「オーディオ風味 名曲アラカルト」 2006-5-19 音迷人 20.ニコロ・パガニーニ/ヴァイオリン協奏曲 第1番 パガニー二さんはロボットのように高度な技術を開発し発揮しました。 (白いのは7,8年前の産業用ロボットの模型です。台は横にしたSB−6スピーカー) |
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不完全ながらVn協奏曲は6曲あるそうですが、1,2番しか聴いていません。2番の三楽章は「鐘:ラ・カンパネラ」で有名ですね。 「パガニーニのギター曲は多いのです」と聞くと「えーヴァイオリン曲じゃないの!」と思いますね。でも彼はギター曲ないしはヴァイオリンとギターの曲をかなり書いているんです。私も良く知らなかったのですが、一寸調べてみました。 |
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ニコロ・パガニーニ(1782〜1840)はイタリアはジェノバに生を受けた。両親は音楽家ではないが大変音楽好きで、弦楽器などをこなすほどで早速わが子にギター、マンドリン、ヴァイオリンを教えたと言う。パガさんは父親の手ほどき(上手く出来ないとメシ抜きと厳しかったようです)や先人のヴァイオリニストにレッスンを受けて上達しました。ここまでなら良くある話です。彼は自分の手の特徴も生かし、高度で独創的な奏法を編み出すのです。それが従来の技術と比べて跳びぬけていたので、悪魔に魂を売って技法を得た!とまことしやかに囁かれる様に成ったそうです。パガニーニ作曲「魔ヴァイオリンの奏手」は無かったっけ?似たのはウェーバーでしたね。彼の容姿、服装、言動などから大変個性的に受け取られ、パガニーニブームがいろいろな面であったようですが、経営?を誤り長続きはしなかったようです。それはつまり後継者の育成が出来ていないこと、楽譜をスイスイと出版しなかったからだそうです。つまり開発した凄い技術なりを守りすぎたのでしょう。偏狭質なケチという人まで居ます。 |
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それはさておき彼も人の子、サボりもすれば恋もします。二十歳そこそこで表立った活動をせずフィレンツェの女性ディダを愛したそうです。その女性はギターの弾き手と言われており、デュエットを楽しむためか、ギター曲やギターとヴァイオリンの曲を書いたと言う訳です。(写真横)このようにギターと縁が深かったので作品も多かったのですが、ギターの奏法などをヴァイオリンにも取り入れたそうです。 写真のCDを改めて聴きますと、どの作曲家よりもロマンチックで甘いです。しかし聴き出して1,2曲で恋は成就しなかったとすぐ解りました。何故って彼はあまりにも自己チュー?だったからです。皆さん誰だってVnとギターの為のソナタと有ればギターそれも彼女の楽器を少なくとも半分近くは陽が当たるように書きますよね。それが90%以上いわゆる伴奏に回っているのです。まだ発達していない頃のギターでしょうがパガさんには期待したかった。聴くわたしも辛いが、彼女はもっと辛いでしょう。「何よ!私にばっかり刻ませて、一人有頂天で踊ってるわ。私にタダで伴奏させるの!」作曲は同時進行ばかりではなく回想的に書かれたのもありそうです。「愛の二重奏」と言うのがあって、「はじまり〜調和〜歓び〜いさかい〜愛のしるし〜別れの知らせ〜別離」と言う副題がついておりかなり笑えました。曲は素晴らしいので、もっとVnピースで弾かれると良いですね。 |
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それではヴァイオリン協奏曲第1番(1818年36歳ごろの作曲)で、何時ものようにオーディオチェックを致しましょう。基準盤は 庄司紗矢香/メータ/イスラエルフィル盤を使いましょう。(写真下)この曲は3楽章から出来ています。音迷人はこの曲のあだ名を「バイオリンと大太鼓の為の協奏曲」としたいです。か細いヴァイオリンに対して、絶えず太っちょな大太鼓が鳴らされています。フルオケ「進行」のときはほぼ鳴っており、ほとんどパガさんの「信仰」に近いです。本当にこれほど使っている曲を知りません。(駄洒落は音迷人の信仰に近いです(-_-;)) |
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★第1楽章:初めの導入の和音からドドーンときます。それが終わって活発な長い3分間の序奏の間大太鼓が刻まれています。これを確りと深々と再生する必要があります。何時も申し上げる低音の大きさが出ていると、臨場感がグッと高くなります。この曲で「1999年いパガニーニ国際Vnコンクール史上最年少初日本人優勝者」(ふーこれも長い)庄司紗矢香さん17歳のデビューCDとしてのヴァイオリンがやおら鳴り出します。情緒過剰にならず丁寧に弾き進みます。ヴァイオリンの音は柔らかくどんな響きも抜け落ちずに録音されています。5:22からのVnが唄う部分もそうですが、この楽章ではVnの割りと低い音を使ってあるように思いますので、その雰囲気つまり含みの有る響きや弾んだ感じを味わってください。16:07〜長いく難しそうなカデンツァでは音が頻繁に上下しますし重音も沢山聴かれます。曲芸的な演奏が数秒ごとに次々と出てくるそうですが、素人の私にはCDで聴く限り本当の難しさが解りません。現代のヴァイオリニストはすまし顔で弾いちゃうのですから、パガさんもビックリでしょう。 |
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第2楽章:他の多くの協奏曲のように静かな入ではなくドカーンときます。その後は憂いの有るVnが歌います。2:30からのVnにつけて低弦中心のピチカートが良く聴かれます。この盤はブーミーでは有りません。ヴァイオリンは相変わらず伸び伸びとゆっくり弾かれています。演奏ノイズもしっかり入っています。最後もドカーンと。 |
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第3楽章:弓を跳ねさすスタッカート奏法?で始まり全体に同じパターンで進み、次にフラジオレット倍音奏法それも二重のが出てきますが、ここは一寸苦しくたどたどしく聴こえてしまいました。Vnの高音部がかなり多くなりますが、オケは相変わらずジンタです。この辺の対比で、オーディオ風味に登場したのがバレバレ。速いパッセージでも艶やかなVnなのが凄いのでしょう。Vnの音域は196Hz〜3136Hzですから5倍音で16KHz、7倍音で22KHzですからスムースに伸びていることです。この音程が弾かれる確立は低いので、あまり神経質にならないほうが良いでしょう。高音の聴こえ方はビロードのように滑らかで、柔らかくトゲトゲしていないことの方が重要です。5:33〜やおら調子を変えてレガート風に手を変え品変え(奏法)洒落た旋律を歌います。その都度金管がプポーと終いで応える面白い構成で進みます。9:47トロンボーンがとぼけた受け応えをしますが実にそれらしい音を出しています。短いが2回出てきて終わりますので、確認してください。(指揮者のアイデアで強さは替わるでしょう) 横の写真はお姉さん格の五嶋みどりの極めつけ、パガニーニの有名曲:カプリース(24曲全曲)盤です無伴奏ですからVnの全てが聴けます。(オーディオ的にはホールとの協演ですかね)CDは3回ぐらい再発してます。是非聴いてください。 つづく |
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◆◇◆ところで「オーディオ風味 名曲アラカルト」は20回を数えましたので、このタイトルでは少し休みをいただき、その間取材してチャージしましょう。 暫くはオーディオとは限りませんが適宜何かをお伝えします。皆様も応援寄稿をお願いします。「オーディオ雑談カフェ」としましょう!「お帰りなさいませ!ご主人様!」とは言いません。◇◆◇ |
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おまけ:◆姉さんのCDを勧める予定にしていましたら、弟の五嶋龍さんが下記TV番組で出てきました。 大変気取りの無い親しげな音楽が彼の特徴と感じます。変な欲を持たずに、何時も両手を広げて居て欲しいですね。偉大なお姉さん(みどりさん)が居るのに良くこれまでに成られたと感心しています。 |
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◆タイトルの写真を撮った時、児童用バイオリンで小さいが、どれ程のものかなと考えました。翌日のTVで龍さんがご自分が使ってきたサイズの一覧ですと、並べてくれました。(これも凄いタイミングです)そして一番小さいのを取り上げキラキラ星?を弾きました。するとパガニーニの比率になったではないですか!パガさんは背や手足が伸びる体質(病気)だったそうです。上部挿絵参照 |
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◆それではサイズはどうなっているのでしょうか?銀座ヤマハのヴァイオリン売り場で見つけましたので許可を貰って写して来ました。これは身長を基準に分数で示されたサイズを選ぶための参考表です。手の長さ肩周りの骨格で変わるそうです。この分数なんですが長さ比ではないようです。10分の1では赤ちゃんでも弾けません。いろいろ考えたのですが体積比の意味のようです。(未確認) これで判断すると、家にあったタイトルに使ったVnは3/4でしょう。 |
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◆コル・レーニョ奏法の写真を作れました。弓がひっくり返されて木部が弦を叩いています。(NHK−TV録画から) |
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◆ヴァイオリンは弓で弾く擦音楽器ですが、基本的な本体構造などギターや三味線とほぼ同じです。そこで目に付かないヴァイオリンの仕掛けについてお話します。 ★1.ヴァイオリンの中には何が棲んでいるかご存知ですか?そうですコンチュウなんです。 ★2.バイオリンの裏町には流しのヴァイオリン弾きが寄るバーがあるんです。 ★3.パフリングは?イタリアのケーキでしょうか? |
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★1.ヴァイオリンにはF字孔と言うのが空いています。ヴァイオリンの不思議ですが、音にとっては良い細工なのです。そして表板と裏板の間に、振動をコントロール(結合、伝達、突っ張り)する一本の木製の棒、丁度太目の箸ぐらいの棒が入れられています。これが「魂柱」なのです。音をより磨く魂の柱とはいい名前です。工具を使ってF字孔から立てられます。(写真横) ★2.写真に撮れませんがバスバーは表板の裏面にほぼG線沿いに取り付けてあります。構造的な補強や張りのある低域、音量を得る為かと思います。 以上の2つの仕掛けは大体駒の足の下に夫々架かっているそうです。振動伝達源の駒の足から貰っているということでしょう。 |
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★3.どのバイオリンにも胴体の表裏の縁にぐるりと一周筋が入っています。これは黒白黒三層の木の帯を象嵌細工のように埋め込んであるのです。 このリングは模様としては直ぐ理解できますが、後の2点は聞いてなるほどでした。お裾分けしますよ。 1.手で扱う物ですから、何かにぶつかったりしますが、縁から来る板の割れをこの部分で食い止めるのだそうです。つまり木目がリングで繋がっているので割れない(開かない)わけですね。 2.以下の件が特にびっくりです。振動のコンプライアンス(動き易さ)を上げてるそうです。この細い帯を埋めるのに板に2mmほどの溝をほります。響板にしてみればそこが薄くなるのです。少し大胆なたとえを使いますと、スピーカーのエッジと同じ効果なのです。見た目は超フィクスドエッジですが、こういう共鳴体モードでは効果がそのように等価的になっているのですね。 ★このように振動に関し無駄なく汚さず空中に伝えようと、いろいろな工夫がありますが、あるヴァイオリニストが仰るには履く靴のかかとの材質(硬さなど)で音が変わり、遠くにも届くそうです。身体を伝って床に届くモードが靴底で変わるというのです。余計な振動を取るというオーディオ再生側の逆みたいですが、弾いてるご本人が仰るのですから、間違いありません。 写真は4,50年ほど前の安い子供用鈴木ヴァイオリンで、草臥れてしぼんでいますが、一応パフリングも施されています。中を覗くとネームプレート紙に[Copy of Antonius Stradivarus]と書いてありました。 |