ビートルズ登場以降ハイファイ堂メールマガジン第790号ハイファイ堂レコード

ビートルズ登場以降
ハイファイ堂メールマガジン第790号ハイファイ堂レコード

こんにちは、レコード店の松田です。いつもは60年代前半の音楽を中心に書いていますが、今回はそのちょっと後、ビートルズ登場以降について書いていきたいと思います。
50年代後半から始まるロカビリー、カバーポップスブームがあり、その後ビートルズが日本でも大流行したと同時にアメリカンポップスを主流とした音楽の人気は下火に。 65年頃からエレキブームが始まり、海外から入ってきたブリティッシュビートと日本のエレキミュージックが融合され60年代後期にはグループサウンズ(GS)が全盛期を迎えます。
	と、だいたいこの様に日本の音楽史として語られることが多いのですが、何故かブリティッシュビート全盛期である63年〜64年頃の日本で作られた音楽に対する記述が極端に少ない！カバーポップスやGSのオムニバスや書籍は山ほどあるのに、その数年だけがスポッと抜け落ちているのです。私が通っていた音楽の専門学校の「音楽史〜邦楽編〜」という教科書もその数年だけすっかり抜け落ちていました。
で、その数年がどうなっていたかというと「カバーポップスのやり方でブリティッシュビートに挑戦して大失敗」と言ったところでしょうか。当時の日本の音楽シーンは外国から持ち込んだポップスを日本人歌手に歌わせたものが主流だったため、ブリッティシュビートも例外なくその形で取り組まれました。しかし何故か上手くいかない。頑張っているのに何かが違う。全然ロックになりきらないのです。当時ブリティッシュビートの日本音楽化の渦中にいた人たちですらしっくりきていなかったようで、雑誌やマスコミでは酷評だらけ、レコードの売上も微妙、歌手達も最初は張り切っていたものの、来日する本場のロックを目の当たりにし挫折。多くの訳詞を手掛けた漣健児も後に「今見ても蕁麻疹が出そうだよ」と語る程に悪戦苦闘が続きました。
原因として・この時代までの日本の音楽の下地がジャズであったためロックに馴染みがないまま波に乗っかってしまった・日本語の歌詞がロックのリズムに乗らない・これまでのポップスはオーケストラバックでの演奏が主流であり、日本のアレンジャーの特質としてギター、ベース、ドラムだけでは寂しすぎるという考えが根強かったため、過度に豪華な演奏になってしまいロックのエネルギッシュさが欠けてしまったという点が強くありました。その為か日本の音楽史の中でもパッとせず、不発のまま終わってしまいました。ここまで酷評したようになってしまいましたが、そんなところもひっくるめて、日本でしか生まれなかった愛すべき音楽だと私は強く思うのです。正直に言ってしまうとダサい！でも最高！日本らしくていいじゃないか！と。説明が長くなってしまいましたが、果敢にブリティッシュビートに挑戦した日本のミュージシャンをご紹介したいと思います
【東京ビートルズ】ビートルズがアメリカのチャートを独占し始めた頃、顔のイケてる若い男の子達を集めて誰よりも早くビートルズに挑戦したグループ。このジャンルの代表格でもあります。本人達は楽器が弾けなかったので演奏はサポートミュージシャンが担当。絶妙に単調なコーラスライン、「プリーズ・プリーズ・ミー」に何故か入ってくるビブラフォン、「抱きしめたい」の軽やかなサックス、そしてどの曲も歌詞がとにかくスゴイ！言葉で説明しきれない仕上がりになっているので是非とも聞いてみてほしい。日本のロック史における重要な1枚として、高田文夫&大瀧詠一プロデュースで爆笑解説とともに再発されているのでおススメです。
	【スリー・ファンキーズ】カバーポップス期に人気を博したスリー・ファンキーズによるビートルズのカバー「抱きしめたい」は、カタカナ英語の極め付けと言っても過言ではない1曲になっています。日本人特有の生真面目なリズム感がいい味出してます。マンフレッド・マンのカバー「ドゥ・ワ・ディ・ディ・ディ・ディ」はキャラクターに合っていて意外と悪くないです。しかし原曲のドラマチックな間奏部分が、何故か異様に渋いギターになってしまっています。
【尾藤イサオ&内田裕也】 65年発売のアルバム「レッツゴー・モンキー」に収録の「ヘルプ」は、上記のカバーよりは演奏にロック感が出てきてます(何故か木琴がいる事には目をつぶって)。日本語の歌詞が全くリズムに乗らないのが惜しいですが、さすがロカビリー出身だけあってカッコいいです！アイドル要素の強い上記の2組より、男らしいワルな雰囲気がとってもクールです。
	【ザ・キューピッツ】二人姉妹によるデュエット。「エイト・デイズ・ア・ウィーク」や「ミスター・ムーンライト」などを歌っています。途中までカバーであることに気がつかないほどの大幅アレンジです。派手過ぎるオーケストラでビートルズ感は皆無。後に「バザズ天国」で大ヒットするお二人です。
【ダニー飯田とパラダイス・キング】スウィンギング・ブルー・ジーンズの「ヒピ・ヒピ・シェイク」をカバー。このカバーはかなり優秀で、ビートのキレの良さやソロのギターのサウンドも結構原曲に近いです。なのに最後の締めがしっかりジャパニーズポップス。あとちょっとだったのに。惜しかった。でもそんなところがたまらない。
色々ご紹介はしましたが、百聞は一見にしかずというか、とにかく聴かないことには伝わらない魅力満載です。 94年には前記しました高田文夫と大瀧詠一による「日本の音楽史を作る上での貴重な1枚」として東京ビートルズのCDが再発されました。それにより再評価を受け、去年にはシングルレコード化されました。再評価というよりも再認識という言葉の方が当てはまるでしょうか？輸入音楽の解釈、ロックサウンドの形成、日本のポピュラー音楽との折合いなど、問題にぶつかり「悪戦苦闘」する先人達の数年間があったからこそ、後のGSブームでようやく日本のロックを形成することができたのではないのかと思います。たしかに本場のロックと聴き比べてしまったら酷評が多いのも納得せざるをえない。世間的な評価は「良好！」とはっきり言い切る事はできませんが、私はこの日本人クサさが好きです。とっても。教科書からは消え去ってしまった空白の数年間ですが、この時代が後の日本のロックを作る大事な歴史だったんだなと思います。

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こんにちは、レコード店の松田です。いつもは60年代前半の音楽を中心に書いていますが、今回はそのちょっと後、ビートルズ登場以降について書いていきたいと思います。
50年代後半から始まるロカビリー、カバーポップスブームがあり、その後ビートルズが日本でも大流行したと同時にアメリカンポップスを主流とした音楽の人気は下火に。 65年頃からエレキブームが始まり、海外から入ってきたブリティッシュビートと日本のエレキミュージックが融合され60年代後期にはグループサウンズ(GS)が全盛期を迎えます。
	と、だいたいこの様に日本の音楽史として語られることが多いのですが、何故かブリティッシュビート全盛期である63年〜64年頃の日本で作られた音楽に対する記述が極端に少ない！カバーポップスやGSのオムニバスや書籍は山ほどあるのに、その数年だけがスポッと抜け落ちているのです。私が通っていた音楽の専門学校の「音楽史〜邦楽編〜」という教科書もその数年だけすっかり抜け落ちていました。
で、その数年がどうなっていたかというと「カバーポップスのやり方でブリティッシュビートに挑戦して大失敗」と言ったところでしょうか。当時の日本の音楽シーンは外国から持ち込んだポップスを日本人歌手に歌わせたものが主流だったため、ブリッティシュビートも例外なくその形で取り組まれました。しかし何故か上手くいかない。頑張っているのに何かが違う。全然ロックになりきらないのです。当時ブリティッシュビートの日本音楽化の渦中にいた人たちですらしっくりきていなかったようで、雑誌やマスコミでは酷評だらけ、レコードの売上も微妙、歌手達も最初は張り切っていたものの、来日する本場のロックを目の当たりにし挫折。多くの訳詞を手掛けた漣健児も後に「今見ても蕁麻疹が出そうだよ」と語る程に悪戦苦闘が続きました。
原因として・この時代までの日本の音楽の下地がジャズであったためロックに馴染みがないまま波に乗っかってしまった・日本語の歌詞がロックのリズムに乗らない・これまでのポップスはオーケストラバックでの演奏が主流であり、日本のアレンジャーの特質としてギター、ベース、ドラムだけでは寂しすぎるという考えが根強かったため、過度に豪華な演奏になってしまいロックのエネルギッシュさが欠けてしまったという点が強くありました。その為か日本の音楽史の中でもパッとせず、不発のまま終わってしまいました。ここまで酷評したようになってしまいましたが、そんなところもひっくるめて、日本でしか生まれなかった愛すべき音楽だと私は強く思うのです。正直に言ってしまうとダサい！でも最高！日本らしくていいじゃないか！と。説明が長くなってしまいましたが、果敢にブリティッシュビートに挑戦した日本のミュージシャンをご紹介したいと思います
【東京ビートルズ】ビートルズがアメリカのチャートを独占し始めた頃、顔のイケてる若い男の子達を集めて誰よりも早くビートルズに挑戦したグループ。このジャンルの代表格でもあります。本人達は楽器が弾けなかったので演奏はサポートミュージシャンが担当。絶妙に単調なコーラスライン、「プリーズ・プリーズ・ミー」に何故か入ってくるビブラフォン、「抱きしめたい」の軽やかなサックス、そしてどの曲も歌詞がとにかくスゴイ！言葉で説明しきれない仕上がりになっているので是非とも聞いてみてほしい。日本のロック史における重要な1枚として、高田文夫&大瀧詠一プロデュースで爆笑解説とともに再発されているのでおススメです。
	【スリー・ファンキーズ】カバーポップス期に人気を博したスリー・ファンキーズによるビートルズのカバー「抱きしめたい」は、カタカナ英語の極め付けと言っても過言ではない1曲になっています。日本人特有の生真面目なリズム感がいい味出してます。マンフレッド・マンのカバー「ドゥ・ワ・ディ・ディ・ディ・ディ」はキャラクターに合っていて意外と悪くないです。しかし原曲のドラマチックな間奏部分が、何故か異様に渋いギターになってしまっています。
【尾藤イサオ&内田裕也】 65年発売のアルバム「レッツゴー・モンキー」に収録の「ヘルプ」は、上記のカバーよりは演奏にロック感が出てきてます(何故か木琴がいる事には目をつぶって)。日本語の歌詞が全くリズムに乗らないのが惜しいですが、さすがロカビリー出身だけあってカッコいいです！アイドル要素の強い上記の2組より、男らしいワルな雰囲気がとってもクールです。
	【ザ・キューピッツ】二人姉妹によるデュエット。「エイト・デイズ・ア・ウィーク」や「ミスター・ムーンライト」などを歌っています。途中までカバーであることに気がつかないほどの大幅アレンジです。派手過ぎるオーケストラでビートルズ感は皆無。後に「バザズ天国」で大ヒットするお二人です。
【ダニー飯田とパラダイス・キング】スウィンギング・ブルー・ジーンズの「ヒピ・ヒピ・シェイク」をカバー。このカバーはかなり優秀で、ビートのキレの良さやソロのギターのサウンドも結構原曲に近いです。なのに最後の締めがしっかりジャパニーズポップス。あとちょっとだったのに。惜しかった。でもそんなところがたまらない。
色々ご紹介はしましたが、百聞は一見にしかずというか、とにかく聴かないことには伝わらない魅力満載です。 94年には前記しました高田文夫と大瀧詠一による「日本の音楽史を作る上での貴重な1枚」として東京ビートルズのCDが再発されました。それにより再評価を受け、去年にはシングルレコード化されました。再評価というよりも再認識という言葉の方が当てはまるでしょうか？輸入音楽の解釈、ロックサウンドの形成、日本のポピュラー音楽との折合いなど、問題にぶつかり「悪戦苦闘」する先人達の数年間があったからこそ、後のGSブームでようやく日本のロックを形成することができたのではないのかと思います。たしかに本場のロックと聴き比べてしまったら酷評が多いのも納得せざるをえない。世間的な評価は「良好！」とはっきり言い切る事はできませんが、私はこの日本人クサさが好きです。とっても。教科書からは消え去ってしまった空白の数年間ですが、この時代が後の日本のロックを作る大事な歴史だったんだなと思います。

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