いつもお世話になっております。 ハイファイ堂 京都商品部の滝本です。 早くも日々の暑さが夏を思わせるそれになってきております。 一年の中でも、特にこの季節の変わり目に身構えてしまうのは、 厳しい暑さに対処せよと体が警告を発しているのか、 はたまた幼き日の夏休み前のあの期待感たっぷりになる思い出が 甦ってくるからなのかは分かりませんが、 何にせよ、今年も例年以上に暑い夏になるとの予想です。 皆様共々、体調には十分に気を付けたいと思います。 |
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さて、京都商品部では主だってスピーカーのメンテナンスをさせて 頂いておりますが、そんな中で最近よく見受けられるのが スピーカーの袴(はかま)部分の損傷がひどいものです。 長年の経年劣化が進んでいるものや、湿度の高いここ日本で しっかり水を吸ってふくらんでしまった様なものや、 そもそもの本体重量に袴の素材が合っていない様なものや、etc・・・。 木材、合板、パーチクルボードなどで形作られているこの部分、 スピーカー本体を支える重要な場所でありながら 普段は気にかける事も少ないであろうなかなか日の目を見ない場所です。 |
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前回の私のメルマガ(5月6日号)で同じく普段は見る機会も少ないと思われる エンクロージャー内部の吸音材廻りを取り上げさせて頂いたので、 今回も店頭などでは通常お見せ出来ない様な下からの視点で ご案内させて頂きたいと思います。 今回もまたメンテナンス中商品からの写真掲載となりますので お見苦しい点はご了承頂きたいと思います。 |
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まず最初にこちらの写真となりますが、 これだけでなんのスピーカーかすぐにお分かりになる方は なかなか精通されておられる方かと存じます。 |
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(正解は)TANNOY Canterbury 15 です。 |
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ウォールナット材が使われた英国家具調な全体の造形が美しいスピーカーですが、 袴部分もシンプルでありながら美しいカーブを描く作りになっています。 アールを付けて削り出された木材に木組みの様な細工をあしらった合板が 継がれています。 側面の合板も、この個体は13層からなっていて なかなかの強度です。 |
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ゆがみの無い綺麗な全面のカーブに |
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後方にあたる部分も、小さな角材が補強で入り、 しっかりと作られている印象です。 重量約68kgにもなりますので移動させやすいように すべり鋲(びょう)も4カ所見られます。 この個体の袴に関しては鋲のサビが目立つくらいで 他には特にメンテナンスの必要が生じていなかったのですが、 |
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次の写真の商品、こちらに関しては相当の手入れが必要でした。 |
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(メンテナンス中) |
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SONY SS-G7です。 |
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袴のみならず、底面自体も(端を中心に)欠けや劣化等が見受けられましたので 欠けの補修や補強剤の塗布、注入、 塗装面の再塗装などを行いました。 |
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袴の材料は両端を45°にカットした角棒状のパーチクルボードで それら4本を留め継ぎしたシンプルな形です。 こちらもすべり鋲ありです。 |
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続くこちらは見てお分かりの通り、 JBL S119です。 |
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JBL S119 |
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先週(5月27日号)の京都商品部のメルマガでも 取り上げさせて頂きましたが、 インテリア的な見栄えを考慮してか ターミナルがここ底面に配置してあります。 何度もスピーカーケーブルを抜き差しされる方には不便そうです。 そこに干渉しない為に正方形の枠の様な鉄の袴が取り付けてあります。 |
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鋲ではないものの四隅に円形のでっぱりが成形してあるので 多少押して移動させやすくなっているのかもしれません。 多少、としたのは外形が幅、奥254mm、高さ1027mm(袴含む)という形の割に 重量が20kgほどしかないので、バランス的に押し所が難しいのです。 男性ならばいっその事、持ち上げた方が楽なのでは。 |
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次のこちらは一つめのカンタベリーと見比べて お分かりになる方もおられるのではないでしょうか。 |
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TANNOY GRF Memoryです。 |
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カンタベリーと比べると、同じウォールナット材、家具調なデザインでありながら 全体に直線的な仕上がりを見せているのが底面の袴にも表れています。 |
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カンタベリー同様の合板の継ぎですが、 こちらは溝に別の木材を差し込む継ぎ方がされています。 |
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補強、鋲もカンタベリーのものと似ています。 |
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他にもALTEC 847A SEVILLE |
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SS-G7の様に端が45°でカットされた留め継ぎなのですが、 底に対して袴の部品が垂直で接しているわけではないので きれいに継ぐのは少し難しいように見えます。 |
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接合部分を隠すようにプラスティックの鋲が付けられています。 |
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所々に見られるステープル状のこれは 袴材の接着の為の仮止めでしょうか。 |
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JBL Verona |
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ここまで来ると袴だけでもう立派に家具の様な存在感です。 |
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サランや彫刻部分がこの作りですから・・・。 |
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基本、四角の底面に段々と木材を取り付けていっているような作りです。 |
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こと、この部分の木材に至っては 何の為の物なのかも分かりません・・・。 → |
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本当に家具としてだけでも 部屋に置いておきたいくらいです。 |
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さて、最後は若干脱線してしまいそうでしたが 如何だったでしょうか? 私自身、スピーカーを底面から見るというのは 意外な考察があり面白く感じるところがありました。 例えば、継ぎの方法が現在ではあまり使われていない(そうです) ようなものがあったり、スピーカーにしっかりとした袴があるという発想自体、 それを置ける様な住環境があるのだなと国内外や時代の違いを感じたり、 JBL S119のスピーカーケーブルを通す為のくぼみが 思いのほか狭いのは、販売当時の1988年頃は そこまで太いケーブルは取り回しが長い使用状況では 需要がなかったからなのだろうか?などと、 文字通りまた違った方向からスピーカー事情を眺める事が出来ました。 皆様にも少しでも面白がって頂けたのなら幸いと思います。 それではまた。 |