「オーディオ風味 名曲アラカルト」 2006-1-6 音迷人 新年明けましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。 早速戌年にちなんで・・ ♪犬の快活さは「わんダフル!」 ♪犬の率直さを「一生犬命」学びましょう。 ♪元気な犬のように「犬康第一」で! |
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そうですクラシックは気取る為だったり、教養のアクセサリーではないのです。確かに曲は必死の思いで作曲され、必死の研鑽で演奏されていますから、いい加減に扱うものではないでしょうが、キチンと向き合えるようになる為にも、まずは肩の力を抜いて、音楽の友達になるように「とにかく聴いて」ください。例えば、ウィーンのニューイヤーコンサートをご覧になったと思いますが、皆さん音楽を楽しみまくっていましたね。そこをお助け出来ればと、音迷人はいろんな話をお伝えします。 それでは「オーディオ風味 名曲アラカルト」を始めましょう。 |
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1.レオポルド・モーツアルト/おもちゃの交響曲と ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 ◆ヴォルフガング・アマデウス・モーツアルト、今年生誕250年を迎えるこの有名な作曲家を皆さんは良くご存知ですね。35歳という短い生涯に多くの名曲を残し、人間とは思えぬ才能を発揮した方で、このアラカルトに何回も出てくるかと思いますが、今回はその「お父上」です。彼の頑張り?が無かったら、私たちは数々の名曲を知らない人類でありました。(私の親父の頑張りが無かったら、皆さんは・・・)それに彼は今様に言うと、ひばりママも驚く「ステージぱぱ」でした。もうひとつの顔は「キンツリ添乗員」で通用したでしょう。馬車の時代ヨーロッパ中を息子の演奏活動やリクルート活動で駆け巡ったと言います。資料によると約20年間に北はアムステルダム、ロンドンから南はナポリまで40都市近くも訪ねたのです。お父さんはバイオリン弾きで宮廷楽士として有名だったそうで、教本をものにしているとか。息子の才能を早くから見抜き活動したと言うあたりは何時の時代も変わりませんね。そういえば最近はチチロー、ゴンチチ、NY松井のとっつあん、ゴルフの藍ちゃんやさくらさんチもそうですね。 「おもちゃの交響曲」はなんといっても題からして親しみやすくまた曲も軽快で楽しいんです。三つの楽章からなる10分ほどの短い交響曲です。昔私達はハイドンが作曲したと教わっていましたが、何時頃かモーツアルトパパに替わっていました。まずはよく言う曲想が如何の背景が如何のなどと難しく考えないで、音楽、音そのものを楽しめば良いと思います。聴き慣れたおもちゃの音がふんだんに入っています。確かバイオリンとコントラバスにおもちゃ、すなわち鳥笛(カッコーやうずら?)や縁日で売っていそうなラッパと小太鼓、ネジ巻、ベルなどが加わります。 ここでオーディオチェックです。弦合奏は何時ものようにおもちゃの音に対してエッジが柔らかい広い音像で聴こえています。その中に音像がはっきりとしたおもちゃの音が楽しく鳴っています。鳥笛が鋭いが澄んでいて柔らかいこと、付帯音が付かないことです。太鼓は撥がタンと当たった瞬間の圧力が伝わってくること、それが飽和しないこと、ラッパがとぼけた感じで(実はおもちゃの為発音部がリード式で豆腐屋さんの売り笛と似ています)聴こえることなどです。オーディオチェックで意外と必要なことは音楽も重要ですが、人の声、生活音等良く「知っている音」も使うことです。一つでは音域が決まってしまいますから広くソースを求めてチェックしましょう。例えば知った方の声でチューンするのは重要としても、それだけでは百数十Hz〜数キロHzのチェックです。あの帯域の狭い電話でも彼女?の声と分かるでしょう。 耳を澄ましてオーディオチェックしているうちに音楽に引き込まれてしまいます。終楽章は弦楽部が「オイ不器用なおもちゃ達!俺たちの速さについて来れるかな」と徐々に速度を上げて繰り返します。必死で合わせるおもちゃ楽隊の真っ赤な顔が思い浮かばれて面白いですよ。お子様が居られたら是非一緒におもちゃを使って遊んでください。未来のモーツアルトが生まれるかも!それにこれから先スピーカーキャップを突っつかなくなります。 |
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◆次に数ある名曲から「皇帝」を選んだのは直接システムチェックの為にという話よりも別に記念すべき意味があったのです。 少し勉強しましょう。 バイノーラル又はステレオ(立体音響)を認識したのは何時どうしてでしょうか?日常生活では当たり前で「ステレオ」と意識しませんよね。 確か1881年パリの電気博覧会でのハイテクは白熱灯と電話機だったのです。 オペラや音楽演奏を遠く離れたホール(例えばパリオペラ座)で行い、ステージに送話器をぐるりと配し、博覧会場では見学者に音楽を聞かせるために、数多くの受話器を送話器と対にして配置したのです。つまり実況中継を電話で行ったのですね。当然電話加入者を増やす為でしょう。ある時きっと図々しい見学者が2台を独り占めにして両耳に当てたのです。このことは十分想像できますね。この時この人が「ステージが在るように(立体的に)聴こえるぞ!」と観察して言ったのが始まりだそうです。この事がその後活動する通信や音響の技術者に深く刻まれたのです。 それから数十年たって技術開発が戦争などにより加速されていたのですが、録音機もその一つでした。(年表参) |
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そうです長い間音楽を楽しみ、オーディオを趣味としてきましたら、ひょんなことで珍しい音源に遭遇するものです。高名な音声技術者から教えていただきました。 1943・1944年、人類初のステレオテープ録音のコピーです。間違いありません1943、4年です。 第二次世界大戦が終わる少し前の1943〜4年、ドイツではヒットラーの下、連合軍を相手に必死で戦っていました。何事にも総力をあげて技術開発・実用化を計っていたのですが、録音機も同様でした。ヒットラーのアジ演説と大ベルリンオケの演奏を昼夜放送で流し続けるのに良いレコーダーが必要で、開発してありました。(交流バイアステープ式で円盤録音の歪やノイズが無かったため、世界側はそれを知らずに生演説と思い、ヒットラーは夜も眠らぬ精力絶倫な男だと・・・)放送局の技師達には既に立体音の概念がありましたので、2トラックに音を収めるステレオテープレコーダーを試作して戦意高揚用?音楽番組でこっそり録音したのがこれです。 音声技術者の声が聞こえるようですね。 「ボス(ヘルムート・クルーガ氏)、新しい録音機がありますが何ですか?コレ」「へへへ、立体音て知っているだろ!その録音が出来る2チャンネルマグネトフォンだ!」「いいんですか?予算に無かったですよ!」「修理に出したら何故かダブルになってるんだよ。(ウインク)有難いものだ。ハイル・ヒットラー!今晩の大ドイツ高揚演奏会で早速内緒で使ってみるから、とっととマイクをアレンジして来い」「合点です!ボス。右左、そして中央の3本ですね。それにしても大砲が近いなー!」 |
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テープソフトはソ連に大半持ってゆかれて、残っていないようです。丁度50年目に当たる1993年、ドイツの放送局が僅かに残っている中から記念盤としてCDに落とし、世界放送局音声技術関係者のイベント時に限定配布したようです。CDノートには「このCDの内容はオリジナルテープないしはファーストコピーテープからどんな処理もせずに直接移されています」とあります。(ジャケットの顔写真が録音技師のヘルムートさんで、このCDのプロデューサーです) 音質は少々のキズや歪は在るものの驚くべきものです。部分的には現在と比べても遜色ありません。演奏も緊迫した戦争時局のなかで、特にP協「皇帝」は祈りにも似た集中力で綴られている様に感じます。 所々に聞かれる(一楽章2分10秒や5分20秒前後ほか)大砲(高射砲?)の音には切ないものを感じます。かの温厚そうなギーゼキングが戦争の恐怖と戦って必死で演奏している姿を思うと、争いの虚しさを感じます。(この9年後来日時の読売新聞写真。生きていて良かったですね) 若き日のカラヤンがブルックナーを入れています。やはりナチ協力者だと? 何時も戦争は芸術家には難しいときですね。私は弾劾できませんが、ナチと戦った(抵抗した)芸術家もいるので・・・ カラヤンのこの録音も少し中域が硬い音ですが、金管の咆哮が良く捉えられており、全体に曲の持つスケールの大きさも現しています。 <CDタイトル>(写真) The 50th Anniversary of Stereophonic Tape Recording(1993,AES Convention) 注:AES=Audio Engineering Society 曲目 ベートヴェン ピアノ協奏曲 第5番 P:ワルター・ギーゼキング 指揮:アルトゥーロ・ローター 大ベルリンRundfunk(放送?)管弦楽団 1944年録音 ブラームス 管弦楽のためのセレナーデ 第1番 指揮:ワルター・ルーツ 大ベルリンRundfunk(放送?)管弦楽団 1943年4月録音 ブルックナー 交響曲 第8番 終楽章 指揮:カラヤン ベルリン歌劇場管弦楽団 1944年9月録音 |
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さて「皇帝」はベートーヴェンがつけた愛称ではないそうです。かつてベートーヴェンが交響曲第3番を奉げ様としたほど尊敬していたナポレオンが自ら「皇帝」に就いたので激怒、失望し、「ナポレオンのために」と書いた表紙を破り捨て「ある偉人の思い出のために」と書き換えたと伝わっています。そのナポレオンが率いるフランス軍がオーストリアを攻め、ウィーンを落とした年の1809年に大砲轟く中、完成させたそうです。正にいわく因縁?先に上げた初のステレオテープ録音の戦時状況に似ています。べートーヴェンが俗物というナポレオンのイメージで「皇帝」と呼ぶ訳が無いですね。この曲をお聴きになれば壮大で華麗で、大きく構築されている音楽と感じられ、誰でも理念の「皇帝」と呼びたくなるでしょう。お奨め盤は古いですがバックハウス/イッセルシュテットです。演奏は実に人間肯定的で・皇帝的です。新しくは我が中村紘子さんのも良いようです。 第1楽章フルオケの和音で始まり煌びやかな小さなカデンツがあり、元気の良い荘重な眺めのオケがあります。この中でVnがハスキーに鳴り、昔ハイファイだと言い合ったものです。ティンパニーがしっかりきっちり聞こえると最高でしょう。ピアノは絶えず細やかに鳴りつづけ音質は晴れやかでスタンウエイの音が合います。2楽章は幻想的で、内省的な趣です。この第2楽章で、ベートーベン直筆楽譜の欄外には「夜明けのように」と書いて有るそうです。弱音弦の漂うような雲のような音色がちゃんと出るか、ゆっくりなピアノの一音一音が響く時、ピアノの箱(筐体)がイメージできるかです。3楽章には切れずに入りますが、ピアノが生気あふれる主題を奏でますからすぐ解ります。私ははじめて聴いた時から、ラジオ体操をイメージしてしまい、未だに抜けません。最後の最後でティンパニーとピアノが緊張関係で対話*したら、ピアノがまるで理想の頂上に駆け上るように走って万歳!です。フルオケが歪まず、鳴ってる楽器がわかると最高です。 *ティンパニ対話翻訳:P「音迷人よ!俺がこいつはと目をつけていたナポが、我がもの顔で皇帝になりやがった。俺は情けないよ畜生め!」T「べーさんよ。大抵の人間はあんなもんさ!元気を出しな。そうだあんたが皆を音楽で引っ張っていきゃあ良いんだよ」「え?あ!そうかそうだよな!では」ダダダ・・ 「オイオイ・・あれ初夢か!」 つづく |
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ご愛嬌:たまたま有ったんですピッタリな飾りもの!下戸の私がゆえに残ったブランデーナポレオン? おまけ:下記のようなメモがありました。 ベル研のステレオ収録再生実験 上記電話レシーバーによるバイノーラルに対し、スピーカーによる「ステレオフォニック・システム」の大がかりな実験は1933年よりベルで行われた。 マイク数2または3,伝送、SPも対応して同数で、どの方式が原音場に近いか求めた。結果3チャンネル方式であった。 これをもとに、ワシントン〜フィラデルフィアを結んで、ストコフスキー指揮で3チャンネルステレオ伝送を電話線で行った。又有名な映画「ファンタジア」は3チャンネル光学式録音となっている。(これでこの映画がストコフスキー指揮なのが理解できました。オケもフィラデルフィアと思いますが、記憶無し。1940年だそうで随分むかし、やはり「ある情熱」の人達がいました。) |