ハイファイ堂メールマガジン

はじめまして、レコード店の山本と申します。 3月に入社したばかりの新人です。今回初めてメルマガを担当することになりました。何を書けばよいのやらと悩みましたが、自己紹介がてらに自分の好きな音楽について書いていきたいと思います。私は前職はCDショップの販売員で、当時初めてバイヤーとして任された担当ジャンルがワールドミュージックだったので、個人的にとても強い思い入れがあります。なので今回はアフリカ音楽蘊蓄でいきます。
ワールドミュージックでアフリカ音楽となるとやはり連想されるのは民族音楽になるのでしょうか。当たり前ですがアフリカにもポピュラー音楽は存在します。今回は20世紀中葉以降のアフリカ・ポピュラー音楽の礎を築いたミュージシャンを紹介します。写真の男性は、Franco(フランコ)ことフランソワ・ルアンボ・マキアディといい、1938年当時はベルギー領だったアフリカ中部に位置する国、コンゴ民主共和国生まれ。Franco et le T.P.O.K.Jazzというバンドを率い、「ルンバ・コンゴレーズ」という音楽で、その後のアフリカのポピュラー音楽に多大な影響を与えました。

話が変わりますがラテン音楽(特にキューバ音楽)は主に中南米へアフリカから奴隷として連行された黒人と欧州からの入植者、先住民など様々な人種文化による混血音楽として成立しましたが、1920年代以降、ある種"先祖返り"といった形で欧州経由でアフリカ大陸にラテン音楽が伝わるようになり、モダンな音楽として高い人気を博し定着していきます。フランコが志向した音楽性は当初ラテン、特にキューバ音楽の"ソン・モントゥーノ"(リード歌手が歌い上げるメロディ・パートとコール＆レスポンスで反復するダンス・パートで構成される楽曲様式)などの模倣から始まり、次第に複数のギター・アンサンブルを重視したダンス音楽へと発展していき、その音楽形式は"ルンバ・コンゴレーズ"(コンゴ風ルンバ)と呼ばれるようになりました。
	ところで"ルンバ"は元々キューバ音楽においては打楽器と複数の人間のコール＆レスポンスからなる土着音楽を指す言葉ですが、なぜかキューバ国外へソン・モントゥーノなどが伝わる際、それらがルンバという言葉に置き換えられて伝わりました。諸説ありますが、"ソン"はシンプルに「歌」を意味する音葉なのでキューバ国外の人々に認知してもらうには少々パンチが弱い、キューバからやってきたエキゾティックな舶来音楽というのを強調するためにあえて"ルンバ"という言葉が用いられたのではないかといわれています。(日本だと"コーヒー・ルンバがそれにあたります。)
そんな事情もあってか、場合によっては"スークース"や"リンガラ・ポップ"とも呼ばれたルンバ・コンゴレーズは、1960年代以降のアフリカにおけるポピュラー音楽のひとつのスタンダード・モデルとしてサハラ以南の周辺各国へ広く伝播していきます。ちなみに、音楽活動を開始する当初はO.K.Jazzというバンド名でしたが70年代以降、フランコはバンド名に仏語で「全能の」を意味する"Tout Puissant"の頭文字を追加しFranco et Le T.P.O.K.Jazzと名乗りバンドは全盛期へと突入します。
	フランコ楽団の魅力は「ギターの魔術師」と呼ばれたフランコ自身の煌びやかなギターのアルペジオを中心とした複数のギターのアンサンブルと、ルンバ・コンゴレーズの特徴である"セペン"(コーラスが反復フレーズを繰り返し歌ったあと、ブレイクをはさんで演奏に移行するダンス・パート)を徹底的に練り上げた、ホーン・セクションを従えた大編成による鉄壁のバンド・サウンドにあります。興味を持たれた方は、「Francophonic Vol.1/2」が比較的入手しやすいかと思います。フランコが確立したルンバ・コンゴレーズからはじまり、アフリカのポピュラー音楽は多様に発展していくことになります。(終) というような感じでメルマガをやっていこうと思っています。今後ともハイファイ堂をよろしくお願いします。

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