真は「プレス&テディ」レスターのサックスが涙が出るほど素晴らしいナンバーです。
Cheek To Cheek 1935年のミュージカル映画「トップ・ハット」からの一曲。フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが原曲を歌っています。ミュージカル「トップ・ハット」の内容は男女すれ違いのラヴコメディで、今でも上演されている人気の演目です。 ジャズ・ヴォーカルにおける代表的な歌唱はやはりエラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロングのエラ&ルイでしょう。上手すぎるエラのヴォーカルとルイ・アームストロングのしゃがれ声ヴォーカルの掛け合いはインティメイトな雰囲気も相まって聴いていてほっこりします。
Love For Sale 元々はコール・ポーター作曲によるミュージカル「ザ・ニューヨーカーズ」からの一曲。ミュージカルの内容は禁酒法時代のニューヨークの人間模様を描いたもの。歌詞はタイトル通り"愛いらんかね"みたいな内容で、当時は猥褻過ぎるという理由で放送禁止になった曰くつきの楽曲です。 とはいえ今では多くのミュージシャンが取り上げるスタンダードナンバーとなっているので時代の変遷とは面白いものです。 今も昔も数え切れない程のミュージシャンが取り上げているのでここはマイルスの「Love For Sale」を紹介します。名作「カインド・オブ・ブルー」に参加したメンバーによる一曲。マイルスのリリカルなトランペットが味わい深いです。「1958Miles」に収録されています。
My Funny Valentine 元々はミュージカル「ベイブス・イン・アームズ」からの一曲でミュージカルの内容は、ニューヨーク南東部ロングアイランドを舞台にした演芸役者たちの奮闘劇を描いたものだそうです。 歌詞の内容は女性目線で綴られるウィットに富んだラヴソングといった感じでしょうか。 この曲も錚々たる面々が取り上げています。フランク・シナトラやカーメン・マクレエ、ビル・エヴァンス、スタン・ゲッツ、チェット・ベイカーなどなどまさにスタンダードの中のスタンダードと言える楽曲です。ここで紹介するのはやはりチェット・ベイカー「チェット・ベイカー・シングス」でしょうか。 中性的な歌声、激動の人生を送ったチェット・ベイカーのナイーヴな雰囲気が聴くものの心を打つナンバーです。
「Embraceable You」 この楽曲はジョージ・ガーシュウィンが作曲し、ミュージカル「ガール・クレイジー」の挿入曲でした。 ミュージカルの内容は裕福な家の息子が父親の命令で田舎の大学に行かされてそこで出会った女性と恋に落ちて・・・といった王道なストーリー、音楽のための舞台といったところでしょうか。 歌詞の内容は甘々な本当に甘々なラヴソング、まさにミュージカルのためのナンバーです。 この「ガール・クレイジー」は全編ガーシュウィンが音楽を手掛け、他にも「I Got Rhythm」や「But Not For Me」などの楽曲もスタンダードナンバーとして親しまれています。 代表的な演奏だとダイアン・リーヴス、クロード・ウィリアムソンやジャッキー・マクリーン、チャーリー・パーカーなど、ここでは天才チャーリー・パーカーの「オン・ダイアル」からの演奏を紹介します。 チャーリー・パーカーはジャズのアドリブをその楽曲の和声進行の元となる調性を拠り所にビバップという新たなジャズのスタイルを確立した正に天才演奏家でした。そんなパーカーにとってブロードウェイのミュージカル・ナンバーはどういうものだったのか気になるところです。