「ウッドベース」2008年3月14日 おすすめCDは下記の店舗で試聴できます。 コンのおすすめCDその1 ニッキ・パロット「ムーン・リバー」京都店 コンのおすすめCDその2 ブライアン・ブロンバーグ 「イン・ザ・スプリット・オブ・ジョビン」日本橋店 |
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コンのおすすめCDその1 ニッキ・パロット 「ムーン・リバー」 ニッキ・パロット(vo,b) 、ハリー・アレン(ts)、ジョン・ディマルティーノ(p)、ポール・マイヤーズ(g)、ビリー・ドラモンド(ds) 2007年6月NYで録音 ヴィーナスレコード TKCV―35412 2007/12/19 発売 曲名 1) ムーン・リバー 2) イズ・ユー・イズ・オア・イズ・ユー・エイント・マイ・ベイビー? 3) セイ・イット・イズント・ソー 4) ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ 5) 恋のチャンス 6) アイ・ドント・ノウ・イナフ・アバウト・ユー 7) メイキン・ウーピー 8) クライ・ミー・ア・リバー 9) 縁は異なもの 10)ベサメ・ムーチョ 11)棒ぐるみは愛のみ 12)ニッキのブルース 13)ザ・モア・アイ・シー・ユー |
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またしても素晴らしいボーカリストが誕生した。その名はニッキ・パロット。ヴィーナスレコードからシモーネ以来久々の女性ボーカリスト登場だ。思わずグラッとくる気だるく甘いシルキー・ボイス、ブロンドの長い髪と大きい瞳、フォトジェニックな美貌がより魅力を放つ。それにも増して女性では希少的存在のウッド・ベースを弾く。ニッキ・パロットは、オーストラリアのニューカッスル生まれということ。4歳のときにピアノを始め、その後フルートも演奏し、15歳でベースに転向したということだ。 早速1)「ムーン・リバー」から聴いてみた。ハスキーな声はドキッとさせられる何かを持っているようである。ボーカルの女王、ダイアナ・クラールに声質でもハスキーなところが似ているようだ。またジャズ界の魅惑的シンボル、ジュリー・ロンドンを彷彿させるところもある。4)「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」は彼女のご機嫌なベース・ソロから始まり、ハリー・アレンのテナーが絡む。ギターのポール・マイヤーズも素晴らしいギター・ソロを聴かせ、ピアノのジョン・ディマルティーノが割って入るといったご機嫌なプレイで展開されていく。5)「恋のチャンス」では、ベースが小気味よく唸りを上げる。ハリー・アレンのテナーも心の底まで気持ちよく響きわたるようだ。また6)「アイ・ドント・ノウ・イナフ・アバウト・ユー」、8)「クライ・ミー・ア・リバー」に至っては、ニッキーの切なさ漂うハスキーでセクシーなボーカルにただただ魅了されるばかりだ。9)「縁は異なもの」は軽いボサノバのリズムで、各奏者がアンサンブルの確実性を確かめ合っているようにも思えた。ドラムスのビリー・ドラモンドがニッキーのベースを上手くフォローしているのも見事だ。よく取り上げられるラテン・ナンバー10)「ベサム・ムーチョ」では、ポール・マイヤーズのギターとビリー・ドラモンドのドラムスの切れがよく、繊細で豊かな響きにはオーディオ的に聴いても断然優秀であると感じるものだった。ニッキ・パロット、ボーカリストと言っていいのか、ベーシストと言っていいのか、どちらも素晴らしく絶妙なので贅沢だが迷うのである。 ニッキ・パロットのボーカルのハスキーな艶やかさ、ベースの図太く安定感がある音質、強い押し出しのテナー・サックス、ギター、ピアノ、ドラムス群、立体的なまとめ方がこのレーベルらしい高い出力で実にダイナミックだ。 |
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コンのおすすめCDその2 ブライアン・ブロンバーグ 「イン・ザ・スプリット・オブ・ジョビン」 ブライアン・ブロンバーグ(b,pic)、トニー・ゲレロ(flh)、ギャリー・ミーク(ts)、オトマロ・ルイズ(p)、ミッチ・フォーマン(p)、コリー・アレン(p)、ラモン・スタグナロ(g)、オスカー・カストロ・ネビス(g)、アレックス・アクーニャ(per,ds)、ザ・ライジング・サン・オーケストラ・ストリング・セッション2006、2007年LAで録音 キングレコード KICJ-516 2007/5/9発売 曲名 1) ワン・ノート・サンバ 2) 波 3) コーストライン・ドライブ 4) リトル・チューン 5) トリステ/デサフィナード 6) コルコヴァード 7) ワンス・アイ・ラブド 8) イズント・イット・ビューティフル? 9) レイ・オブ・サンシャイン 10)タリア 11)エレン 12)イパネマの |
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キングレコードが誇る「低音シリーズ」といえば、一番に頭に浮かぶのは絶対的な存在感があるベーシスト、ブライアン・ブロンバーグであろう。そのテクニックは我らベースファンを釘付けにし、何時も魅了してやまないのである。今回のニューアルバムはボサノバのアントニオ・カルロス・ジョビンのトリビュート作品集だが、ブライアンの親友でもあるコリー・アレン指揮のストリングスを交え、素晴らしいベースを聴かせてくれる。最初の1)「ワン・ノート・サンバ」からいきなり、ゴリッとしたウッドベースが唸りを上げる凄みがたまらない。ブライアンお得意の分厚いベースが、腹身にしみて気分爽快になってくる。だが2)「コーストライン・ドライブ」では一転して、「おやぁ・・これはギターの演奏か!」と感じさせる音色は、実はブライアンの特殊なアコースティック・ピッコロ・ベースでの演奏だ。最初のところでギターにチューニングした音色を上手く出していくところなど、他で聴けない見事なものだ。またゆったりしたソロは勿論ウッドベースでゴリゴリと奏でていくところなど、全曲を通して満足するもので、何時ものように聴き応え十分といったものだ。12)「イパネマの娘」では、陽気に跳ねるようなエネルギー感溢れるリズムには思わず「これ“たまらないね”!」と声が出る。ブライアンのベースファンであれば分厚いウッドベースに限ると言いたいのだが、このピッコロ・ベースも次第に聴きなれてくると、このボサノバのリズムによくマッチした音色であることが分かってくるのである。それにしてもやはりブライアン・ブロンバーグは、何をやらしてもテクニシャンだと改めて感心させられた。 サウンドは言わずと知れた音の良い“低音シリーズ”で、分厚いベースの音とストリングスとが上手く調和し、爽快である。よくまとまったリズム群もメリハリの効いた音色で奏でていく。太いベース、癒されるピッコロ・ベースとのコンビネーションも抜群のもので聴き応え十分といえよう。 ブライアン・ブロンバーグは、断然素晴らしい素質を持っているが、「今回はどんなベースの妙技が聴けるか」何時もベースファンをドキドキさせてくれることに魅力を感じるのである。次回作も今から楽しみだ。 |