リタ・クーリッジのジャズ・アルバムというと、10年くらい前に「Out Of The Blues」というなかなかいい感じのアルバムがあったが、そのアルバムは、実は既に彼女の人気が上昇しつつある時代、1975年に録音され、発表が見合されていたということだった。「Out Of The Blues」録音からちょうど30年目という今年、同じような企画のアルバムが登場したというのも興味深いものがある。さすがにしっとり落ち着いた艶のあった頃の彼女のアルト・ヴォイスの衰えはいたし方ないが、往時の歌声を知っているファンにとっては、聴いていても懐かしい何かを思い起こさせるようである。ヴォーカリストとしての底力を存分に感じ取れるし、素晴らしいシンガーが活動を再開したということで大いに歓迎したい。