ハイファイ堂メールマガジン

こんにちは。レコード店の矢田です。今回のメルマガは途中でございました、真空管6L6シリーズについてです。その6L6シリーズの中でも最も玄人向けであり、最も高価でもあるKT66についてとりあげます。


左　初期ST管タイプのKT66 カーボンスートによるスモークがかかっているため、音質的には透明度が高いとされています。右　後期のドーム型。クリアーで丸形のゲッターリングのタイプがよく見られます。流通量も最も多いタイプです。
KT66は厳密に言えば、6L6よりもフィラメント電流が高く、プレート電圧定格も高いなど、どちらかとスーパー6L6と言った性格の真空管であり、完全互換球ではありません。これは以前でもふれましたKT77とEL34の関係と同様に、アメリカ規格の6L6に対抗すべく、英国GECが独自に開発した規格であるという事情があります。しかしKT77の場合とは違い6L6のアップチューニングモデルとはいえ、KT88やKT77のように設計から高性能を追求した高信頼球というわけではなく、他の6L6系に構造上優れているというわけではないことがよりこのKT66を特異な球としているように思います。またKT66は大別すると初期のSTタイプ、後期型のドーム型に大別され、またベースやプレート、スモークの有無、ゲッターリングの構造、数の細かな変更が繰り返され、同一メーカーの生産品としてはバリエーションが多く、そこには設計上安定的な生産・品質維持が困難であったという事情が見え隠れしてきます。

ここまでの話ですとKT66の魅力とはなんなのか分からなくなってしまいそうです。他の6L6系はギターアンプ等もふくめて多くの出番があったのにたいし、KT66は構造の不安定さから当初あまり使用される事はすくなかったようです。しかしKT66は銘機QUAD?という最良のパートナーを得てその能力を活かすことができたのです。 KT66のもつ特有の不安定さをカバーできたQUAD?はKT66の音の透明感と独特の陰影あるサウンドを上手く表現させることができたため、KT66に大きな存在価値を与えてくれたアンプであるように思います。 KT66はQUAD本来の持つ音質イメージともマッチしていたため、QUADユーザーにとってもKT66は重要な存在となったためKT66は価値ある真空管として認識されているようにも思います。

KT66のバリエーションの中で最もよく見かけるのは、後期のドーム型、クリアータイプです。これが最後期型と言われ、改良を繰り返した完成品と考えることができると思います。 KT66を他の6L6系から差し替える場合にはこのタイプを使うのが品質的にも最もベターかもしれません。透明感のなかに深みがありとても趣あるサウンドはKT66特有のものです。 KT66は特異な存在で、6L6系の中では、最も扱いにくい真空管と言えるかもしれません。それだけに繊細かつ、奥ゆかしい魅力をもっている素晴らしい真空管だとあらためて思いました。次回も６L６系の真空管について書いてみようと思います。

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