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1969年リリースのアビイロードと、1969年リリースの日本のロックと。 |
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こんにちは、こんばんは レコード店の片山です。 ビートルズの「アビイ・ロード 50 周年記念スーパー・デラックス・エディション」がリリースされ、SNSや雑誌で話題の今日この頃。 ビートルズの知識や好き度合いは人並みなので本作の感想などはコアなリスナーさんにお任せするとして(笑) 最近気になる入荷があったので今回はこのきっかけからメルマガを書こうとおもいました。 |
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「あああ、なつかしい!昔よく聴いたな〜、かっこいいんだよねコレ!」 と興奮まじりに査定レコードで手に取ったのは「ザ・ゴールデン・カップス / スーパー・ライヴ・セッション」。 日本ロックの基盤を作ったとされる偉大なるバンド、ゴールデン・カップスのライブ名盤です。 「へ〜、このアルバムって1969年発表だったんだ!そういえばアビイ・ロードも1969年リリースだったよなぁ・・・。ビートルズがアビイ・ロードを出したときに日本ではゴールデン・カップスがこんなにもロックなライブ盤を出してるんだ。凄いことだけど、じゃあこの頃の日本のロック・シーンはどんな感じだったんだろう??」 と思い、改めて調べてみることにしました。 ※ザ・ゴールデン・カップス / スーパー・ライヴ・セッションについては下記にて紹介します。 |
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1969年、ロック史的にはとても重要な年で、ロックの基盤となる歴史的名盤が数多くリリースされていました。 ・ハード・ロックの基盤となった「レッド・ツェッペリン/レッド・ツェッペリン」 ・プログレッシヴ・ロックの金字塔「キング・クリムゾン/クリムゾン・キングの宮殿」 ・ストーンズを代表する名盤のひとつ「ローリング・ストーンズ/レット・イット・ブリード」 ・ファンク・ロックといえば「スライ&ザ・ファミリー・ストーン/スタンド!」 ・のちのパンク・ミュージックに影響を与えたとされるライブ盤「MC5/キック・アウト・ザ・ジャムズ」 ・ハーモニー・ロックの素晴らしさを伝えたスーパー・グループ「クロスビー、スティルス&ナッシュ /クロスビー、スティルス&ナッシュ」 などなど挙げてもきりがないですが(笑)、たくさんの名盤が発表されロック史を作り上げていきました。 ウッドストックというライブ・フェスが開催されたのもこの年で、ハードロックの誕生からドラッグ・カルチャーにより産まれたサイケデリック・ロック、より精密でドラマティックな要素を出していったプログレッシヴ・ロック、ファンクとロックの融合を実現させたファンク・ロック、ひとりでも表現を可能としたフォーク・シンガーソングライター、などなど音楽の多様化がより進んだのもこの年のようです。 |
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その頃、1969年日本のロック・シーンはどうなっていたかというと、まだロックという概念はあまりないようで歌謡曲やアイドル全盛の時代。 アルバムのリリースよりもシングルリリース主体の時代のようです。 「1969年 邦楽 総合売上順位(シングル+アルバム)」 1位、青江三奈 2位、ピンキーとキラーズ 3位、森進一 4位、ザ・タイガース 5位、黛ジュン ※ウィキペディア参考 1967年頃からグループ・サウンズ(以下GS)なるムーヴメントもあったのですが、人気だったグループの解散やメンバーの脱退、社会的に問題のある事件が多発したりと状況が変わってきて、1969年にはフェイドアウトしていったようです。 ※グループ・サウンズについては過去にメルマガで書いたので興味のある方は宜しければこちらも読んでみてください。 ハイファイ堂メールマガジン第685号「ムッシュかまやつとGS」↓ https://www.hifido.co.jp/merumaga/2f/170317/index.html?G=3&A=11&LNG=J |
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1969年にレッド・ツェッペリンがデビューしてハードロックが海外でやっと誕生し始めるんだから、日本ではもちろんまだ歌謡曲全盛でロックという概念が皆無だったことが想像できます。 レコード自体も国内盤がリリースされていたビートルズとストーンズなど有名なバンドのレコードは買えたけど、マニアックなアーティストやジャンルが聴けるいわゆる輸入盤のレコードを買えた方は当時あまりいなかったと聞きます。 そうなると日本のアーティストが影響を受けた海外アーティストやジャンルはどんなものだったのか。 やはりビートルズが主流だったのかなあ?とか、そもそもロックをやることが異端でアルバムをリリースすることもレコード会社は消極的だったのかな?とか色々想像してしまいます。 では1969年に日本のロック・アルバムは存在したのか?? 今回そんな勝手な想像のもと1969年にリリースされた邦楽のアルバムを調べていったら 「へ〜、これも1969年発表だったのか〜。日本もロックやってるじゃん!」 と再確認ができ、日本もやるねぇと嬉しくもありました。 で今回のテーマとなる「1969年発表の日本のロック名盤」。 1969年リリースでこれはロックだなと思う邦楽アルバムを数タイトル紹介しようと思います。 これらの作品が50年前の作品か〜と感じてみたり、海外のロック・シーンと照らし合わせて聴いてみても面白いかもしれませんね。 ※全て個人的解釈であり諸説あります。 |
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「1969年発表の日本のロック名盤」 |
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■ 内田裕也とフラワーズ / チャレンジ! 内田裕也が麻生レミと結成し、グローバルなバンドとなるフラワー・トラヴェリン・バンドの母体となったバンド。 全曲英語の洋楽カバーで構成。攻めまくる極悪ファズ・ギター、手数が多くグルーヴィな16ビート・ドラム。 いま聴くと80年代のネオGSのように聴こえそうだけど、このサウンドを1969年に仕上げているところが凄い。 妥協なき内田裕也のプロデュース力がこれです。 カバー選曲もクリームやジミヘン、ジャニス・ジョプリンなど早すぎたセンスの鋭さにも注目。 ジャケットも当時としては挑戦的で衝撃だっただろうなと思わせます。 |
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■ エイプリル・フール / エイプリル・フール 翌年「はっぴいえんど」として活動する細野晴臣と松本隆が在籍することにより、こちらも母体バンドとしての解釈が強いですよね。 ただはっぴいえんどのプロト・タイプとして聴くとサウンドの違いにビックリするかもしれません。 英語詞メインで、オルガンがゆらゆら、ブルージーでファジーなギタープレイ、ゆったりとしたミドルテンポの曲が多く、どんよりダークなサイケデリックなサウンド。 つまりはっぴいえんどのお宝音源として聴くのではなく日本のサイケデリック・ロック先駆作として聴くのが正解かもしれません。 |
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■ ジャックス / ジャックスの奇蹟 日本で最初のロック・グループとしての評価が高いジャックスに角田ひろが加入したセカンド・アルバム。 角田ひろが歌っている曲が多くジャックスらしさよりも洋楽ロック志向が強くなっています。 前作より少しハードな感触があり、ジャックスらしさが前作ファーストだとしたら本作はらしくないのかもしれない。 前作の評価が高すぎるせいで本作は過小評価ぽいですけど、洋楽カバーを英語で歌う日本のバンドが多い中、 あくまでも日本語オリジナル曲でロックを演奏する姿勢はやはり評価するべきバンドです。 本作も「メッセージ性のある日本語で歌うロック」という括りでは重要な作品です。 |
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■ ザ・ゴールデン・カップス / スーパー・ライヴ・セッション 上記でも書きましたが、とにかくこれが1969年発表かと信じがたい実に激ロックで激ハードなライブ盤。 選曲は洋楽カバー主体だが注目すべきは各自が恐ろしいテンションで攻めてくるハイエナジーなプレイ! 当時の洋楽バンドの1969年作品のライブ盤と比較してもトップクラスにハードな作品だと断言できるほどの熱さだ。 ライブ盤だから演奏力の高さやダイナミックな生々しさ「本気度」も伝わるし、日本人でもハードなロックが演奏できるバンドがいて海外のバンドと勝負できることを証明してくれている、ほんと日本の誇りです。 最初聴いたときは70年代の音源かと思ったもんな〜。 |
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■ ザ・ブルース・クリエイション / ブルース・クリエイション 日本に本格的なブルース・ロックを持ち込んだ重要作としての評価もされているファースト。 シャウト系の太いボーカルとドタバタとしたパワフルなブルース・サウンド。洋楽のアルバムに混ぜても日本のバンドとはわからないかもと思わせるサウンドです。 英語詞の洋楽カバーなんだけどやはりブルース・ナンバーに徹底した選曲の良さが魅力。 ブルース・ロック系のカバーをしていた日本バンドもいたようだけど、ここまで土臭くトータル的にブルース・ハードロックとして全面に出してきたバンドは1969年当時少なかったように思えます。 (のちにはそういったバンドがいっぱい出てくる) この男臭さ、ロックを感じずにはいられない。 |
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■ パワー・ハウス / ブルースの新星 のちのジャパニーズ・ハードロックを作り上げていくギタリスト陳信輝と名ボーカリスト柳ジョージ(当時は柳譲治名義でベーシスト)が在籍していたバンドの唯一作。 1969年4月リリースということやメンバーのルックスもまだGSの名残も感じます。 実際に「ハードな演奏をするGSグループ」として紹介されているものも多く見ます。 サウンドはブルース系の洋楽カバー、ただし黒さはあまりなくハードエッジといった印象でしょうか。 当時20歳ぐらいだった若者がヘヴィなロック・サウンドを演奏しアルバムとして発表した実績が、日本ロック史にとっては重要だったと思うし、影響もあったと思いたいです。 |
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■ ザ・ヘルプフル・ソウル / ソウルの追求 上記のパワー・ハウスとブルース・クリエイション同様に1969年にヘヴィなブルース・ロックを演奏していたバンドとしてもっと評価すべき日本ロック・バンドのひとつです。 ソウルというよりはジミヘン直系。ブルース・ロックを基盤にヘヴィでアグレッシヴなサウンド。 ひたすら弾き倒す狂暴なギターも凄まじく、ガレージ・パンクのような荒々しさやインプロ的なジャム・セッション・テイクもかっこいい。 海外で再評価されたのも頷けるアルバムです。ジャケも最高。 |







