「オーディオ雑談カフェ」 2006-10-20 音迷人 16.愉快・爽快・快録音? 無音の静寂な空気を破って炸裂するフルバンドの音響が飛び出してきて、まず身構えない人は居ないだろうと思うほど素晴らしい録音に出会いました。正にリスナーをときめかせてくれるCDなのです。それはハイファイ堂メルマガ194号に掲載されていたコン&カプのおすすめCD「スウィング・スウィング・スウィング」です。 http://www.hifido.co.jp/merumaga/koncappu/060818/index.html |
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近藤氏の紹介によれば「稀に見るビッグ・バンド・サウンドの音に魅了された。これはマニアにとってはたまらない究極の一枚になるだろう。」とあります。 実は私はたまたまクラシック系で音楽シーンを楽しんできました。他のジャンルが好き嫌いというよりも、正直あれこれ追う能力、財力?が無かったのです。それでもオヤジが聴いていた民謡、演歌系、姉のポップスやジャズ系、育児中での童謡、アイドル系を耳にはしていました。いい音楽、歌があります。しかし先にも述べた理由でオーディオ再生の目標、即ちソースをクラシックでやっていました。ふとよそのジャンルの再生では我がシステムはどれ程なのだろうと思うことがありました。時々FMやレコードでちょっかいを出してみましたが、これだと言うのに出会うはずがありません。それで冒頭に述べた「コン&カプのおすすめCD」の近藤氏のキャッチに捕まったのです。当然ながら直ぐハイファイ堂に応募して1週間、成り行きを待ちましたが、ずぁん念!外れてしまいました。 |
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友達に顛末を話すと、このCDじゃないかとCD−Rにして送ってくれました。何と言う幸運!それっとばかりシステムのスイッチを入れ、何時ものヴォリュームにしたまま再生しました。そして冒頭文で表わした驚きです。クラシックにも中々無いパーンと張りのあるフルバンドの華麗な音響に慌てて音量レベルをダウンし、様子を見ながら音量を少し上げ直して聴くことになりました。 まず演奏者はピアノ、管、ベース、ドラムスで18名のようです。録音はニューヨークのAVATAR STUDIOSとあるます。スタジオ録音らしく補助マイクを駆使して、分離が良く、適宜クローズアップされ、バランスも偏らない 聴くには文句ないミクシングと思いました。但し、ライブで聴くのとは残念ながら音の趣が違います。私はライブ的な音響で近くの席で聞いているという設定が好きなんです。ですからこのCDは残響要素をもう少し増やすと私としては嬉しいのです。ですがストレスなく録音していることは何にも変えがたいフルバンドの楽しみではないでしょうか。このCDの音の強くて綺麗な部分はあたかもバンドリーダーの位置で聴くようではないでしょうか?聴き進むとアルバム名の「スイング・・・」になったのですが私が思っていた曲ではないのです。確かはるか昔歌い出しで「スィング・・・4回」唱えるのがあったと思ったのですが、演奏曲は違う旋律でした。それでライナーノートを読むとどうもリーダが最近創った曲のようです。で、私が知っている曲と違うという訳です。結局聞き覚えの曲は「ムーンライト・セレナーデ」「A列車で行こう」などでした。しかし編曲が凄く、途中を聴いたら私には全くわかりません。クラシックの編曲物より複雑です。 |
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以上このCDは経験的にはLPでは聴けなかった音だと思って・・・それでもと対抗馬を探して見ました。 フルバンド系ですがラテンバンドです。(・・・表紙の写真のおけさと2Bandのおふざけが解りましたね!)これは大変珍しいフルバンドのダイレクトカッティングによるLPで録音は1976年です。隣の写真がそのジャケットです。私が曲がりなりにも、オーディオルームもどきやシステムを改善して来ましたが、忘れていてずっと聴いていなかったのです。購入した当時は何度か聴きましたが、少し歪っぽくうるさい録音だったと記憶していました。 |
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横の写真はその帯ですが、オーディオマニアへの殺し文句が書かれています。 再生すると昔のイメージと違ってやはり少し高音よりですが、ラテン固有の打楽器などの切れのよさ、レンジ感などはCDに負けていません。分離も一寸の差です。システムを変えてきて、今浦島的に聴くとその改善効果がスパッと解りますね。日々の進化は僅かでも自信が無くなったら、記憶との勝負でしょうが、こんな聴き方で確認する手も有りそうです。CDに負けているのはダイナミックレンジとスクラッチノイズ、そしてゴーストノイズです。ご存知と思いますが、ゴーストノイズとはカッティングしている時、隣の溝を僅かにその信号で変調してしまう事です。ピアニッシモや導入溝で一周前や後の音が僅かに聴こえることがあります。ダイナミックレンジはノンリミッターと書いてありますので、演奏音にサーボ的に調整した聴こえ方はありません。ですがやはり演奏で押さえるか初期設定レベルで押さえているように聴こえます。それとヴァリアブルピッチでなく最大音を決めてそのピッチで送っているので、収録時間は短く成りますね。それにしても現代の音が伸びやかに出るシステムでは殺し文句はウソではないでしょう。ビニールせんべい一枚丁寧に焼けば美味しいんですね。 |
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このLPと先のCDとの勝負が全てではありませんが、LPのメカニカルな記録法、再生法を考えると驚くべき水準まで可能性が上がっていたのですね。このジャケットの見開きにダイレクトカッティングについて出ていましたので、見にくいかもしれませんが念のため写真を入れておきます。マスター盤になるまでの工程がかなり簡素化されていますから、それだけ音の鮮度が良くなるのが聴いても解ります。ある時期からオーデイオ的レコードの情報を見かけなくなり私も買い求めてはいませんが、最近でオールアナログ処理のLPは売られているのでしょうか? つづく |
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おまけ: 以上二つの録音盤を取り上げましたが、私の良く聴くジャンルで「これは素晴らしい録音だぞ」と最近感心したCD盤2種類をご紹介しましょう。 ◆ラベル/ダフニスとクロエ:ハイティンク/ボストンSO:フィリップス盤 1988年まで長く勤めたアムステルダム・コンセルトヘボウを去ったベルナード・ハイティンクは諸外国のオケの客演を続けたようです。1989年5月ボストンSOの定期を振ってから、好評だったこのラベルをレコーディングしたとのことです。 録音場所はボストンのシンフォニーホールでデジタル録音です。 このCDを取り上げた経緯をお話します。確か2年ほど前中古CD店で買いました。しかし恥ずかしながらフランス音楽系のラベルやドビュシーなどであまりリズムや調子の明確でない曲を進んで聴いていませんでした。そんな訳で良くある「買って積んどく」になってしまいました。今月の初めにあった定期でこの曲がありましたので、「試し酒」をしようと探し出して聴きましたところ、何とかなりグレードの高い録音ではありませんか!「積んどいてすみません!」まず音色やバランスに癖がなく、音の鮮度が高いのです。よく「CDの音はディジタル的な硬さや汚れが・・」などと批判されますが、全くそんな音は出てきません。そして分離が良くラベルの緻密なきらきらした音の粒の重なりが良く解るのです。あの有名な「夜明け」の盛り上がりなど実演を彷彿とさせるなと感じました。そして定期に出かけてビックリ、期待したように実演がCDにそっくり?なのです。オケのボリュームを少し上げたくなりましたよ。かように表現が混乱するぐらい上出来な録音です。部分的にはCDの音色が良いところも在りました。オケの違いかな? 当然「迎え酒」もしていますよ。発売が古いので今この録音が売られているか解りませんが是非探して聴かれることをお勧めします。 |
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◆つぎのCDはストラヴィンスキー/春の祭典:ラトル/バーミンガム市SO:EMIです。 ラトルさんは1955年ビートゥルズの故郷リバプールに生を受けた俊英で、現在はベルリンフィルの芸術監督を務めていますね。バーミンガム市SOとは1980年代から十数年間仕事をし、世界に通用するオケに育てたと言われています。このCDは今から丁度20年前の1986年10月に録音されたとあります。明記はありませんがディジタル録音でしょう。低音がぼやけてない分少々高音寄りな録音に聞こえますが、前出のラベルに比べ音はよりくっきりしていて、歪んでいないが鋭さのあるそして音の行き交う空間の描写が上手い録音です。出だしの「序奏」でファゴットを中心とする木管群の交差する音を聴いただけでも素晴らしさが解ります。この曲はオーディオ的にも面白い曲ですので、昔から録音競争の舞台になっていますね。大方どれもダイナミックで鮮明ですが、マルチマイク的処理が行過ぎて録音音響総体として不自然であったり、音楽的表現を犯したりしていました。それに比べこの録音は演奏の弱音のニュアンスなどを殺さず音楽的感銘を第一にしている自然さがあります。ラトル31歳の若々しい強靭な演奏も「春祭」の曲想にマッチしており掘り出し物です。他の曲の録音も人、場所、時期の違いや音の趣の違いがあるものの好録音ばかりです。このようなオムニバス盤で全て音が良いのは少ないですね。 ところでEMI盤と書きましたが、これは実は全集物の1枚なのです。小学館の「クラシック・イン」という現在実施中の隔週発行CDつきマガジンなのです。これは全50巻を確か去年の春から1巻づつ売り出し、10/15現在この45号目CDに至っています。つまり私のお奨め盤「春祭」は現在本屋さんに980円で出ています。980円でこの演奏・録音なら安いです。どうぞ少し倹約して楽しんでみては如何でしょう。この手の全集物は過去何度かあったしこれからもあるでしょう。それに選曲は誰がやっても同じようになってしまう不思議な?企画なんですね。従って少々かじってレコードを買って聴いていると、全集物は重複してしまいますね。そんな訳か私は真面目に買った事が無いので、三日坊主の悪癖を感じるような、置いてきぼりを食らったような気持ちでいました。そこで意を決して全部買ってみようと決めました。それも一括購読などという何処ぞのメルマガ配信を苦も無く受けるのではなく、自ら一巻一巻買いに行くことにしました。買い始めて暫くするとメルマガ寄稿など忙しく?なり物忘れもあって買い忘れるとさあ大変!売れる数が多いのか、仕入れが少ないのか売切れてしまうのです。7、8軒本屋を回って辛うじてつなげたり、追加を出してもらったりして買い続けました。あまりにもこの事態が多いので30巻目位から、本屋さんにとうとう定期取り寄せをお願いしてしまいました。こうして珍しくも手元に全部あり、残すところあと5巻というところまで来ました。 |
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