こんにちはこんばんは、レコード店の片山です。 最近気になった音楽ニュースから今回メルマガを書いてみようかと思います。 とあるテレビ番組で海外の方が邦楽アーティスト「大貫妙子/sunshower」を買いたくて日本に来て見事に発見したという番組が放映されました。 そもそもこの「大貫妙子/sunshower」という作品、シティポップを聴いている方ならご存知のとおり大変人気のある作品で、なおかつ、なかなか出会うことのないレア盤での高騰商品です。 ライトな質感と疾走するグルーヴ感、そこに清涼感溢れる美声が冴え渡る70年代女性シティポップ屈指の名盤です。 それを中古レコード屋さんで偶然にも出会えて購入できたことに驚きですが、他にも色々と気になる点がありました。 まずこの作品がこうやってテレビで放映されたことでテレビだけではなくネットでも音楽好きたちに話題騒然となり再評価が一気に高まった様子で、案の定レコードは手に入りにくいこともありCDがものすごく売れたと聞きました。 そしてレコードもまさかの新品再発が決定するという驚きの展開へ進んでいったのです。 個人的にもこの作品は私も大好きなのでこれをきっかけに色んな人に聴いてもらえたらなという嬉しさと、テレビやネットの影響力の高さも痛感する出来事でした。 |
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実は私が大変興味深かったのが「海外からみた邦楽(シティポップ)の評価」というものでした。 我々日本人がビートルズをはじめ洋楽に魅了されて、そして洋楽に影響を受けたアーティストたちが日本独自のセンスをおりまぜて生まれていった邦楽の作品たち。 それがいまこうやって逆転しているというか、海外の方が邦楽に興味をもっているという話を耳にします。 もちろん嬉しさもありますが、本当のところ、邦楽(今回はシティポップ)の何が、どこが、良いのか、直接聞いてみたいと思い、レコード店に来られた海外のお客様を接客したときに聞いてみたことがあります。 (私は英語が話せないので、連れ添いの方が日本人もしくは日本語が話せる場合に通訳してもらってでの接客です) |
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「海外からみた女性シティポップの魅力」 |
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海外のお客様でシティポップを探しているというお客様がやはりたまにいて、実際に私が出会ったお客様のほとんどが、なぜか女性のシティポップを好んで探している方が多かったです。 「yumi arai (荒井由実) taeko ohnuki (大貫妙子) minako yoshida (吉田美奈子)」 この3名のアーティストは人気があるようで数回問い合わせがあった記憶があります。 ただ、ここが重要なのですが。実はこの3名の女性アーティスト、ここ日本でも鉄板のように人気のある3名なのです。 つまり日本人も外人も評価が一緒、大きなズレがないのです。 今はネットがあるので全世界の音楽が聴ける環境もあり海外のリスナーが日本の音楽=邦楽をもちろん聴けるわけです。 しかし、有名な作品は映像やデータがネットに残ってはいるが、実は他にも素晴らしいアーティストはまだまだ存在しています。ネットには情報が少なくてリアル店舗に行かないとつまり日本に住んでいないとなかなか出会えない作品もあると思います。 きっと、ネットでは出会えない邦楽の作品を求めて来日する海外のお客様も多いと感じ、せっかく来店してくれたのだからできるだけ素晴らしい作品に出会ってもらいたいと思って店舗にある在庫で紹介してみるのですが・・・。 もちろん好みもありますよね。 自分が出会った少数の意見なので参考程度に読んでほしいのですが、海外のお客様が共通して言っていたことは 「日本のシティポップは 音がいい。1枚を通してソウルやバラードなど色んな曲が聞ける。歌詞の内容はわからないがメロディがとてもいい」 ということでした。 我々日本人が作るからもちろん日本人にとっては聴きやすい聴き心地のよいメロディであるのはわかるのですが、まさかの海外の方が日本のメロディがいいとは。 一部な世界であって一部のマイノリティな意見かもしれませんが大変興味深い意見でした。なんか不思議なものです。 |
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「シティポップとは?」 |
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そもそもシティポップとはどんなジャンルかを説明します。 ソフトロックのように日本独自のジャンル名で、海外にはあまり周知されていないようです。 サウンドは70年代後半から80年代中盤ぐらいに日本で人気のあったポップ・ミュージックです。 邦楽の歴史もこうでした。 60年代にGSブーム、そして70年代始めにフォークのブームがあり、洋楽に影響を受けた邦楽アーティスト=ニューミュージックの台頭、そしてテレビの浸透により歌謡曲やアイドルが主流になっていったようです。 シティポップは、フォークとは真逆のスタイルが多く、アコースティック寄りなサウンドが少なく、洗練されたアレンジやソウルやジャズなどの黒い音楽を積極的に取り入れ、煌びやかなコーラスワークを多用したサウンドが特徴です。 音楽会社が「新しい音楽=都会的に洗練された音楽=シティポップ」という語録を戦略として使ったり、歌詞内容がリアルを求めたフォークと違い、生活スタイルや街の若者をテーマにした曲が多いことも特徴です。 そしてこのシティポップもピークは80〜85年ぐらいで、アイドルや女優なども参入する一大音楽ムーブメントとなりました。 ※あくまでも自分の認識であり諸説あります。 |
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話を戻しましょう。 接客した海外のお客様の好みを聞くと、だいたいの方が女性ボーカル作品を好んでいました。 そして80年代全盛期の女性シティポップを紹介してみると、あまり反応が良くなくて・・・。 上記の3名(荒井由実、大貫妙子、吉田美奈子)の全盛期&人気作品は70年代後半に集中しているので、この辺を好んでいるのかなと思い、70年代後半の女性シティポップを紹介すると大変喜んでお買い上げしていただけるケースが多かったように思います。 理由を詳しく聞いてみると、 「この時期(70年代後半)はまだソウル色が強く、80年代のは AOR(80年代に海外で流行した洗練ミュージック)みたいだから」 と言っていました。 ただこのシティポップの作品たち、実は再評価も著しく、リアルタイムの方よりも現在の若いレコード好きたちの人気ジャンルであるためレア作品は年々高騰、人気作は手に入りにくい状況にあります。 ただ我々中古レコード販売業は店頭にある在庫だけしか提案接客できません。 しかしレア盤はなかなか紹介できなくても、実はお値打ちで素晴らしい作品もたくさん店頭にございます。 今回はそういった比較的入手しやすい70年代女性シティポップのお薦め作品を数点紹介しようと思います。 実際に海外の方に紹介したら大変気に入ってくれた作品ばかりです。 これからシティポップを聴いてみようかなと思っている方も是非とも参考にしてみてください。 本文が長かったので簡単に紹介しますね。 最後までお読み頂き、ありがとうございました。 |
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「70年代女性シティポップのお薦め盤」 |
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◆ りりィ / オーロイラ (1976年作) ※上段左 初期はソウル&ファンク色の強い作風でしたが本作からメロウさが増して、ハスキーな歌声とリラックスしたグルーヴが気持ちよい作品です。 ◆ 石川セリ / 気まぐれ (1977年作) ※上段右 かすれたボーカルとしっとりしたグルーヴがクール、夜に聴きたくなる逸品。 かっこいいという言葉が恥ずかしげもなく出てしまうほど粋なシティポップ作品です。 ◆ 笠井紀美子 / TOKYO SPECIAL (1977年作) ※中央左 ジャズ・ボーカリストでありながら本作はシティポップも歌いこなしています。 色気のあるアンニュイなボーカ ルとジャジーなシティポップ・サウンドにうっとりします。 ◆ ラジ / HEART TO HEART (1977年作) ※中央右 突き抜ける閃光のようにキラキラと輝いたアッパーなシティポップ・ナンバーがたっぷり収録されている好盤。 透明感のあるキュートなボーカルとライトなビートが爽快です。 ◆ 大橋純子 / CRYSTAL CITY (1977年作) ※下段左 キーボードを主体にした煌びやかなシティポップ名盤。 ファンキーな曲も人気ですが、実はメロウなバラードもグッドな気がします。 ◆ 庄野真代 / るなぱあく (1976年作) ※下段右 エレピも心地よいクロスオーバーなサウンドが見事にマッチした隠れ名盤。 ボーカルは美声タイプですがサウンドは荒井由実の作品に近いかもしれません。 |