「亡き王女のためのパヴァーヌ」 ジャズピアノとクラシックギター 2人がおすすめするCDを読者の皆様にプレゼントします。お名前、送り先、ご希望のCDを明記の上、下記メールアドレスまでご応募ください。 mailto:merumaga@hifido.co.jp 締め切り日時は2/23(木)21:00です。当選者の発表は賞品の発送をもって替えさせていただきます。 |
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コンのおすすめCD スティーブ・キューン 「亡き王女のためのパヴァーヌ」 スティーブ・キューン(p)、デビッド・フィンク(b)、ビリー・ドラモンド (ds) 2005年8月ザ・スタジオ NYで録音 ヴィーナスレコード TKCV-35361 2006/1/21 発売 前アルバム「イージー・トゥ・ラブ」から1年4ヶ月ぶりの待ちどうしかったニューアルバムだ。スティーブ・キューンのジャズ・ピアノは何時聴いても、独特の美しい響きを伴った力強いリズム感を醸し出す。オーディオ的にも素晴らしいものであり、いつも我がオーディオ心を酔わせ魅了する。音質チェック用のプレイバックデモ盤に使っている。ニューアルバムでは有名なクラシック作品を取り上げ、綺麗なメロディを損なわないよう気を使い聴かせてくれている。キューンの緻密な音楽性が全面に打ち出されていることが全身に伝わってくる。ピアニストの殆どがそうであるようにピアノのレッスンは、幼い頃よりクラシックから始めると聞く。ジャズにクラシック曲を取り入れるジャズ奏者が多いことからもうなずける。 |
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キチンとしたクラシック音楽に対する認識また知識等を身につけ、決してクラシックの本筋から外れないようにメロディを丁寧に紡いでいかなければならない。それでいてちゃんとジャズに仕上がっているのである。キューンはクラシックのジャズ化ということに日頃から非常に情熱を持っていたということだ。特に聴き慣れた(1)ショパンの「アイム・オールウエイズ・チェイシング・レインボーズ」(2)モーリス・ラヴェルのピアノ曲「亡き王女のためのパバーヌ」をキューンは美しいバラードのリズムでうたいあげていく。また(5)チャイコフスキー「白鳥の湖」を聴くと、軽快によくスイングしてロマンテックな世界へと誘ってくれるような心境になってくるからこれまた不思議だ。(6)ショパンの「夜想曲変ホ長調作品9、第2番」(7)ドビュッシーの「リベリイ」ではスローテンポのゆったりした厚いピアノの流れと美しいハーモニーも見事だ。(9)ラフマニノフの「フルムーン・アンド・エンプティ・アームス」ではキューンの繊細なピアノの響きと、ビリー・ドラモンドの迫力あるドラムさばきには何時までも聴いていたい気持ちにさせられる。一方デビッド・フィンクのベースもがっしりとした、腹底に染み渡るような豪快で骨太なベースワークを披露してくれていて何よりうれしい。響きと言えばビリー・ドラモンドのドラムス、『キンカァ〜ン・・』とよく響くシンバルがこれまた独創的で、かつエネルギッシューなドラミングワークが、スティーブ・キューンのピアノタッチをいっそう熱っぽく盛り上げている。スティーブ・キューンによってクラシックの名曲をここまでロマンテックに、かつスイング感いっぱいに引き出しいるので聴き応え十分である。五感に響くときめきの音とは、まさにこのトリオがなせる技であり、また現在のこのピアノ・トリオ誰一人欠けてもその音質は成り立たない素晴らしいものだ。 |
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村治佳織は右手疾患の治療とリハビリのため、3ヶ月間活動を休止した。それにともない、ちょっぱらが行こうと思っていた昨年11月の公演も延期となった。年明けに振り替えとなり、楽しみにしていたが、我が夫はあろうことか公演日に仕事を入れてしまった。3人の子供のシッターは当然見つからず、泣く泣くチケットを反故にした。とはいえ、私も当日は風邪をこじらせ音楽鑑賞に堪えうる体調ではなかったので、どの道行けなかったわけだ。しかたないので、一緒に行く約束の友達にCDのお土産を頼んだ。 |
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ゲストのおすすめ ゲスト ちょっぱらさん 村治佳織「リュミエール」 ギター:村治佳織 わずか14歳でデビューして12年のキャリアを持つ。ジャケットの顔写真はいまどきのキレイなおねえさんで、若々しく涼しげな笑顔だ。03年、英国名門クラシックレーベルDECCAと日本人としては初のインターナショナル長期専属契約を結び、05年世界発売された第1弾「トランスフォーメーション」は第19回日本ゴールドディスク大賞クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞。その第2弾となる当盤は、サティ、ドビュッシー、ラヴェルなどのピアノでよく知られた小品の数々と近現代作曲のギター曲からなる。素敵な選曲で、フランス音楽とギターとの好相性に改めて気づかされる。ジャンルはクラシックでもギターで演奏すると、不思議とクラシックぽくきこえない。弦をすべる指の音とか、小さな箱から発するはかない共鳴音とかを聴き拾いながら、ピアノでは多弁になりがちな「揺らぎ」・「うつろい」がギターではとてもさりげなく歌え、これが親近感につながるのだと感じた。研ぎ澄まされ、注意深く選び取られた音で編まれた演奏が、やさしい自然の流れを育む。幻想的な音の推移にも、危うげな迷いがない。芯があるのでこちらも自然体でいられる。 |
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サティの"グノシェンヌ"はギターのための曲だったのかと思えるほどマッチしている。ドビュッシーの"月の光"では音と光が水面に揺れるようすを陰影も美しく描き出す。近現代作曲のギター曲は、よりギターの魅力を感じさせる。一番気に入ったのは、ディアンスのサウダージ(郷愁)第3番"第2曲:舞曲"、親しみやすい主題が聴いた後もいつまでも心地よく繰り返される。93年作曲の吉松隆の"水色スカラー"、いろんな時空をさすらうクールな風は、ぜひ聴いてもらいたい。ルグランの"夏は知っている"はどこかで聴いたことあると思っていたら、去年、娘のジャズダンスの発表会で先生がソロで踊った曲だった(元は映画の挿入曲)。このギターバージョンでも踊ってほしいな。 |
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当日の公演の様子はどうだったのだろう。CDを聴く限り、コンディションが元通りなら、観客の満足度もさぞ高かったろう。友人の一人は「やさしく癒されるひと時だった」と肘掛に頬杖つきボーっとしてきたそう。また一人は、自分もギターを弾いてみたいと思ったそうだ。村治は公演で、3ヶ月のブランクを経たが、「以前と違和感ない」と語っていたそう。良かった。この4月には、アメリカデビューをひかえている。さらに飛躍した彼女と、いつかライブで会えますように。 |