朝夕の冷え込みに、秋の深まりを感じる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。 京都商品部の朴 高史です。 そんな落ち着いた気分になる秋に、どっぷりと浸りたくなるのが映画や読書。 そんなわけで、今回は映画と本のお話です。 まずは映画から |
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『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』 2013年 アメリカ 監督 ジョエル・コーエン イーサン・コーエン 脚本 ジョエル・コーエン イーサン・コーエン 製作 スコット・ルーディン ジョエル・コーエン イーサン・コーエン 音楽 T・ボーン・バーネット 製作総指揮 オリヴィエ・クールソン ロバート・グラフ ロン・ハルパーン 出演者 オスカー・アイザック キャリー・マリガン ジョン・グッドマン ギャレット・ヘドランド ジャスティン・ティンバーレイク 第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で審査員特別グランプリを獲得した。 [ウィキペディアより] |
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日本では、ほとんど話題にならなかったこの映画、(監督がコーエン兄弟で、ジャスティン・ティンバーレイクも出ていて、カンヌで賞も取ってますが) 物語はガスライトカフェで歌うオスカー・アイザック演じる売れないフォークシンガー ルーウィン・デイヴィスのシーンから始まり、 店の外で見知らぬ男に殴られます。そして数日前のシーンへ。 知り合いのアパートメントで目覚めるルーウィン・デイヴィス、そばには猫がいます。 猫を追いかけ部屋から出てしまうルーウィン・デイヴィス、オートロックが掛かり猫と共に締め出されてしまいます。 仕方なく猫を抱き次の宿である別の友人宅へ向かい(そんな生活をしてます)、そこで猫に逃げられてしまいます。 その後、猫と共に運に逃げられてしまったルーウィン・デイヴィスに次々と不幸が訪れるというお話です。 |
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舞台は、ボブ・ディランがまだいない60年代初頭のニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ、フォークブームはまだまだ後のことです。 ルーウィン・デイヴィスのモデルは、ディランとも関わりの深いフォークシンガー ディヴ・ヴァン・ロンク。 黒人風にブルースを歌う彼のスタイルは、当時は珍しかったようで、ディランも強く影響されています。 (ディランのデビュー・アルバムの中の「朝日のあたる家」は、ガスライトカフェで聴いたディヴ・ヴァン・ロンクのスタイルを盗んだものらしいです。) ディランの師匠の一人であり、ディランに恨みを抱く一人でもあります。 個人的に興味深かったシーンが、老社長と老事務員の二人しかいないちっぽけな所属レコード会社のシーンと、 コロンビアレコード社内のレコーディングスタジオでのレコーディングのシーンです。 当時のフォークミュージック事情がリアルに再現されてます。 |
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フォークの名曲が並ぶサウンドトラックは、T・ボーン・バーネットによるもので、公開時にはAnother Day, Another Timeと題されたコンサートも開かれました。 ジャック・ホワイト、ジェーン・バエズ、ギリアン・ウェルチ、エルビス・コステロや、何とパティ・スミスと豪華メンバーも含まれたコンサートは、CDや映像にもなってます。 |
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続いて映画をもう一本 |
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『ジャージー・ボーイズ』 2014年 アメリカ 監督 クリント・イーストウッド 脚本 ジョン・ローガン 製作 ティム・ヘディントン グレアム・キング 製作総指揮 ボブ・ゴーディオ ティム・ムーア フランキー・ヴァリ 出演者ジョン・ロイド・ヤング エリック・バーゲン マイケル・ロメンダ ヴィンセント・ピアッツァ クリストファー・ウォーケン 第39回報知映画賞・海外作品賞 第88回 キネマ旬報ベスト・テン外国映画ベスト・ワンおよび外国映画監督賞(クリント・イーストウッド) 第38回日本アカデミー賞 優秀外国映画賞 [ウィキペディアより] |
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2006年にトニー賞ミュージカル作品賞を受賞し、現在もブロードウェイ他で上演を続ける傑作ミュージカルの映画化作品。 (オリジナルミュージカルを重視した演出に、アメリカでの評価は低いようです。) フランキー・ヴァリ アンド ザ フォーシーズンズの結成、成功、決別、そしてロック殿堂入りへとつづく半生を、時々の風俗とヒットナンバーで綴られた物語です。 ニュージャージーのイタリア人街で育った、奇跡の歌声を持つ青年フランキー、やがて近所の不良たちとバンド活動で街から出ようと考えます。 その頃に若き天才ソングライターのボブ・ゴーディオとの運命の出会い、いろいろあってフォーシーズンズの誕生です。(タモリ倶楽部のオープニング曲「ショート・ショーツ」はフォーシーズンズ加入前のボブ・ゴーディオの作です。) 見所は、シェリー(Sherry)、恋はヤセがまん(Big girls don't cry)、恋のハリキリボーイ(Walk Like a Man)と三連続ヒットの誕生シーン。 アメリカンバンドスタンドの出演や、メンバーのエピソードなどミュージカルならではの演出が楽しいです。 |
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山場はやはり、いろいろあったフランキーがファルセットなしで歌う 君の瞳に恋してる(Can’t Take My Eyes Off You)のシーンです。(映画でのこの曲の誕生エピソードは実際とは違うようです。) |
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個人的に気になったシーンは、デビュー前のフランキーとボブが曲を売り込むために訪れる あのブリルビルディングのシーンです。 ずらりと並ぶ音楽出版事務所、ある事務所では、歌はいいが黒人じゃないとダメだと言われるシーンに時代を感じました。 あとはやはりレコーディングシーン。あとで紹介する本によると、この時期のVEEjayの録音は、あのビル・パットナムが作ったシカゴのユニバーサル・サウンド・スタジオ。 映像では、ラッキングされたアルテックグリーンの機器とモニター用のA7が映ってます。 この春には、オリジナルキャストによる東京公演があったようですし、来年には日本人キャストの公演も決定してるようですが、言葉の問題もあるので、まずは映画が正解かと思います。 |
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次は、レコーディングの現場に関するニ冊の本の紹介です。 まずはこちら |
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スタジオの音が聴こえる 「名盤を生んだスタジオ、コンソール&エンジニア」 高橋 健太郎 作 (DU BOOKS)2015年 |
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レコーディング・エンジニアでもある音楽ライターの高橋 健太郎氏が、アナログ録音全盛時のスタジオの深部にマニアックに迫っております。 ステレオサウンド誌の連載ということもあり、コンソール、レコーダー、マイク等の機器類に重点を置いた内容で、ベアズヴィル・スタジオから始まり、 A & M・スタジオ、コンパス・ポイント・スタジオなどと高橋氏らしく、あとコニーズ・スタジオや、ハンザ・スタジオのドイツのスタジオや、 シカゴ音響派のsomaエレクトロ・ミュージック・スタジオなどが含まれる広範囲な内容で、面白かったです。 |
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もう一冊がこちら |
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レコーディング・スタジオの伝説 「20世紀の名曲が生まれた場所 」/ 原題 Temples of sound (P-Vine Books) 2009年 ジム・コーガン ウィリアム・クラーク 作 奥田祐士 訳 |
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アメリカのポピュラー音楽の黄金期に活躍したエンジニアや、そのスタジオ、名曲たちが生まれた時のミュージシャンたちとのエピソードなどを、 当事者や関係者へのインタビューを中心に描かれたこの本は、偶然や奇跡、また悲劇など、まるで神話や伝説が語られるかのように思われました。 中でも最も興味深かったのが、ヴァン・ゲルター・スタジオのエピソードで、 ブルー・ノートやプレスティッジ、ヴァーヴ、インパルスの5、60年代のジャズの録音のほとんどが、ルディ・ヴァン・ゲルターという一人の人物による仕事だということ、 また、その人物が実は眼科医で、録音は副業でなされていたこと(60年代にはレコーディングが本業になったようですが) その録音場所は、彼の自宅のプライベート・スタジオだったこと(50年代は両親と同居されてたようです。)と、まさに神話のようです。 彼は、子供の頃からそのスタジオが遊び場であり、高校生の頃、友人らと録音されたレコードが一部で評判になってのことのようです。 |
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シグマ・サウンド・スタジオ、A&Rレコーディング、フェイム・レコーディング・スタジオの三箇所のエピソードが二冊の本で重複してるのですが、これは、多分高橋氏の思惑があってのことかと深読みしております。 |
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そして、二本の映画を鑑賞し、二冊の本を読んだ私は、やはりレコードを買ってしまいました。 |
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聴き馴染んだ筈のザ・フォーシーズンズのシェリーのわずか二分足らずの時間が、少し違って感じられました。 では、今回はこれでおしまいです。 失礼しました。 |