お久しぶりです。日本橋店の永井と申します。 ハイファイ堂では、大丸さんで催事など良くやらせていただいているのですが、 今回、2014年 8/27(水)〜9/9(火)まで 大丸京都店6Fイベントホールにて 「ヴィンテージサウンドフェスタ&アナログレコードコンサート in 大丸京都店」 http://www.hifido.co.jp/magazine/shohinbu_sale/140822/index.html というイベントがあります。ハイファイ堂全店から選りすぐりの銘機を集結して音を聴いていただけるほか、今回はレコード試聴イベントもありまして、 初日の8/27(水)と、9/3(水)の12:00/15:00/18:00から をわたくし、永井が担当させていただきます。 (期間中は、毎日この時間にハイファイ堂全店からのスタッフがそれぞれのプログラムで試聴会を担当いたします。最終日9/9(火)のみ12:00/15:00の2回です。) 8/27(水)は70年代〜の日本のニューミュージックの名作を、 9/3(水)はカリブ海沿岸のレゲエやラテン音楽を中心に、 レコードをかけながら、その曲にまつわる色んなお話をしようと思っています。 お時間の合う方は是非お越し下さい。 |
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さて、今日は「バージョン違いの善し悪し」についてお話ししたいと思います。 先日(2014年前半)、大ファンであるXTCというロックバンドが1986年にリリースした名作アルバム「SKYLARKING」の新バージョンが2013年に発売されていた、というニュースを読んでびっくりしました。何度聴いたかわからないくらい大好きなアルバムで、発売当時のLP〜シングル盤そして当時リリースされたCDも買って持っておりますが、「今までのマスタリングのものは全ていくつかの楽器の音の極性が逆になっており、今回それを正したバージョンを出しました」という衝撃のニュースでした。急いで購入し、今まで持っていた音源と聴き比べましたが、なるほど元のバージョンの独特のふわっとした感じが後退し、よりくっきりと音像が安定した印象を持ちました。「より良い音になっているかもしれないけど、独特の個性が無くなったかな」というのが私の感想です。 このアルバムのプロデューサーは「天才肌の音の職人」とでもいうべきTodd Rundgren(トッド・ラングレン)さんで、レコーディング当時彼とXTCのリーダーのAndy Partridge(アンディ・パートリッジ)との確執(「もしアンディーさんのいう通りにしてヒットしなかったらXTCがレコード会社から解雇される」、というメンバーの知らない特命を受けたトッドさんがメンバーの意思よりもヒット作品作りに専念したため、アンディーさんと大げんかしながら作られた、というお話。結果シングルB面の「Dear God(後々A面に変更、ボーナストラックとしてアルバムにも収録)」が大ヒットし、XTCの首もつながって良かったのですが、2人の確執は続いているようです…)が報道され、話題にもなっていました。トッドさんのプロデュースの特徴として「独特の音色の選び方やイコライジングを施して浮遊感のある音場を作る」というのがあるのですが、ひょっとすると今回「配線ミス」だといわれているオリジナルの感じはトッドさん本人がわざとしていたのかもしれないな、とも思えます。真相は公表されていませんが…。 |
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↑左がオリジナルのジャケット、右が新バージョンです。当初メンバーは右のジャケットで出したかったが反対に合って左のデザインになったとのこと。反対された理由も分かるような…。 |
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こういったものも含め、CDのリマスター時には様々な「施し」が行われているようです。リマスターをすればするほどいわゆる「良い音」になっているはずなのですが、例えば録音時のノイズを切ったため、余韻が不自然になったり、極端な例ではイントロやアウトロが短くなることもあるようです。新しいマスタリングが、前より必ず良くなるということはなく、その時代にリスナーが求める「今の良い音」にするのがマスタリングエンジニアの使命ですので、盤によっては「僕には○年のリマスターが良かった」など、お好みがわかれることもあるかもしれません。 これから思い出す余談として「ボーナストラック問題」があります。再発盤などには、よく当時のアウトテイク(ボツになった音源)などから選んだめずらしいバージョンがおまけで付け足されているものがありますが、ほとんどのものがオリジナルアルバムの曲が全部終わったあとに付け加えられています。これはこれでデモバージョンなどが聴けてとてもうれしいおまけなのですが、オリジナルの曲順で全部を聴いて、終わったあとにこういったデモバージョンが流れてくるのが不自然に感じることが多いです(曲をプログラムしてアルバムの通りになるように聴いたら良いのですが…)。 オリジナル盤の選曲や順番、曲間の長さ(ついでにいうとA面で終わって裏返すことも)制作時にアーティストが考え抜いた上で決めた作品の大事な要素だと思うのです。それが、台無しになってしまうことになるのでは、という思いです(ちょっと細かすぎるかもしれませんが)。 こういった問題の解決策として「ボーナストラックは最初に入れてくれ!」という友達がおりました。聴く時に、最初のボーナストラックを飛ばして聴いたら、聞き終わった時にいつもの曲で終わるので、こちらの方が自然だという意見です。なるほど、と思いますが、それもどうだかな、とも思いますね。 私の意見は「ボーナストラックはなしで良い。付けるなら別のディスクを付けるか、ダウンロードキーでお願いします!」です。 |
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さて、再発のものを辛口で評価してしまった感じですが、もちろん素晴らしいリマスター、素晴らしいボーナストラックもたくさんあります。オーディオでいいますと、銘機の復活でとても良いモデルが発売されています。オリジナルとはやはり味わいが違うものも多いですが、元祖とはまた違った良さもあり、お人によっては再発ものの味わいをあえて選ぶ方もおられます。皆さんも「再発ものか…」といった偏見を捨てて、一度聴いてみて下さい。 |
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MARANTZ/MODEL 7SE 銘機MODEL 7の復刻モデルです。同じく90年代には相方ともいえるパワーアンプの復刻版、「MODEL 8BR」も発売されました。 |
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MCINTOSH/MC275R この名作は時代の要請によって何度も再発されています。再発モデルの中でも音の差があり、それぞれにファンの評価があるのが名作たるゆえんなのかも知れません。 |
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LUXMAN/SQ38D復刻 1998年に500台限定で生産された復刻モデル。表から見たデザインは完璧に再現されています。「オリジナルよりも広く、現代のものよりも狭い独特のレンジ感」が一部のファンを魅了しています。 |
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Ortfon/SPU CLASSIC GE 1980年頃にオリジナルに限りなく近いものを、というコンセプトで再生産されたモデルです。シェルの材質がモールドからメタルに変更されたり、より改良が施された結果、こちらも「オリジナルよりも広く、現代のものよりも狭い独特のレンジ感」を持つ音質に仕上がっていて、幅広いジャンルを聴くファンに愛用者が多いモデルです。 |