「大型スピーカーで聴いてみたい」 ピアノトリオ 今週のおすすめCDは2枚です。ご応募いただいた皆様から抽選で各1枚ずつプレゼントします。お名前、送り先、ご希望のCD(「ケリー・ブルー」か「アルフィー」)を明記の上、下記メールアドレスまでご応募ください。 mailto:merumaga@hifido.co.jp 締め切り日時は10/26(木)21:00です。当選者の発表は賞品の発送をもって替えさせていただきます。 |
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コンのおすすめCD その1 ダン・ニマー・トリオ 「ケリー・ブルー〜ウイントン・ケリー・トリビュート・アルバム〜」 ダン・ニマー(p)、ジョン・ウエバー(b)、ジミー・コブ(ds) 2006年5月ニューヨークで録音 ヴィーナスレコード TKCV-35379 2006/8/23 発売 曲目 (1) ノー・ブルース (2) プリムシャ・マン (3) 晴れた日に永遠が見える (4) クイック・ジャンプ (5) クローズ・ユア・アイズ (6) エリナー (7) ケリー・ブルー (8) オン・ザ・トレイル (9) イフ・ユー・グッド・シー・ミー・ナウ (10) 枯葉 (11) テンパランス |
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若いジャズ・ミュージシャンはオーソドックスな表現でなく、若者らしく現代的なガッツ溢れる斬新なプレイを見せてくれると一般的に評価される。それも一言である。しかし、各人好みの分かれるところでもある。個人的にはオーソドックスな4ビートの心地よいリズム感は21世紀の現在において何時までも魅力を放っていって欲しいし、いつの時代にも対応していけるものではと思っている。 ダン・ニマーのデビュー作である前作「ティー・フォ・トゥ」TKCV-35360はオーソドックスでありながら、ちょっぴり斬新なプレイも聴かせる粋な作品であった。彼がオスカ・ピーターソンを聴き、ジャズに開眼したということから伺える。レッド・ガーランド、パド・パウエル、チック・コリア、ハービ・ハンコックへと進んだということだ。そのことからも彼の演奏でのオーソドックスさも見えてこようというもので、納得できる。しかし、ダン・ニマーから感じるオーソドックスさは、哀愁を帯びたという感じはあまりしない。オーソドックスではあるが、フィーリングにおいて現代的なスピード感溢れるプレイに徹している。 いきなり(2)「ブリムシャ・マン」ではオーソドックスでありながら、キッチリと現代風にアレンジし、4ビートの効いた心地よい響きで、最近あまり感じたことのない、本来のジャズが持っていた奥深い味わいを堪能させてくれた。それにしても今回のアルバムは全曲にわたり、リズム感もよく軽快にスイングしている。思わず踊りだしたくなるような軽快なリズム感でよく弾んでいる。前作同様、オーソドックスなピアノであるが、今回は”ウイントン・ケリーに捧ぐ”ということもあり、より本作はダン・ニマーの個性とスタイルをアピールした作品に仕上がっている。若さ溢れるダン・ニマーはオーソドックスなスタイルを継承しつつ斬新でフレッシュな演奏に専念しているのである。改めて凄い若手ジャズ・ミュージシャンが出現してくれたと感謝したい気持ちになってくる。ドラマーはウイントン・ケリー・トリオのレギュラーだったジミー・コブである。これまた嬉しいことだ。 サウンドはオーディオ的にも、前作よりさらによくなっている。ピアノの響きの美しさとしっかりした厚さが交差しあい魅惑的な音質である。ベースも図太く安定感が増したようだ。ドラムスは言わずと知れたジミー・コブだが、シンバルの音の輝きは生き生きとして、素晴らしい捌きを披露してくれているのが、何より心打たれた。トリオの持つ色彩感の豊かさと溶け合って、そこから生み出される繊細で緻密な音作りに一役買っている感があり、オーディオ的にも絶品の一枚である。大型スピーカーで音量を上げ原寸大で再生してみたい。 |
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コンのおすすめCD その2 デヴィッド・ヘイゼルタイン 「アルフィー」 デヴィッド・ヘイゼルタイン(p)、デヴィッド・ウイリアムス(b)、ジョー・ファンズワース(ds) 2006年3月ニューヨークで録音 ヴィーナスレコード TKCV-35375 2006/7/19 発売 曲目 (1) イン・ビトウィーン・ザ・ハートエイクス (2) 雨にぬれても (3) 恋の面影 (4) ウォーク・オン・バイ (5) ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム (6) ジス・ガイズ・イン・ラブウイズ・ユー (7) 世界は愛を求めている (8) アルフィー (9) 小さな願い (10) 遥かなる影 |
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今やモダン・ジャズの王道を行くデヴィッド・ヘイゼルタイン。何時聴いても力強く美しいピアノでジャズファンを魅了する。9ケ月ぶりのニューアルバムが登場した。ヴィーナスでは6枚目のアルバムである。今回は60年代ポピュラー・ミュージック界で活躍した有名な作曲家、バート・バカラックの作品を、ヘイゼルタイン独自のスタイルでスイング感溢れるトリオ演奏に仕上げた。聞くところによるとヘイゼルタインはこのようなポップスは初めて取り上げたということだ。 ヘイゼルタインは現在ニューヨークのジャズ界ではダントツの人気があるそうだ。「そうだろうなぁ!」我々が何時聴いても分かりやすいリズム感とスイング感、まして繊細かつダンピングの効いたノリのよいピアノは、ひときわ光輝いているようである。いきなり(1)「In Between Heartaches」で見せてくれる。流れるようなリズムとエネルギッシュな躍動感で始まり、(5)「A House Not A Home」においてはヘイゼルタイン独特のスリリングなインタープレイが独創的であり、美しくも力強いアドリブとメロディが鍵盤上を軽快に踊っていくようだ。(7)「What The World Needs Now is Love」ではピアノの粒立ちが美しく透明な音場に浮かび上がって、静寂な世界に導いてくれるような感触を抱く。またベースのデヴィッド・ウイリアムスも文句なく、たっぷりと響く胴鳴りがより深く沈みこんで、床を這うように腹に染み込むようだ。実際このような太いベースを聴かされると、豪快な音に思わずうれしさが込み上げ感激した。一方ドラムスのジョー・ファンズワースはヘイゼルタインとは「ワン・フォー・オール」で共演したメンバーでもあり、さすが呼吸もピタリと合っている。実に美しい繊細なシンバル・レガートやメリハリのついた鮮明な押し出し感は見事なものだ。しかもレンジ感の広いスマートでカラフルな演奏が気に入った。改めて「これが現在のピアノ・トリオの音なのだ!」と強く感じ取った。サウンドはピアノが美しく躍動感溢れんばかりの豊かさがあり、ベースは深く沈み込むようによく伸びる。4ビートが効いた一体感を醸し出す。ジャズらしい緊張感が漂ってくるのを聴いていると自然に緊張感が解れていくようだ。オーディオ・リファレンス・ソースとして、いつまでも手元に置いておきたい愛聴盤となりそうである。 |