オーディオ風味 名曲アラカルト アドレナリン指揮法 2006-2-10 音迷人 割り込み!指揮者フルトヴェングラー(1886〜1954)の香り |
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先週ハイファイ堂で行われたフルトヴェングラーレコードコンサートの様子を川井店長が報告されていますが、音楽、オーディオと心の結びつきがいみじくも表れていると感じました。「まず音楽ありき」なんですね。 私は遅い時間と寒さを用心して参加しなかったので、フルベンさんについてどんなお話がされたのかが解りませんが、香りだけでもとこの稿で勝手に協賛いたします。 彼は考古学者の息子としてベルリンに生まれました。二十歳でブルックナーの交響曲と自作の曲で指揮者デビューしたそうです。随分と重い曲を選ぶあたりが、フルトヴェングラーさんらしいのかもしれません。ドイツに在ってナチスの抱きこみ謀略と対立を繰り返しながらも、愛して止まないドイツにぎりぎりとどまって演奏活動をしたことや、まだヒトラーがさほど牙をむかない頃、音楽仲間を守る為、不覚にも撮られた?演奏会後の握手した写真などから、協力者の烙印を押され戦後数年演奏活動を禁じられたそうです。幸いにもワルターたちの擁護もあって返り咲き1951年のバイロイト再開の指揮者にも招かれたのです。アラカルト1.でお伝えした大ドイツ放送のステレオテープ録音には彼の演奏は無かったのでしょうか?私の推測ではソ連が持ち帰った中に・・まもなく出てきて世界中のファンが聴けるとか夢のようなことは無いでしょうか?となるとナチとの関係が微妙で困りますが・・・ ところで、彼の指揮振りは大変細かいのだそうですが、リズムを取ることより曲想を伝えるタクトのようだそうです。従ってオケは非常に集中しないとリズムを外すので、全霊投入で演奏し良い結果につながったのではないでしょうか。駄洒落王国日本では「振ると面食らう」とは有名です。 現在エリザベート夫人や息子さんが彼の音楽や名誉を現在でも保っておられるようです。全世界にファンは大変多く、日本にも協会とかセンターとかあって、沢山おられるようです。古典派からロマン派にかけて隅々まで濃厚な音楽を表わしているようで、私みたいなボロ耳でさえも、なるほどと思います。 |
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私の場合は彼の演奏をそんなに所有していませんし、追っかけても居ません。その中で特徴的なのを挙げてみます。 ▲まず以前申し上げたクリスタルピックアッププレーヤーをダイアトーンラジオに繋いで聞いたころのLPで、1952年ウィーン・フィルとのベートーヴェン交響曲第3番「エロイカ」です。アメリカHMVのモノラールですが中々バランスよく響きも良い録音です。超名演と言われた1944年のウラニア盤エロイカとは違いますが、この2楽章「葬送行進曲」では天国が見えます。オーディオ的には当時針圧を軽くする改造をしながら、1楽章初めのほうのフルートの「たーりら」に付随している倍音を上手く再生するかと真剣でした。すり減ったのか今はあまり聴こえません。 トスカニーニ派?がいうほどそんなにテンポを動かしたり、興奮にて品がなくなるほど即興的に想い入れたりはしていません。私はこの演奏を自分の中に沁み込ませてあります。数えていませんが500回以上は聴いたでしょうか。 |
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▲次はバイロイト祝祭オケ/シュワルツコップ等でベートーヴェン交響曲第9番です。日本エンジェル(東芝)盤で有名なディザインのカートンボックス入りです。数ある第九の中でも格調高いかと思います。3楽章が白眉です。ここはオーディオ的にも微妙な響きが沢山あるのですが、やはり古い分表現は全部満足とはいえませんが、低音、中音が確りしているので、十分鑑賞できます。特に100〜1000Hzあたりはフィディリティーが高く弱、中音ティンパニーは本物です。久しぶりに聴いたらチューンの成果か圧力が来ます。最近の良い録音で聞く迫力有る第九もそのフィディリティーが生む感動が加わって捨てがたいですが。 この第九はライブと思いますが、確かにテンポは即興的なのかよく動きます。私の印象では、音量が上がって且つ音符が短く積み重なると、テンポが上がり、音符が長くなり更に弱音であると確実にテンポを落とします。つまり標準(機械的)テンポに対して「高揚曲想」(新語だな)の時は他の人よりより速く、「静寂、荘重曲想」の時はより遅くなるのです。それも1.5倍ぐらいのイメージで。ですからこの3楽章はじっくり歌い上げていますし、4楽章の合唱コーダはどの指揮者より速く駆け抜けます。しかし私たちは時にブレーキが掛かりつんのめる事も無くはないですが、納得できます。それは何故でしょう。音迷人さんは解析命名しました。「アドレナリン指揮法」 私達と量の差はあれ、同じタイミングでアドレナリンが出ているのです。彼は深い読譜と高い教養にて限界ぎりぎりで踏みとどまるので品位があるのでしょう。つまり早々真似して出来ないのです。 この前ベーさんが言ってました。「俺の曲もとことんやるとこんなに成るんだーべー!」 |
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▲変わっているのが「ステレオ録音」と称する、1954年ウィーン・フィルほかでウェーバーのロマンチックオペラ「魔弾の射手」です。ライブ録音ですが一生懸命聴いてもステレオ感はありません。何かの間違いでしょうか?ポルトガル製Gala盤です。(写真下左) ▲海賊版と思われますがR.シュトラウスの「ドン・ファン」ほか、スメタナ「モルダウ」など管弦楽曲や、ウェーバーの序曲などいずれもウィーン・フィルのがあります。(写真下右) |
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おまけ:◆フルベンさんの純愛?物語 人によっては「この女性」が居たからこそ数々の名演が生まれたと言うほどです。何故ってフルベンさんは「貴女のために指揮をしたんだもん!」と書き送ったそうですから。女性はエリザベート夫人ではなく才女でレジスタンス運動支援者のルチャーナ・フラッサーティ・ガフロンスカ女史です。フルベンさん51歳から15間年ほど片思い的?交流をしたとのことです。「音楽・がたき」といわれているトスカニーニもどちらが先か知りませんが想いを寄せていたそうで、恋敵にもなっていたのだそうです。(トスカニーニのほうが優勢とか?)彼いや敢えて彼等(としましょう)も人の子で正に「恋は盲目」状態の手紙があるそうです。まさか「変しい、変しい脳ましい貴女様に・・」などと書いてないでしょうね。 私もひょっとしたら間に合ったのですかな(-_-;) |
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◆横綱大関揃い踏みみたいな写真が古い雑誌に在りました。誰々か解りますか?何時になったらこんな凄い「集合」を塗りかえる後輩が出てくるのでしょうか。私が常々思う演奏の画一化や、馬鹿忙しい商業化が拒んでいるのではないでしょうか?(評論家が怖いかな?) |
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左からワルター、トスカニーニ、クライバー(父)、クレンペラー、フルトヴェングラーの各氏 |