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復刻盤VSオリジナル盤
ハイファイ堂メールマガジン第731号 ハイファイ堂レコード
いつもお世話になっております。レコード店の皿屋です。
先日、検盤していたところ、レコードの出音について再認識させられる出来事がありました。針を落とし、ノイズの有無と聴き慣れた音楽に耳を傾けたのですが、私の記憶している楽曲とは、似て非なるものが流れてきました。「えっ、こんな音だったっけ?」と驚きを隠せず、周りのスタッフに確認する始末。私が聴いてきた楽曲はこんなものだったのか?と今一度、聴き直すことにしました。
そのレコードというのは、カーペンターズのベスト盤、昨年発売された180gの復刻盤仕様です。内容は言わずもがな不滅のポップスですので割愛します。
180g復刻盤 型番:80026342-01
まず発売元の商品紹介では、「RON MCMASTER (THE BEACH BOYS, DON MCLEANを担当)による CAPITOL STUDIOに於けるリマスター音源使用」となっております。RON MCMASTERは、BLUE NOTEのCDにも大きく関わっており、アタックの強い歯切れの良い音を生み出しています。初めの印象は、それまで耳にしたものより、圧倒的に鮮明であったことです。歌を支えるドラムが一歩後ろで鳴っていおり、「Sing」では、子供たちのコーラスが分離して聴こえる奥行きも再現しています。そして何よりカレンの伸びやかな歌声とそれまで気がつかなかった息遣いまで存分に堪能できる迫力のある音になっています。ハイエンドのセットで再生すれば、細部のディテールまで明確にしてくれることでしょう。
ただ、今回のメルマガでベタ褒めしたくて、立て続けに3回聴いていたところ、あるポイントが耳についてきました。それは、リヴァーブが深くかかり、ドラムの音がエッジが効き過ぎている点です。迫力のある音を求めたため、全体的に過剰すぎるように感じました。映画館で流れる音のように壮大で感情を無理矢理引っ張りだそうとしている感が否めない。何度か聴くと疲れてきましたというのが本音です。
ただこれだけだと、基準がわからないので、USオリジナル盤と比較してみます。
USオリジナル盤 型番:SP-3601 エンボス加工
US盤といえば、UK盤や日本盤と比較すると細やかなディテールより、面でずっしりととらえた音を基準としているように思います。緻密さよりも直感的に判断を下し、全体像を大切にしていようです。
さて、先ほどの復刻盤と比較すると、まず第一に全体的に音が引っ込んだ印象を受け、物足りなさを感じます。あのカレンの歌声は何だったのかと思ってしまう程、鮮明さが落ちます。バックコーラスやピアノの響きがなくなり、どすんと前に出ているだけに感じます。ただ広がりが少ない分バラつきがなくなり、まとまって聴こえます。エッジの効いたドラムも耳につくことはありません。いい具合に落ち着いて、聴き疲れすることもありません。
今回、比較した2枚は音作りが対極であり、レコードの音質を確認するには最適に思いました。復刻盤を聴いたときは、素直にその鮮明さに驚き、感銘を受けましたし、細部まで耳を澄ませて聴き入りました。ただ何度も聴くに連れて、音の配置や、鳴り方等、音楽以外のことに気を取られるようになりました。本来、楽しみ方ってそうではないような、何も考えず聴けるのが一番良いはずです。双方の良い面を活かそうとしても、恐らくどっちつかずで中途半端なものになってしまいます。一長一短です。どちらを良い音と判断するのかは、好みとしか言いようがないです。
重量盤が純水なら、US盤は不純物を含んだ湧き水のようです。不純物のないほうが、水は透き通って見えるので、鮮明であることに間違いはありません。ただ本来、自然界に純水は存在しないはずので、返って不自然です。どちらもキレイなものに違いはありませんが、ベクトルが異なります。
そして私自身、レコード購入の基準に、オリジナル→セカンド、サードプレス等オリジナルに近いもの→輸入盤→重量復刻盤→国内盤の順に購入していました。高額で手が出ないオリジナル盤であれば、それに近しいもので補うといった具合です。なるべくオリジナルで購入する。なぜなら最も良い音であるはずだからです。それまでオリジナル至上主義でしたが、今回比較して、その凝り固まった価値観を見直さなければならないと思いました。全てがそうとは限らないと。自分の耳で確かめてみる必要がありますね。
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