さて、現在レコード店ではジャズのレコードが充実しています。今回はそんな中でもアートグラフィカルなジャケットデザインが印象的なPacific Jazzレーベルの作品を紹介していきたいと思います。 ちなみにご存知の方も多いと思いますが横の画像はPacific Jazzの名作サンプラー"Assorted Flavors Of Pacific Jazz"。パシフィックはこのようなハッとさせられるようなジャケットが多いです。
Pacific Jazzレコードは1952年にリチャード・ボックとドラマーのロイ・ハートによりロサンゼルスに創設されたジャズ・レーベルです。いわゆるウエスト・コースト・ジャズの隆盛の支えとなったレーベルと言われています。 そんな同レーベルを代表する演奏家はやはりジェリー・マリガンが挙げられると思います。1952年にカリフォルニア州に移ったマリガンはPacific Jazzに所属し数多くの録音を行ってきました。自身はバリトン・サックスを吹きジャズの編成で重要視されていたピアノをあえて排したピアノレス・カルテットを編成し独自のサウンドを生み出しました。 画像は"The Genius of Gerry Mulligan"、1952年から1957年の録音をまとめたベスト的内容。52年に勃興したウエスト・コースト・ジャズの足跡を辿る事ができます。
次にPacific Jazzと縁の深い演奏家といえばやはりチェット・ベイカーになるかと思います。 50年代のチェットはまさに時代の寵児といえる存在でした。あのチャーリー・パーカーも認めたというトランペットの実力とハンサムな風貌と中性的な歌声、非常に抗いがたい魅力に溢れたこの時代のチェットの音楽は、後の転落の人生に想いを馳せると胸が締め付けられるような感覚になります。画像は"The Trumpet Artistry of Chet Baker"、様々な編成による黄金時代のチェットのプレイが聴くことができます。
次に紹介するのは白人アルト奏者、バド・シャンクです。そのルックスのようなスマートでクールなアルトでウエスト・コースト・ジャズの隆盛を支えた人気演奏家の一人で、彼もまたPacific Jazzに数多くの録音を残しました。 画像は"I'll Take Romance"、サックス奏者なら一度は憧れるウィズ・ストリングスもの。「煙が目にしみる」、「エンブレイサブル・ユー」といったブロードウェイ・ナンバーなどスタンダード曲を取り上げ、レン・マーサー・ストリングスをバックに甘く流麗なバドのアルトが堪能できます。やはりこれはジャケットが素晴らしいです。
次に紹介するのが、アルト奏者、チャーリー・マリアーノとジェリー・ドジオンの双頭アルバム"Beaties of 1918"、セクステット編成で「君去りし後」、「ディープ・リヴァー」などタイトルの通り1918年代前後のヴォーカル・ナンバーを取り上げた本作は、ウエスト・コーストらしい抜けの良さと軽快にスウィングする演奏が楽しめる逸品です。 ちなみにアメリカの1918年頃はまだ禁酒法の時代、今の感覚ではカジュアルな軽装にみえますがジャケットの女性達が着ているのはれっきとした水着で、モノクロの写真と相まってとてもノスタルジックな雰囲気が素晴らしいです。
次に紹介するのがテナー・サックス奏者、ビル・パーキンスがPacific Jazzに残した名作"The Bill Perkins Octet On Stage"、オクテットなので8人編成の中型コンボならではの厚みのあるサウンドが聴きものです。「大統領」ことレスター・ヤングの影響を伺わせるビル・パーキンスのテナーの洒脱なブロウとバド・シャンクをはじめとするウエスト・コーストを代表する面々で固めたアンサンブルで繰り広げられる演奏はまさにウエスト・コースト・サウンドの醍醐味を凝縮したようなサウンドです。 ジャケットのテナーを片手に口を尖らせ少し俯きがちに佇むビル・パーキンスの格好良さがたまらないです。